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「そうだわ、ヴェルリナちゃん、悪者からの不安を吹き飛ばす為に楽しい事したりしない?」


「楽しい事……?」


「ええっ、とっても楽しい事。外で遊んだり歌ったり、それを皆んなでしたらきっと孤独な気持ちもなくなるわ」


「そうなのかな……、それで楽しい気持ちになれるのかな、私……もう分かんないよ」


「ヴェルリナちゃん………」

とエリミアはそっとまたヴェルリナに寄り添った。「外に出て気持ちをリフレッシュさせてみない‥……?怖くて怯えている気持ちをもっと薄れるわ、私達が傍に居るから大丈夫よ」

「うん……分かった」

エリミアの提案で、外で気分転換する事になった訳だが、外でもやはり悪魔の視線や気配を感じ取るようで、挙動不審になり、落ち着かない様子。


「気配……感じるのね……?」


「うん……微かに感じるの」

夕方でも、ましてやまだ日も落ちていないのに……彼女は何か幻覚のようなものが起きているのだろうか。

「誰かに見られてる感じ……?」

「分からない……でも、何だか怒ってるような……!!!?、いや……いやっーーーーーー!!」

ヴェルリナは取り乱し、明らかに何かに対して酷く怯えている。「ヴェルリナちゃん、どうしたの……?」

「あそこにある木の奥から、黒い……人いる……出ていけって睨んでる……」

悪魔の気配を感知できる能力を持つエリミアはヴェルリナが指差した方向へ視線を向けた。そこには……、「何なの……、無数の悪魔の気配がする」

「悪魔が……やっぱり居るのか…?」

「ええ、しかも昼間のこの時間帯でもはっきりと感じ取れるくらいの怨念の力……確かに居るわ」

「恐いよ……恐いよ…!」

気晴らしの為にと思っての提案だったが、どうやらそうはいかないらしい。「大丈夫よ、ヴェルリナちゃん安心して、私達が傍に居るわ、外で暫く遊んで不安を吹き飛ばしましょう」

「怖くて……遊ぶ元気も出ないよ……」

「それじゃあ、歌を歌うのはどう……?」

「歌を……?」

「そう、皆んなで歌ったり楽器を演奏したり、そしたら暗い気持ちも明るくなれるんじゃない?」

「…………遊びたい……遊びたい……けど……」

「外で遊ぶ?ふふっ、じゃあ遊びましょうか」




エリミアの優しい声掛けで彼女の不安は拭われてきた。でも、それは所詮一時的なものでしかなかった。悪魔に憑依されている事によって、周囲の環境にも影響が現れていた。

「花……枯れてる……それに庭……荒れてるね」


「それに何だか不自然にも風が強くなってる気がする、恐らく悪魔からの警告でしょう」


「外なら少しはヴェルリナの気持ちの気分転換になるんじゃないかって思ったんだけど、悪魔の領域が彼女自身だけに止まらず、この家全域が悪魔のテリトリーに、あまり長居はしない方が良いかも」

「…………分かった」

そうして、暫く遊んだ後ヴェルリナ達は部屋の中へ戻った。不安が今も尚募り続け、悪魔憑きの状態悪化を抑制する為にも……何よりヴェルリナの降下している気分を上げる為にも、「あの……‥玩具というか、楽しく遊べるような物はあったりしませんか?良ければ、それを借りたいんだけど…」


「それなら……ヴェルリナが小さい頃によく遊んでいた物が幾つか…ちょっと待ってて下さい」


「ありがとうございます」

数分後ルナルスは大量の玩具を持ってきた。「こんなに沢山あるのね」「ええ、色々とこの子が興味を持ちそうな物を買って、それに玩具型の楽器も何個か…元々私達夫婦二人共、演奏家だったので、それでせっかくならって思って、良くこの子にも使わせていた事があって…」


「なるほど……これならきっとヴェルリナちゃんの気持ちが多少は安らぐかもしれない、絶対的な根拠や確信はないけど、悪魔が活発化する要因の一つとして、取り憑いている対象の感情が大きく作用している、なんて事もあったりするので」


