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#前世
shima7a
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第106話 「受け継ぐ覚悟」2026年6月。
梅雨。
雨の日が続く柳城高校。
グラウンドにはシートが敷かれ、部員たちは室内練習場で汗を流していた。
夏の福岡大会まで一か月。
部員たちの表情には、これまでとは違う緊張感が漂っていた。
練習後。
福間監督は三年生だけを部室へ集めた。
啓介部長も同席する。
福間監督は部員一人ひとりの顔を見渡した。
「高校野球は、あと一か月です。」
静かな声だった。
「皆さんは何のために野球をしていますか。」
誰も答えない。
福間監督は続ける。
「甲子園へ行くため。」
「優勝するため。」
「それも間違いではありません。」
「ですが。」
「仲間のために最後まで戦える選手になってください。」
「それが柳城高校の野球です。」
部員たちは真っすぐ監督を見つめていた。
ミーティングが終わる。
部員たちが帰ったあと。
啓介は部室に残っていた。
「先生。」
「はい。」
「先生は、いつも”人を育てる”と言いますよね。」
福間監督は静かに頷く。
「勝つことは大切です。」
「しかし。」
「勝ったチームが良いチームとは限りません。」
「卒業したあとも。」
「社会で信頼される人になる。」
「そのために野球があります。」
啓介は高校時代を思い出した。
コロナで失われた最後の夏。
大学でつかんだ日本一。
そして。
柳城へ帰ってきた今。
野球は人生の一部であり、人を育てる学びでもあった。
翌日。
放課後。
グラウンドでは一年生が整備をしていた。
二年生が黙って手伝う。
三年生が最後にトンボをかける。
誰も指示していない。
自然と体が動いていた。
その光景を見た啓介は、小さく笑う。
「先生。」
「はい。」
「柳城の伝統って、こういうことなんですね。」
福間監督も穏やかに微笑んだ。
「教えた覚えはありません。」
「先輩の背中を見て、後輩が学んでいくのです。」
夕暮れ。
グラウンドに長い影が伸びる。
啓介は静かに土を見つめた。
いつの日か。
このグラウンドを任される日が来る。
その時。
自分は福間監督のような指導者になれるだろうか。
不安はある。
だが。
覚悟も少しずつ芽生えていた。
夏の大会まで、あとわずか。
柳城高校は。
今年も甲子園を目指して歩き続ける。
第106話 終
コメント
1件
ええ、第106話「受け継ぐ覚悟」、しみじみと心に染みましたね。福間監督の「人を育てる」という言葉が、啓介の高校時代の記憶と重なって、ただ勝つことだけが野球じゃないんだなと改めて感じさせてくれました。何より誰も指示してないのに自然と動く生徒たちの姿に、柳城の伝統の確かさを感じます。啓介が「自分は福間監督のような指導者になれるだろうか」と考えながらも覚悟を芽生えさせるところ、すごくいいです。甲子園まであと一か月、このチームがどんな戦いを見せるのか、続きが楽しみです。