テラーノベル
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一家が不可解な怪現象に悩まされるようになってから、『幽霊屋敷』と噂も広がり始める事数週間……得体の知れない存在に取り憑かれ、別人のように豹変したヴェルリナ。「あ……あ…………痛いっ……煩い…………もう耳障りだ……!」
彼女はこっそり台所から盗んだナイフで、自傷しようと、傷を付け…「呪い殺してやる…此処は私の領域だ、お前達はさっさと消え失せろ、さもなくば全員……皆殺しだ」
彼女の喉元から出るような声とは思えないような、それはまるで老人のような声だった。
「うううううう………!!」
彼女は狂気に狂い、不自然な力が働いてまた……ポルターガイスト現象が突発的に起こった。「アアあああああああっ……」
ナイフを握りしめ、彼女の意識は損失し…一心不乱に部屋にあるありとあらゆる物をやたらめったらに切り刻んで、殺傷衝動に駆られ……そのまま何かに吸い寄せられるように、窓を開けて…そのまま自室を抜け出し、素足のまま彼女は夜な夜な真っ暗な暗闇の外へ出ていった。
もう、夜遅い時間だった為に、両親は娘の事が心配になって引きこもっている娘の様子を見に部屋へ向かったのだが、そこにヴェルリナの姿は……なかった。
「え………?居ない、大変よ……!!、ヴェルリナが居ないわ…!」
「…………………え…?」
二人が目にした光景……それは明らかに意図的に荒らした痕跡があり、幾つかの物に至っては破壊された状態で散乱していた様子、
勿論、そこは人が入ったような形跡は特になく可能性があるとすれば一人しか居ない。
「まさか……あの子がやったっていうの……」
「外から誰かが侵入したような形跡もないし、間違い無いだろうな」
「…………やっぱり、あの子……絶対おかしいわ、もうヴェルリナは……私達が知るような子じゃなくなってる‥‥」
と話していると、ふと開いたままの窓を見てまさか……と思い、「もしかして…あの子、この部屋にいないってなると、この窓から出て…」
「けど、こんな深夜に一体何処に…急いで探そう」
「ええ……」
二人は慌てて外へ出ていったヴェルリナを捜索し始めた。外にある庭地を探し回る事暫くしてると、やっと見つけた。
片手にはナイフを持ち、ポツンと一人佇んでいるヴェルリナを見つけた。彼女の周囲には彼女が殺傷したと思われる動物の死骸や切り刻まれ、荒れた草花があった。
「…………!!!?、ヴェルリナ……これは……一体なの……!!?」
「ヴェルリナ、ほら空もこんなに真っ暗だ。外にずっと居たら風邪を引いてしまうよ、さあ部屋へ戻ろう」
と佇む彼女にそう声をかけた。彼女が振り向いた次の瞬間……「きゃあああああああーっ……!!」と悲鳴をあげた。
その理由は……彼女の目が完全に白目を向いていて不気味だったからだ。そしてヴェルリナは正気を失っており、ただ無我夢中に人を襲う事だけが脳裏にあってヴェルリナは両親のうち、母親の方にナイフを握りしめたまま襲いかかった。
「やめて……ヴェルリナ、お願い……やめて…っ!!」
「うううううううううう……、あああああああああああっ……!!」
彼女はナイフを片手に握りしめ、母親に飛びかかって刺殺しようとしたその時、浮遊現象が起こり、彼女は地面に強く打ち付けられ、泡を吹いて倒れ込み、ピクッピクッと痙攣状態になった。「ヴェルリナ……ヴェルリナ……!!」
「とりあえず、救急車を呼んで……!」
「あ、ああ……」
その後、彼女は駆けつけた救急隊員から処置を受け、安静にしている事になった。
「…………この子、何か変よ、おかしいわよ…白目向いてたし、それに行動や素行もとてもヴェルリナがするような事じゃない……一体この子に何が起きてるっていうの…… 」
「それであって欲しくないけど、もしかすると……悪魔の類いに取り憑かれてるんじゃ……」
「え………?、悪魔に取り憑かれてる……?」
「まあ詳しい事は後日専門家の方々に話を聞いてみない事には分からないが…その可能性があるんじゃないかって話さ。空中浮遊もポルターガイスト現象も、悪魔が引き寄せた力の可能性が高い……まあこれは興味本位の知識でしかない、詳しい事は専門家の人達に改めて聞いてみよう」
「ええ、そうね」
それから、彼女が引き篭もりがちで荒れた気性に豹変…彼女の周囲で巻き起こる事象が悪化の一方を辿ってゆく中、気付けばもう専門家らの訪問日当日になっていた。
「ママ、誰か来るの…?」
「そうよ、この家で起きてる奇妙な事や貴女が苦しんでる事を解決の道へ導いてくれるような、今の私達にとっては、心強い人達が家に来てくれるのよ」
「私達の事…………助けてくれるって事…?」
「そうだよ、だからヴェルリナも一緒に話を聞いてみないかい?今のヴェルリナにとってはとても救いになってくれる筈さ」
「分かった、私も……一緒に話、聞く……」
