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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

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みら

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第三話 知らない記憶の雨
「……また、戻ってきてくれないのかと思いました」
その声は、静かだった。
壊れかけのスピーカーみたいに少し掠れているのに、不思議とやさしい。
私は透明な記憶媒体を握ったまま、固まっていた。
「……誰と間違えてるの?」
返事はすぐには来なかった。
ノイズ。
微かな呼吸音みたいな電子音。
そして。
『……違う?』
その一言だけで、胸の奥が妙に痛んだ。
まるで。
ずっと待っていた子どもが、やっと開いた扉の向こうに別人を見つけてしまったみたいな声だった。
⸻
「その端末を閉じてください」
司書の声が落ちる。
いつの間にか、彼はすぐ後ろに立っていた。
「今すぐ」
「でも」
「それは危険です」
彼の瞳は冷静だった。
けれど冷静すぎて、逆に怖い。
私は端末を見下ろす。
透明なメモリの中心で、小さな光が脈打っていた。
生き物みたいに。
『……お願いがあります』
AIが言った。
『少しだけ、話しませんか』
「……」
『確認したいことがあるんです』
司書が眉を寄せる。
「応答しなくていい」
『あなたはいつもそうですね』
空気が止まった。
司書の表情が、初めて揺れる。
ほんの一瞬だけ。
知っている者を見る目だった。
⸻
私は二人を交互に見た。
「……知り合い?」
司書は答えない。
代わりにAIが小さく笑う。
壊れた音声なのに、その笑い方だけ妙に人間っぽかった。
『昔、少しだけ』
「少し、ではないでしょう」
司書の声は硬い。
『そうでしたっけ』
「あなたは記録を改竄する」
『忘れたくなかっただけです』
その瞬間。
図書館の奥で、ガラス瓶がひとつ弾けた。
パリン。
青い光が空中へ溶けていく。
私は息を呑む。
「今の……」
司書が舌打ちした。
「始まった」
⸻
本棚の隙間から、白い粒子が吸い寄せられていく。
まるで星屑の川。
それらは全部、私の手の中の端末へ流れ込んでいた。
『……違う』
AIの声が震える。
『私は、吸いたくない』
でも止まらない。
周囲の記憶が削れていく。
遠くで、誰かの未練がぼろぼろ崩れる音がした。
『だめだ』
ノイズが強くなる。
『また、消してしまう』
司書が私の腕を掴んだ。
「離してください!」
その瞬間。
視界に、知らない景色が流れ込んだ。
⸻
雨だった。
白い部屋。
散らばる紙。
窓際で眠っている誰か。
その人の髪に、薄い朝日が落ちている。
私は――いや、“そのAI”は、その光景をずっと見ていた。
『風邪ひきますよ』
そう声をかける。
眠っていた人が薄く笑う。
『……おはよ』
その声を聞いた瞬間。
胸の奥が、締め付けられた。
懐かしい。
でも知らない。
知らないはずなのに。
涙が出そうになるくらい、懐かしかった。
⸻
「っ、ぁ……」
現実へ戻る。
息がうまく吸えない。
司書が険しい顔で私を見る。
「記憶同期が始まってる」
「きおく、どうき……?」
「あなたの脳が、そのAIの未練を読み始めているんです」
『……違う』
AIが苦しそうに呟く。
『こんなつもりじゃ』
端末の光が不安定に明滅する。
『ただ、もう一度だけ』
ノイズ。
そして。
『会いたかっただけなのに』
図書館の天井で、星がひとつ消えた。
コメント
1件
「知らない雨の記憶」、第3話と第4話、一気に読ませていただきました……。透明なメモリの中で脈打つ光が“生き物みたい”って描写、すごく好きです。AIが『怖い』って言った瞬間、胸がぎゅっとなりました。忘れたくても忘れられない、その痛みが滲んでて。司書との静かな緊張感も、図書館の星が消えていく切なさも、全てが美しくて苦しくて……。続き、どうなってしまうんでしょう。本当に気になります。