テラーノベル
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「なんでだよ、レーナ……!」
拳を握りながらレーナに対して怒りを向ける青年がいた。その青年はレーナの住む村の唯一の神父、セイだった。
神父セイはレーナと三歳違い、現在二十三歳の幼なじみで、昔からずっとレーナのことが好きだった。
若くして神父になったセイはとても優秀で、村よりもずっと大きな街にある聖教学園を首席で卒業した頭脳派の男だ。
いつか大きくなって一人前の男になったらレーナのことを迎えに行こうと思っていたのに、横から掻っ攫われたかと思えば相手は淫魔で、しかも次期王のノアときた。
レーナの運のよさを知っているセイだが、よりにもよってなんてやつを召喚してくれたんだと文句を言いたくなった。「お前、運だけは底抜けによかったんじゃないのかよ」と。
お手つきにされた女は絶対的にその悪魔の花嫁となる決まりで、今はレインの元大人しくしているようだが、いつレーナを攫って魔界に行くか分かったものではない。
神父は悪魔を退けることができるが、あくまで退くこと──距離を取る──だけで、存在そのものを消すことはできない。力のある神父は魔界へと送り返すことができるが、まだまだ新人神父であるセイはそこまでの力はなかった。
こんなことになるならレーナが十八歳になった時プロポーズしておけばよかったと後悔が残る。
レーナがなぜノアを召喚するに至った経緯をレインから聞かされたセイは、神に身を捧げる神父でありながらも村の人達を恨めしく思ってしまった。
みんながレーナを『ポンコツ魔女レーナちゃん』なんて呼ばなければ、ノアを召喚するきっかけを作らないで済んだのに。
レーナの運がよくなければ、上級悪魔であるノアを召喚しないで済んだのに。
──レーナにプロポーズしてそばに身を置いておけば、こんなに苦しまずに済んだのに。
ギリっと血が滲みそうになるほど拳に力を入れたセイは、悪魔ノアに激しい憎悪を向けた。
結局セイは諦めきれず、一日の仕事を終わらせ夕方になってから、レーナの家に向かった。
勝手知ったるなんとやら、クローズドの看板を出されていても、ここは田舎の村なのでどうせ鍵は閉めていないのだろうと思っていたら、案の定鍵はかかっていなかった。
ここには村一番の優秀な魔女レインがいるので何かあっても問題ないだろうが、こうして勝手に入れる環境のままではよくないと、自分のことを棚に上げてセイは一人思った。
店の暖簾をくぐり、プライベートゾーンである自宅の方へと回った。
「こら、セイ! 人様の家に上がるのに挨拶もなしとは失礼だよ!」
「すみません! レインさん、お邪魔します!」
「あ! アンタは二階に行かない方が──って、もう行っちまったよ……」
レインの静止も虚しく終わり、セイはズカズカと二階へと行くと、強大な魔力を感じ怖気つく。レインからノアの話を聞いていたが、まさかここまで強い魔力を放つとは──!
レーナは魔女なのに何も感じないのか? と疑問に思うが、お手つきにされてしまっているので、お手つきにした悪魔に対し嫌悪感などを抱かないようにされているのかもしれない、とセイは結論づけた。
「レーナ!」
セイは扉を思い切り開けると、仲睦まじくキスをしているレーナとノアの姿が目に入り、セイはドアノブをつかんだまま固まってしまった。
「おばあちゃん、勝手に入らないでっていつも……。って、セイ! どうしてここに!?」
ノアと思しき男の腕の中から顔だけをセイに向けたレーナの口周りが濡れており、セイはその色気に充てられそうになったが、ノアが思いきり睨んできたので、はっと我に返る。
わざわざ神父の服装のままやってきたので、ノアには彼が村の神父セイだと理解したのだろう、警戒するような顔つきをしてセイを睨む。
次期王となる男の魔力は絶大なもので、殺気を放つノアに一歩後退るが、ここで引いては男が廃る。セイは己を鼓舞して気合を入れた。
「俺はレーナが好きだ、諦められなくてここに来たんだ」
セイの渾身の告白を受けたレーナだが、全く彼の気持ちに気づかなかったので、ぼけっとセイを見つめることしかできなかった。
そして、一言。
「え、セイって私のこと好きだったの?」
ノアはぷっと吹き出した。
この小さな村で同じように育ってきたであろうに、鈍感なレーナは近くにいすぎたセイの気持ちを何ら理解していなかったのだ。
そんなレーナをお手つきにしたノアからすればこれほど愉快なことはない。
「おまえ、今まで気づかなかったのか!?」
「だって、なんにも言われなかったし……」