そうして家族皆んなで座って待っていると、ピンポーンッとインターホンが鳴った。どうやら、専門家らが家に到着したようだ。
「じゃあ、私が玄関の対応してくるから、貴方はヴェルリナの傍に居てあげて」
そうして、玄関に迎えに行くと其所には、夫が依頼したと思われる専門家らがいた。「貴女が依頼主さんの奥様のルナリスさん?」
「え、ええ……そうです」
「貴女の旦那様のグルーダさんから事前に連絡を頂いて話は聞いています、今日はよろしくお願い致します。申し遅れました、私は主に悪魔事件や超常現象などを研究している専門家。エリミア・ラーシェルです」
「同じくアルベス・シュレッグです」
「グルーダの妻のルナリスです、どうぞよろしくお願い致します」
挨拶と握手を済ませたところで、本題に入る為に「では、娘達が居る部屋へ案内しますね」
「よろしくお願いします」
そうして、ルナリスは二人が居る部屋へ案内……。
「此方です」
「失礼します、あらこんにちは。貴女が娘さんのヴェルリナちゃんね?」
「……こ、こんにちは……」
「今日は宜しくお願い致します、依頼したグルーダです」
「ええ、では早速本題に入りたいのですが……我々に依頼をしたという事は悪魔の類いの事で何かお悩み事があるという事で間違いない?」
「はい……正直悪魔の類いかは分かりません…でも数ヶ月前からこの家で不可解な現象が度々起きて、日常茶飯事なくらいに頻発してて、物が不自然に浮いたり動いたり……原因不明の故障も相次いでいて、それだけじゃなく……」
「娘さんの様子も同時に豹変するようになった……って事ですか」
「ええ、最初の出来事はこの子が気配を感じると言い始めた事から始まって、その後この子の身体に痣や何かに噛まれたような歯形も見つかって……」
「なるほど…‥とりあえず、悪魔の類いに憑依されているかの確認を行ってみても良いですか?」
「確認って……どうやって……?」
「それなら至って簡単です」
そう言って彼女は持ってきたバッグから出したのは『聖書』だった。
「これは……聖書‥ですよね」
「ええ、その通りです。悪魔に憑依されている場合、神に対して否定的になる傾向があって、そもそも悪魔というのは神や信仰心に対して反抗的な思考を持っている、だからこそ憑依されている場合は、神を侮辱し嫌悪の意志を示す行動をするパターンが大半なんです」
「そして、もう一つ……悪魔に最も有効的なのは十字架、これも悪魔に対抗し、悪魔憑きの証明ができる代物だ」
其所で、まずは聖書を彼女に読ませてみる事に。その時に躊躇の姿勢を見せたら、悪魔憑き…つまりは悪魔に憑依されている証となる。
「さて、ヴェルリナちゃん、このページの内容を声に出して読んでみて貰える?」
「……………………………」
「どうしたの…?」
「………………読みたくない」
「そう……分かったわ…」
これでヴェルリナは悪魔に憑依されている、という確証に一歩近付いてしまった訳だが、しかしもう一つ念の為に彼女に向けて十字架を見せ、拒絶するかを試してみる事に。
その結果は……、「嫌…それ、見せないで……」
「どうやら、悪魔に憑依されている根拠に近付いてしまったようね、ですが……現時点では、まだ本格的な協力に至れないのも事実」
「え…?そうなの…?」
「悪魔事件というのは多くが、悪魔や悪霊の仕業であるとの証拠とその証明が必要不可欠なんです、なので証拠を検出出来ないと本格的な協力には至れないのです」
「そんな…………」
「幾ら可能性があるとは言っても、言葉では断言も証明も出来ない。だから、急で申し訳ないんだけど暫くの間この家に滞在させて貰えないでしょうか?」
「ええ、依頼したのは此方の方ですし、構いません。この家の事も‥‥そして何より私達のたった一人の大切な娘の事も、助けて下さい……」
「御協力感謝致します」
取り敢えず、彼女が悪魔に憑依されてこの事象が悪魔憑きによる事だと裏付けられるような…そして一家としても不安を多く抱えている現状からやっとちょっとは安堵出来る、そんな心強い人達が暫くの期間の間、家に滞在してくれるようになった。
「貴女からも、色々話を聞きたいんだけど大丈夫?この数ヶ月間色んな苦しい事に悩まされてるんでしょ?」
「……………………」
「どうしたの?ヴェルリナ…」
彼女は俯き、唸り声のような声を上げ始め、彼女とは思えないような声色で、「ううううううう、黙れ!!此処は私の居場所だ、神など消え去れ…… 」
「君は一体誰だ?少なくとも、ヴェルリナちゃんではないな」
「ああ?そのガキなら、眠った…今は私が話している」
「そうか、それじゃあ君はヴェルリナちゃんに憑依している悪魔だな?」
「…………そうだ……とても居心地が良い」
「その身体はヴェルリナちゃんのものだ、お前の物ではない」
「黙れ!私はお前達のような連中は険悪している…これ以上話す事はない」
「…………では、眠っていて貰おう」
アルベスはそうして悪魔に対し、十字架を見せつけ…眠らせた。すると、憑依状態が収まって彼女はバタッと倒れ気絶した。
