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第三十七
章喪失
―届かぬ声―
「……ここにいましたか」
煉華の後を追ってきた羅刹は、煉華の背中に静かに声をかけたが煉華は振り返る事も返事をすることも無かった
「……一人になりたかったのですか?」
「……」
ゆっくり近づき真後ろに来ると耳元に口唇を寄せ囁いた
「ですが、逃げることはできませんよ」
「!?し、神官さま?」
すぐ真後ろまで来ていた。足音も何も聞こえなかったことに顔色が悪くなり冷たい汗が背中を伝った
「あなたは気づいてるはずです…失う怖さを」
羅刹は構わず耳元で話し続けた
「それでも…
覚悟は……できていますか?」
「もちろん、っ!!」
羅刹の問に答えようとしたが続く言葉に息を飲んだ
「朱雀の巫女としてではなく――緋月煉華さんとして」
真っ青な顔して煉華は震える自分の腕をぎゅっと掴んだ。覚悟…もちろんしてた。
でも…それは――
「落ち着いたら来てくださいね。皆さま心配されてますよ…朱雀の巫女さま」
微笑し距離をとると羅刹は一礼し食堂に戻った…
「…私の日常が…」
――壊レテク
「わた、しの…っ聴覚が…」
――消エテク
頬を濡らす涙をぐいっと拭うと冷たい水で顔を洗う。
流れる流水も微かにしか聞こえない。
あーやっぱり聞こえなくなってきている…
煉華は改めて自分の状況を声に出し認識をした
◇ ◇ ◇
「準備できましたよ。後は…煉華ちゃんが来るだけです」
みんなは煉華か自ら食堂に戻ってくるのを待った
代償が出てるから気持ちがわかる。でも、だからこそ自分が受け入れないと手を差し伸べ寄り添うこともできない
代償はまだ出てない。だから簡単に慰めるなんてしてはいけない
それぞれ思いを胸中に抱いていたが根底は一緒だった
――絶対に、独りにはしない
コメント
1件
輪廻さん、第37話読ませていただきました…! 羅刹が「朱雀の巫女としてではなく――緋月煉華さんとして」と問いかける場面、すごく響きました。立場じゃなくて、一人の人間として覚悟を問うその距離感の取り方が繊細で…煉華の震える腕と「日常が壊れていく」感覚の描写が胸に迫ります。代償と向き合いながらも「独りにはしない」という仲間たちの想いが温かくて、切ないけど救いがある回でした。続きが気になります。