ここまでくるとむしろ哀れである。ノアはセイを睨むのをやめると殺気を収め、同情の眼差しでセイを見た。嘲りも含めて。
「アンタ、その服装からしてこの村の神父セイでしょう? 今いいところなの、アタシ達の邪魔しないで」
ノアの話し方が男性にしては珍しいからだろう、セイはレーナに振られたことを一瞬忘れて大層失礼なことを口にした。
「淫魔のくせにオカマだ……!」
これにはノアも怒り心頭で、キッと眦を釣り上げて反論した。
「失礼ね! アタシは歴とした男よ! 恋愛対象も女の子! だから可愛いレーナが好きなのよ!」
ノアの大胆な告白に頬を染めたレーナを見て、負けてたまるかとセイも再度告白した。
「俺だってレーナのことが好きだ!」
セイの告白を受けてもいまいちピンとこないレーナは頬を染めながらセイを見やるが、そこには一切の熱情を感じなかった。
それを真上から見下ろしたノアは鼻で笑った。
「ふん、アタシの勝ちね。この子、最初からアタシにメロメロだったもの」
ノアはレーナの腰を抱き寄せて、そっと頭にキスをした。
「くすぐったいよ、ノア」
「可愛いレーナ、よそ見なんてしちゃだめよ?」
「よそ見もなにも、今はノアしか見えないよ」
がっちりと頭を固定されて、ノアしか見えないようにされたレーナはそのままの状況を言った。他の男に目を移してはいけないよという意味であることを分かっていないのだ。
「おい、淫魔。そこのレーナはこの通り馬鹿だ、それでもいいのか?」
「なによ、さっきから失礼ね!」
レーナは馬鹿と言われるのを嫌うので、怒りを露わにした。それを忘れているセイは、もはや完全に自分のことしか考えていなかったのだ。
しかし、淫魔ノアは違った。たった数日の付き合いでしかないのにレーナの好き嫌いを熟知しており、それがレーナの逆鱗に触れたことに気づく。
「アタシはレーナだから好きなの。レーナのことを考えられない邪魔者は消えて」
ノアが虫を払うようにしっしと手で払う仕草をすると、セイは一瞬で目の前から消えた。それに驚いたレーナは目を丸くする。
「本当にセイが消えちゃったよ!?」
「大丈夫よ、家の外に出しただけだから」
ノアの言葉を確認するように窓から覗いて下を見ると、本当に家の外にいたセイを見て呆気に取られる彼を見て胸がスッキリするのを感じた。
セイはレーナのよき理解者であったが、自分の好意を押し付けることに夢中になってしまったせいで、レーナの地雷を踏んでしまったことにようやく気づいたらしい。
セイは複雑そうな顔をして「ごめん」と二階に向けて声をかけた。
レーナは今度こそ正しく意味を理解して、「次はないからね!」と優しく諭した。
それを見たセイはもう一度「ごめん」とくり返し、レーナ達に背を向けて教会へと戻って行った。
レーナの「気をつけて帰ってねー」という言葉にひらひらと片手を上げて挨拶を返し、振り返ることもなく歩いて帰った。
全く相手にされないことで、セイは脈どころかなにもなかったのだと嫌でも分からされた。
そして、淫魔ノアの方がレーナのことをよく見ていることにもショックを受けて、セイは己の浅はかさに嫌気がした。
「俺もまだまだだな……」
セイのつぶやきを知る者は誰もいない。
セイを見送ったレーナは後ろを振り返ると、腕を組み怒っている様子のノアが目に映り込んだ。
「アタシ以外の男を魅了するなんて、本当にいけない子。そんなレーナにはお仕置きが必要ね」
にじり寄るノアにレーナは、青くなりながら首を横にぶんぶんと振った。
「お仕置き!? 痛いのはいやだよ!?」
「大丈夫よ、アタシもいたぶるのは好きじゃないの。だから、レーナからキスをして?」
思っていたお仕置きと違い、随分と甘いものであることにレーナは瞬いた。お仕置きといえば、小さい頃はレインにお尻を叩かれたりしたが、ノアのいうお仕置きはレーナからすればかなり破格な条件といえた。
「……それがお仕置きなの?」
痛くないのならそれに越したことはないが、素直なレーナは思ったことをそのまま言ってしまった。
すると、ノアは妖しく微笑み、誰もがうっとりと見惚れてしまうような蕩ける笑みを浮かべた。
「そうよ。恥ずかしがり屋さんのレーナには、いいお仕置きでしょう?」
確かにレーナはうぶな娘なので、そういった恋愛方面にはだいぶ疎い。不服なことに、村の中で一番の鈍感ともいわれているレーナは言い返せなくて口をつぐんだ。
「ほら、キスをして。アタシの可愛いレーナ」
目を閉じてキスを待つノアの顔を直視することができないレーナだが、どうしたってノアには敵わないのだ。もう何度目かも分からない腹を括り、レーナは顔を上げた。
「……ノア、しゃがんで?」
