「やっぱりシェイクってサイコー」
「それバニラでしょ? 僕はチョコの方がいいなぁ」
「そんな事ないよ。バニラの方が絶対に美味しいから飲んでみて」
「うっ‥うん…」
葵さんから飲むように渡されたシェイクだけど、これって間接キスじゃ…‥
「いいですよ!」
「何が?」
「間接キスしても…」
「やっぱりいいよ…」
僕は飲まずに返した。
「気にし過ぎですよ。今どき、間接キスを気にするの紺野さんくらいなもんですよ」
「そうなの? ならいいよね…」
僕は葵さんからシェイクを奪い取ると、ストローを口に咥えて思い切り吸い上げた。
ジュルルルル……
「ぷはぁ~はい、これ返すね」
僕は空になったシェイクのカップを葵さんの目の前に置いた。
「信じらんない…」
葵さんはそう言うと、本気で僕を睨んでいた。
予想外に怒っているようなので驚いた。
軽いジョークなんだから、そんなに怒んなくたっていいじゃん。
「冗談だよ。ちょっと待ってて」
そして僕は慌てて椅子から立ち上がると、レジカウンターまで行ってシェイクを買った。
そして、葵さんの目の前にシェイクを置いた。
「どうぞ!」
「これ、バニラじゃなくてチョコじゃん」
「えっ…ホントに? 間違えちゃった」
僕はわざとらしく言ってみせた。
「サイテェ…‥」
すると葵さんは、ストローを口に咥えると、それを一気に吸い上げた。
ジュルルルル……
「あぁぁぁぁ〜~〜無理っ! 頭いた~い」
どうやら一気飲みしたせいで、頭が“キーン”としたらしい。
「無理しない方がいいって」
「無理なんてしてない!」
すると再びストローを口にくわえ思い切り吸い上げた。
「いや~ん。いた~い…」
今度は椅子に座った状態で、頭を押さえながら足をバタつかせて痛がっていた。
「大丈夫?」
「誰が悪いんですか? 紺野さんですよ」
「そうだったね、ゴメン。ちょっと、ふざけすぎたよ」
「私も…‥」
「そっ‥それよりオマケは何が出たの?」
変な空気が流れたので話題を変えようと思った。
「まだ開けてません」
「開けないの?」
「人にあげるからいいの…」
「ふ~ん、そうなんだ…」
葵さんには、何か見えているようだった。
しばらくして、後ろで子供が泣いている声が聞こえてきた。
振り返って様子を見ていると、何となく状況は把握する事が出来た。
どうやらハッピーセットを買ったけど、欲しかったオマケが出なくて泣いているようだ。
「あゆみちゃん、もう泣かなくていいんだよ」
葵さんは、いつの間にかに女の子に近づき話しかけていた。
あゆみちゃん?
知ってる子?
「あっ‥あのね…お姉ちゃん…私オマケについてくるサリーとマイクが欲しかったんだけど、あたらなかったの…‥」
そう言い終えた少女は再び泣き出した。
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