「つまり……この子が笑顔になったり楽しいと思えるようになれば、その分悪魔に抗えるって事……?」


「ええ、悪魔というのは肯定的な感情を嫌う傾向があるの、だから心から笑い楽しいって思えるような、心を明るくすることをやれば、悪魔に対して我々も抗える」

そうエリミアから助言を受け、ヴェルリナは皆んなと一緒に玩具で遊んで楽しい時間を満喫した。そうしてると不意に彼女から微笑が溢れ、「…………楽しい……ふふっ」

彼女は数ヶ月振りの微笑を溢した。

ずっと気持ちの降下が収まらず、苛々としたり人が変わったような顔付きだったが、ほんの少し笑みを見せた。

「ヴェルリナ、笑った…良かった!楽しいって感じたのね、ほんとに良かったわ…!」

楽しい遊戯の時間を過ごしている最中は笑顔になる瞬間もあったが、それが終わった途端に「……はあ…………」

「ヴェルリナ、そう簡単には治らないわよね……」

「…………もういっその事、消えたい……私皆に迷惑かけてるし‥…迷惑かけちゃうくらいなら私……」

ヴェルリナは気持ちが更にまた急降下し、自滅願望を抱くようになった。「耳鳴りも酷い、ずっと私の傍で囁いてくるの、夜も碌に眠れない‥…… 」

落ち込む彼女に、彼女を責める事なくただ静かに寄り添う。「…………私のせい……全部……もう私なんか……要らないよね……」

彼女はそう言って、ゆっくりとベランダの窓を開け、窓の上に登り投身自殺を図ろうとしていた、その様子を見て、慌ててルナルス達は駆け寄り、飛び降り自殺を阻止した。

「止めるんだ……!」

「……………………」

彼女は静かに床に座り込み、何やら段々と過呼吸になり始め、「ううううっ……ううううううっ……!!、邪魔するな……此処は私の箱庭だ、私は神を嫌悪している、私の領域を犯す愚者は消え去れ、立ち去れ……!!さもなくば、お前達全員皆殺しだ」

またも、彼女から出る声色とは思えないような老いぼれた獣のような声だ。憑依されてそれ以降悪魔の力が日に日に強くなっていき、その影響のせいか悪魔が彼女を乗っ取る頻度が頻発し、自分や他者に対して攻撃性が高まり、凶暴化して異常行動を多々起こすようになった。




「うううううううっ……ぐううううううっ………」

彼女の目は悪魔の瞳に、そして歯も鋭くなっていた。唸り声を上げ、悪魔の力が活発になった事で自在にポルターガイストを起こし、自身も浮遊現象が起こり…改めてヴェルリナに目を向けた次の瞬間ありとあらゆる物体が宙を舞っていた。

「此処は私の領域だ、私の家だ……!!」

そして、彼女が次に目を向けた先は、両親だ。彼女は二人に馬乗りになり、両親は身動きが取れない状態にされ、そんな中彼女は拳を振り下ろし‥‥暴力を振い始めた。

「ヴェルリナ……お願い……やめて……」

「ヴェルリナちゃん、やめて…!!」

エリミア達が二人を救出するべく、駆け寄った。だが、「邪魔するな…!!」と足で力強く蹴り飛ばし、二人は壁に打ち付けられた。

彼女の暴力行為は数分に渡り続き、その後やっと手放し止めたと思いきや、一旦離れキッチンの方へ向かい、ガサゴソと何かを探し始めた。

数分後、キッチンから戻ってきた彼女の片手にはナイフが……また皆殺しを企てているようだ。

「やめて……!お願い……ヴェルリナ、元に戻って…!!」

「があああああああっ…!!!」

ヴェルリナはナイフの他に拳銃を拝借していたようだ。それを両親の方へ……危機的な状況に、これはまずい……そう思ったエリミアとアルベスは悪魔憑きの状況で暴走状態にある彼女を鎮静するべく、十字架を彼女に向けて見せた。

「がははははっ……!!そんな小細工何度も通用すると思うか?愚者なる人間……」

「悪魔の力が強まってる、まさか知らない間にまた悪魔の数が……」

「聖書は……!!?」

「駄目だ、悪魔を祓おうにも『名前』が分からない事には封じようがない…!」

結局、十字架を根気強く数十分の格闘の末何とか事態は治った。

「やっと収まった……良かった」

エリミアとアルベスは二人、そしてヴェルリナらの処置する為寝室の方へ運んだ。「…………ん……んん……痛っ…………」

「気が付いたようですね、何とかご無事のようで良かったです」

「もしかして私達まで、運んで下さったのですか……?」

「ええ、それとヴェルリナちゃんも」

その後、エリミアとアルベスはヴェルリナの両親にヴェルリナの状況の詳細を説明した。「…………なるほど……、そうですか……」

「ええ、それと彼女‥‥ヴェルリナちゃん、このままの状況だと心苦しいのですが、彼女を悪魔の暴走を抑え込む為に手足を拘束して部屋に閉じ込めないといけない現状にあるんです」

「そんなの……そんな……、この子は私達にとってたった一人の大切な娘なの……、そんな事出来る訳がないじゃない」

「勿論ご両親のその気持ちも理解できます、でもこのままの状態のヴェルリナちゃんを放置しておけばヴェルリナちゃんは間違いなく我々を皆殺ししようとしてくるでしょう、何よりこの状況が悪化したらヴェルリナちゃんはほんとに何時かは猟奇殺人鬼になってしまう恐れだって十分に有り得るのです」

戸惑いを隠せない両親達…しかし無情にも目の前にある現実というのは残酷なものだ。





「もう少しこの家に滞在してまた決定的な、これが悪魔事件であるという事の確証付けられる証拠が出揃い次第、それらを教会側に提出して申請を貰いに行く」

残酷な予測が現実になろうとしている事が、確定的となった以上少しの気の緩みさえも許されなくなった。


「どうか……お願いします……」


「これだけ現象が頻発し、ヴェルリナちゃんに憑依している悪魔の悪魔憑きの状態が深刻化している事、悪魔の憑依数が異様に増加傾向にある、だからその分悪魔がヴェルリナを苦しめる力も必然的に強くなる…そして何より我々祓魔師が居る事を嫌悪している、これは捉え方を変えればこの家で起きている事象が悪魔によるものだという証明の為の証拠が判明しやすいとも言える」


「ああ、これなら数日もすればある程度の証拠は出揃って早ければ近いうちに提出まで事を運べそうだ」


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