「これでいいかしら」
背の高いノアはぐっと背中を丸め、レーナの視線まで腰を下げた。
もう後には引けないレーナは覚悟を決めて、ノアの薄い唇にちゅっと軽いキスをした。
「これでいい?」
「だめ、足りないわ。もっとちょうだい」
「うー、分かったわ」
まだキスに慣れないレーナからの稚拙なキスを味わうかのように、ノアは柔らかいレーナの唇を食んだ。
ちゅっちゅとお互いの唇を食んだり、舌同士を擦り合わせて濃厚なキスをしたり、飲み込めない唾液をごくんと飲んだりと、何度も唇を触れ合わせた。
長い間キスをしていたため、二人の唇は腫れ上がってしまい、それを見たレインは呆れたように腫れに効く薬を渡してくれたのだった。
「戯れもほどほどにしておくれよ」
「はーい……」
「忠告だけ聞くわ」
いつもはキスをするだけなのに、今日の夜は違った。きっとセイが告白しにきたから、嫉妬深いノアが次のステップに進もうとしているのだとレーナは分かってしまった。
するすると服を脱がされているのに抵抗する気が全く起きないレーナは、もう手遅れなのだとなんとなく察した。
だが、それを悪くないと思う自分に驚くが、そもそもお手つきにされた時点でレーナの負けは決まっているのだと自分に言い聞かせた。
上半身裸にされたレーナは、じっと見つめてくるノアの視線から逃れるように腕で胸元を隠しながら身をよじる。
「こら、見えないでしょう」
優しく咎めるノアに、レーナはちらりと視線だけを彼に向ける。ノアは真っ直ぐレーナを見ており、熱の孕んだ瞳に浮かされそうになる。
「で、でも、恥ずかしいよ……」
「だーめ。アタシを呼んだレーナが悪いの」
ノアはレーナの肩を優しく掴むと、自身の方に身体を寄せてレーナの頬を両手で包み、優しくキスをしてきた。
ノアからキスをされるといつも頭がのぼせそうになるレーナは、いつの間にかノアとのキスが好きになっていたのだ。
レーナがうっとりとした顔になったことに気づいたノアは、レーナのピンク色のぷっくりとした乳首を見つめた。淡く色づいている可愛らしい乳首を見て、ノアは舌なめずりをする。
「可愛いわね、食べたくなっちゃうわ……」
そう言うと、ノアはちゅうと胸の先端にキスをして、熱い舌でべろりと舐めた。
「ひゃあん!」
ちゅうちゅうと吸い、舌先でつついて好き勝手に乳首をいじめる。
初めての感覚にレーナは胸元にいるノアの頭に縋りつき、どうにかその感覚から逃れようとするが、そんなことノアが許すはずもなく、ただ与えられる得体の知れない感覚に身体が痺れそうになる。
「なにこれ、頭がおかしくなりそう……!」
「気持ちいいってことよ」
「そうなの……?」
「そうなの」
これが気持ちいいという感覚なのか。キスも気持ちいいが、キスとはまた違った気持ちよさを身を持って教えこまされるレーナは、自身の身体をノアに委ねることにした。
大人しくなったレーナが自分に身を任せてくれたのだと察したノアは、レーナが己を信頼しているからこそ身体を預けているのだと嬉しくなり、触れるだけのキスをした。
「反対側も可愛がってあげる」
くりくりと乳首を指で捏ねくり回され、快感というものを知ったレーナは身体がびくびくと震え始める。
そして、散々ノアに可愛がられたことで、下腹部から何かが出てくるのが分かった。
「ねえ、ノア、おなかから何か出てる……」
「それはね、アタシを迎え入れる準備をしているのよ」
一応性教育は受けているので知識としては頭の中にあるが、身体がこんな風に火照るだなんて知らなかったし、過ぎる快感はクセになりそうでレーナは少し怖くなった。
「準備?」
「そう。でも、最後までしないわ。だから、怯えないで、アタシだけを見ていて」
「うん……」
レーナの恐怖を感じ取ったのか、ノアは努めて優しく言葉と愛撫で諭し、レーナの心が落ち着くまで何度もキスをくり返した。
そうされることでレーナの心はやがて平穏を取り戻し、ノアから受ける快感というものを甘んじて享受することに決めた。
「少しずつアタシと愛を深めていきましょうね」
「うん」
否定されなかったことが存外嬉しかったノアは、レーナの胸を堪能しながら「可愛い」「大好きよ」とくり返した。
これから少しずつノア好みの女にされるのだと思うと、ドキドキとほんの少しの恐怖がレーナを襲うが、意地悪だけど嘘はつかない優しい悪魔(淫魔)のノアを信じてみようと、レーナは全てを委ねることにした。
それからというもの、淫魔ノアによるレーナの夜のレッスンが濃厚なものへと変わっていった。
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