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 翌日、三人で食卓を囲いレーナはレインにお店を休ませてくれと頼む。昨日あれだけ人が集まっていたのだから、今日も人が多くなることは予想できるだろうに、レインは許可を出してくれたのだ。 とは言っても、客の八割がどうせノア目当てであることは分かっているので、店頭にいなければさっさと帰るだろう。それを見越して許可を出したのだとレーナは理解した。


「いいけど、何かするのかい?」


 レーナがまた何かやらかさないか疑っている目を向けられて、心外だと抗議したが、しでかしたことの大きさ(ノアを召喚したこと)を思い出してレーナはしずしずと着席した。


「ノアのお布団を買いに行くの」

「レイン、お給料の前借りできないかしら」

「はあ? 前借りだって?」


 布団を買いに行くことは分かってもらえたが、ノアが給料の話をしたら少し怒ったようにレインは言った。


「あら、だめだった? ちゃんとここで働いて返すわよ」

「何言ってんだい。アンタも強制的に私の家の子になったんだから、遠慮するんじゃないよ」

「おばあちゃん……!」

「……! レイン、ありがとう。あなたの厚意はずっと忘れないわ」

「そうしておくれ」


 勝手に居候を始めたノアを新しい家族として迎えてくれたことが嬉しくて、レーナはにこにこと穏やかな微笑みをノアに向けた。

 ノアも意外だったのか、珍しくつんけんとした態度を取らずに素直に礼を言った。頭を下げていたのも、普段の彼なら見ることができない姿だ。

 レインの懐の広さとノアの新たな一面を知ることができて、レーナはとにかく嬉しかったのだ。

 なんだか気恥ずかしそうにしているノアを見て、レーナはレインに目配せをすると、彼女もどうやら多少は思うところがあったみたいで、レーナの視線に気づいているくせに無視をした。

 三人で食卓を囲うのはまだ数回で片手で足りるほどしかないが、こんな日が続いていくのだと思うと心が温かくなった。

 

 村の中で唯一寝具を扱っている店へと手を繋いで(強制的に繋がされた)道案内することになったレーナだが、それよりもレインの家族宣言に嬉しくなってつい顔がにやけてしまう。レーナは鼻歌を口ずさみご機嫌だった。


「家族だって! 嬉しいね、ノア!」

「……そうね、魔女がアタシ──悪魔──を受け入れてくれたことが、思っていたより嬉しいみたいだわ」


 ノアも優しい笑みを浮かべ、談笑しながら歩いているとあっという間に寝具店へと辿り着いた。

 

「この寝具店の娘さんのローラとは親友なの。もう一人親友のリリスっていう子がいるんだけど、今度紹介するね。ノアも仲良くなってくれたら嬉しいな」


 既に懐柔されまくっているレーナは、しっぽを振る犬のようにノアにじゃれついた。ノアに親友を紹介できるのが嬉しいのだ。


「あら、そうなのね。分かったわ」


 ノアはレーナの頭をそっと撫でると、彼女はふんわりと微笑んだ。ノアはレーナの笑顔が好きなので、彼女が望むのならいつだって甘やかそうと決めた。

 

 店の看板はオープンとなっていたので、臨時の休みにならなくてよかったとレーナは一人安心した。

 そして、扉を開け、ノアを引き連れて寝具店へと入店する。


「いらっしゃいませー! あら、レーナじゃない! ……って、隣のイケメンだれ!? レーナの恋人!?」


 昨日ローラとリリスはレインの店にいなかったのでノアを知らないのは当然なのだが、なにせ小さな村なので噂として明日明明後日には広まっていることだろう。

 あはは、と作り笑いをしながらなんて言うべきか迷うレーナをよそに、完全に猫被りして人間を装っているノアは人好きのする笑顔を浮かべた。


「はい、レーナと交際しているノアといいます」


 ノアの微笑みを受けて頬を赤く染めるローラだが、今は仕事中なので仕事モードに切り替えて「そういえば」と言葉を紡いだ。


「ここにくるってことは、ノアさんの寝具を買いにきたのね、レーナ?」


 ローラとおなじくレインの店を手伝っているレーナには分かる。これは、客にいいものを買わせて売り上げにする気だと。

 この小さな村で寝具店を取り扱っているのはローラの親御さんの店しかないので、こういう時は助かるが、一度寝具を買ってしまえばそうそう用がなくなる。

 なので、一応メインは寝具店の看板を下げながら、布や毛糸といった消耗品を販売しているのであった。


「そうなの。ローラ、ノアに合いそうなものを見繕ってくれる?」

「もちろんよ!」


 やはりローラは店一押しの高級羽毛布団を用意してきたので、「この商売上手!」と談笑しながら会計をした。

 ローラは年頃の娘にありがちなおしゃべりが大好きな子なので、根掘り葉掘りレーナにノアとのことを聞いてきた。


「ねえレーナ、こんなに素敵な人とどこで出会ったの?」


 ノアは悪魔(淫魔)で私が召喚したの、とは口が裂けても言えないので、レーナは「えっと〜」と口を濁すことしかできない。頭が回らないレーナにすかさずノアがフォローを入れた。


「私は旅をしていたのですが、怪我をしてしまいレーナの家にお世話になったんです。そこから私が彼女に一目惚れして、住み込みで働かせてもらっているのですよ」

 

 よくもまあそんなにペラペラと嘘がつけるものだと関心したレーナだったが、本当のことを言うわけにはいかないので「そうなの」とだけ言って、荷物の配達手続きをして帰宅した。


 昼頃には家に戻れたので、ちょうど昼休憩をしていたレインと三人で昼ご飯を食べた。

 午後は暇になるので、レーナとノアはレインを手伝って店を回し、ノアが店番でレーナとレインは裏方で魔道具と調合つくりをせっせと行った。

 狭い村は噂が広まるのは早いらしく、レーナの知り合いはほとんどレインの店に集まってノアを一目見にやってきたのだ。

 レインは呆れながらもなんだかんだでノアのことを受け入れているので、苦笑しながらレーナと作業に勤しんだ。


 その日の夕方には布団一式が届き、ノアは身体を痛めることなく眠ることができたのだった。

ポンコツ魔女はオネェの淫魔を召喚する

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