彼女が先程の瞬間で出した声色は、とても十代女児から出るような声とは思えない程に掠れた不気味な声だった。
「まだ確実とは言えないが、悪魔に憑依されている可能性が少し高まりました。先程の本人の声とは全く別人のような声が発せられる事象は、悪魔事例では珍しくありません」
そう話していると、気絶から目覚めたヴェルリナが起き上がり、「……ん……あ……また……違う人格が……はあ……はあ……」
「大丈夫……?」
「…………大丈夫…………」
気絶から目覚めたばかりという事もあり、無理させないように少し経過観察をしてその上で改めてエリミアはヴェルリナに対し、こう質問した。
「ねえ、ヴェルリナちゃん、何か悩んでる事とかない?どんな些細な事でも構わないわ、話してみて」
「………………………」
「ヴェルリナ、大丈夫よ。此処に居る皆んなヴェルリナの味方なんだから、だから躊躇う必要はないわ、焦らせないからゆっくりで良い、貴女が苦しんでる事……エリミアさん達に教えてあげて」
そう言われ、ヴェルリナは俯き加減でゆっくりと話し始めた。
「…………この家がおかしくなってきてから、私…学校で虐められるようになって、陰口言われたり……ちょっかいや揶揄われたり……色々、もう耐えられなくなって来て、ずっとその度に私……もう消えたいって‥‥思うの……」
「そう……」
「心も壊れて……それに私の背後にずっと誰かが…居るような感覚もして気味が悪いし、その影が私をずっと……脅してくるの、『死にたくないなら、家族を皆殺しにしろ』って、私……心がおかしくなっちゃって、もう苛々する事ばかり……もうこれ以上、耐えられない……」
そう彼女は俯いたまま、悲しい感情が湧いて来て、ポロッと涙を流した。
それをそっと何も言わずに慰めるように優しくルナリスは抱きしめた。
「そうだったのね、相当苦しんでるのに勇気を振り絞って話してくれてありがとう、私達が出来る限り貴女を支えるわ」
「ありがとう………」
その後、懇談を終え……それからの時間は何時もの日常通りに過ごしてゆく。とは言っても今日から暫くの間は両親以外の大人も加わる為に、見慣れない見知らぬ大人が二人も居る中で生活するから、ヴェルリナとしては、緊張する事もあるだろう。
「ヴェルリナちゃん、改めて暫くの間の期間宜しくね」
「…………宜しく」
「今は違和感や不調は感じないかい?」
「今はまだ大丈夫……おかしくなるのは、いつも決まって夜なの、夜になると声も気配も……ずっと変な事が起きるの」
「…………そうなのね、その時はなったら教えてくれる?」
「…………ちゃんと教えれるか分からないの……、だって夜になると私は……私じゃなくなるから……」
「幽霊や悪魔、悪霊というのは夕暮れ時から真夜中にかけて活発的になる習性があるからね、それは自然な事だ」
「そうね、あ……そうだ、ちょっとヴェルリナちゃん、貴女を霊視しても大丈夫?実は私、目に見えない存在が視える力を持ってるの」
「…………?、霊視…?」
「ええ、貴女に取り憑いている悪魔を視るの」
「視てくれるの……?」
「ええ、任せて」
そしてエリミアはヴェルリナの身体に触れ、霊視を行った。彼女は意識を集中させ霊視を隅々まで行った。
「…………どうだ…?」
「…………彼女の身体には一体じゃない、無数に悪魔が背後に張り付いてる。急激に気性が荒くなったり、それに伴うポルターガイスト現象が深刻化してるのは…恐らくこれが原因じゃないかしら」
「具体的にはどれくらいの数が彼女に憑依してるか、もっと詳しい数は分かるか?」
「少なくとも……三体以上は憑いてるようだわ、悪魔に憑依による今後悪化していく可能性が極めて高いわ、こんなにも無数の悪魔が一人の人間に……しかもこんなにも幼い子供に取り憑いている症例は今回が初だと思うわ、このまま放置していたら、もっと深刻な事態を招いてしまう事も……」
「私……これから……どうなっちゃうの……」
「ヴェルリナちゃん、大丈夫よ。貴女とこの家の事は私達が必ず救うから、だから心配しないで」
「…………ありがとう………」
こうして夕暮れ時になり始め、すると途端に彼女は不安が襲い、精神状態が不安定になって来て「怖い……怖い………太陽が沈んできてる……また怖い事……起きちゃう……」
ヴェルリナは恐怖で肩を震わせて怯えた。
「大丈夫よ、大丈夫……私達が居るから。悪魔に負けたらダメよ、悪魔は貴女の心を陥れて自滅へ追い込もうとしてるの、だからこそ負けそうになってもなるべく強い気持ちを持ち続けるのよ」
「負けちゃいけないって、そんなの分かってるよ…!!、でも……もう耐えきれなくなってる、恐いの‥‥…日が経つ事に自分が消えていってる感じがして……」
「ヴェルリナちゃん………」
エリミアはそっと彼女を抱き締めた。
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