夜。煌びやかなゲーセンの音と光の中で、6人の笑い声が響いていた。
「みこと、クレーンゲームまた失敗してんじゃん」
「うう……取れそうやったのに」
「取れてねーだろ。次は俺がやるわ」
ひまなつが笑いながら操作を代わり、横からすちが見守る。
「へぇ、意外と手慣れてるね」
「ふっふーん。伊達にゲーセン通ってないからな!」
一方、こさめは音ゲーで最高スコアを叩き出し、らんといるまは彼の後ろで一緒に盛り上がっていた。すちは景品のぬいぐるみを片手に、無邪気に笑うみことの横顔を見つめていた。
穏やかな時間――しかし、それは長く続かなかった。
帰り道。
暗い路地裏から、怒号と何かを叩くような鈍い音が聞こえてきた。
「……今の、聞こえたか?」
らんが足を止め、すぐさま全員が警戒態勢に入る。
「いるま、行くぞ」
「おう」
彼らが駆けつけた先には、怯えた様子の中学生2人と、彼らを囲む8人の男たちがいた。
「なにしてんだ、てめぇら」
いるまが低く鋭い声で問いかける。
その声に男たちは一瞬だけたじろいだが、すぐに嘲笑い始めた。
「なんだぁ?兄ちゃんらもカツアゲされてぇのか?」
その言葉を聞いた瞬間、いるまの眉がぴくりと動いた。
「……調子乗んなよ」
次の瞬間だった。
いるまは一歩踏み出し、目にも止まらぬ速さで目の前の男の腹を殴り上げた。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされた男は壁に激突し、崩れ落ちた。
一瞬の静寂――その直後、男たちが一斉に襲いかかってきた。
「らん、こさめ、なつ。後ろ任せる!」
「おう!」
「やるしかねーな」
「眠気、吹っ飛んだわ」
背中を合わせるように4人が構え、乱闘が始まった。
――そのとき。
「すち、あの子たち」
「行こう、みこと」
すちとみことは乱戦から離れ、怯えていた中学生たちのもとへ駆け寄った。
「大丈夫、もう怖い人はいないよ」
すちが優しく声をかけると、みことが静かに彼らの擦り傷に絆創膏を貼っていく。
「ほんとは、こんなことに巻き込まれたくなかったよね……ごめんね」
「ありがとう……お兄さんたち」
「うん。もう帰っていいから、気をつけてね」
2人は中学生たちを見送った後、走って戻った。
路地に戻ると、既に男たちは全員地面に倒れ、呻き声すら上がらなかった。
こさめは鼻血を拭いながら「ひっさびさにスカッとした~!」と笑っている。
「いるま……やりすぎんなよ」
ひまなつがぽつりと呟いたが、いるまは肩で息をしながら「……おまえが無事なら、それでいい」と答えた。
すちは苦笑しながら「早かったな」と言い、みことはそっとみんなの無事を確認してから安心したように目を細めた。
「俺たちは俺たちのやり方で、守ればいいよね」
その言葉に誰も反論はなかった。
――6人の絆は、乱れることなく、今夜も一つになった。
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