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最近は使わなくなった家の電話。
そんな電話に珍しく誰かからの電話がかかってきた。
「もしもし?」
低く、警戒した声で出ると
《私、木村と申しまして、水生様のお宅で合っていますでしょうか?》
と声が返ってくる。
「木村?誰だお前…」
《昨夜の22時頃、月宮 蛍様が亡くなりました》
「は…?」
急にそんなことを言われても実感は無い。
しかも事実なのか怪しい。
《月宮様の妹様である月宮 雨様をご引取りくださいとのことです》
《今日、葬儀を行うので来てください。場所は○✕。時間は–時。》
ブツリと切れる電話。
月宮が死んだ…?
なわけ…
そう現実を疑うので俺は精一杯だった。
「てかあいつに妹なんか居たか…?」
そう全てにおいて半信半疑ながらも、
告げられた場所へ着くと葬儀はちゃんと行っていた。
しかも棺桶の中には眠るように横たわる月宮の姿までもある。
そう。
これは現実なのだ。
それはそうと俺と月宮共に親は居ない。
というか去年亡くなった。
飛行機の墜落事故だった。
俺と月宮。
そして俺らの親もみんな仲が良かった。
それで旅行に行った親たちはさっきも言った通り、墜落事故で亡くなった。
去年亡くしたばかりなのに俺は親友までも失うのか。
そう悲しいはずなのに、涙は全く出なかった。
そんな時、棺桶の前に突っ立っている少女が目に入る。
もしかしてこいつが…
「月宮 雨?」
気づいたら声に出していて。
気づいたらそいつはこちらを振り返っていた。
「…にぃ?」
そいつは俺の目をじっと見た後、そう呟いた。
気づけば俺は自分の家に居た。
しかも俺を『にぃ』と呼んだ少女を連れて。
「にぃ、ここどこ?」
俺の服の裾を引っ張りながらそんなことを聞いてくる。
『新しい家だ』そう言おうと思ったが、
俺の家は一言で言ってとても汚い。
しょうがないが、俺が月宮の家に住むしか無さそうだな。
そう思い、荷物をまとめた。
「お嬢、あんま変な隙間とか入り込むなよ」
そう注意の言葉を添えながら。
『お嬢』俺には名前を呼ぶなんて無理だ。
そう思い、瞬間的に出た呼び名は『お嬢』
何だかしっくりくる。
きっとこの先も、ずっとこの呼び方だろう。