ぐち逸が会う度に良さげな場所を提案してきたお陰でトントン拍子で事が進み、街の外れに小さな一軒家を買った。
「リビングはソファーとテーブルとテレビと…あとなに置く?」
「これとか良いですよ。」
「なんだよこれwまぁあってもいっか。」
ぺいんがメインの家具を置いていき、ぐち逸はセンスがあるのか無いのか、謎の置物や絵画を飾った。ふざけているのか本心なのか見抜けないのがまだまだぐち逸を理解しきれてないなと少し悔しくなった。
「この部屋はこんなもんかな。次自分達の部屋やろ。」
「あの、寝室って無いですよね。」
「部屋数的に作れないねぇほんとにちっちゃい所にしたからな…お互い仕事の云々あるから自室は無いとだし、狭いけど自分達の部屋にベッド置く事になっちゃうね。」
「そうですよね…」
眉を下げ肩を落とす様子を見てすぐにぐち逸の望んでいる事が分かった。
「うーん…あ!じゃあさ、2人ともダブルベッド置いてどっちも来たい時に来て良いってのはどう?許可は取るけどいつでも自由に。」
「それだと部屋分ける意味無くなりますよ。」
「仕事関連の物はちょっと奥のほうに隠そ!絶対開けちゃダメスタッシュ置いてさ。」
「ぺいんさんは不便にならないですか?」
「俺は備品は署にあるし後はパソコンのデータぐらいだから平気だよ。ぐち逸のほうがやりにくくならない?」
「まぁ1つ収納あれば事足りると思います。でも良いんですか?」
「よし決定!だってせっかく一緒に住むのに寝るのは毎日別々なんて俺嫌だもん。」
「ぺいんさんがそう言うなら。」
納得したような、晴れやかな表情をして自室に入っていった。ここでも必要最低限の物しか置いていない簡素な部屋になったがベッドにずっと悩んで、結局ぺいんと同じものを置く事にした。
「よし引越し終わりー!今日から俺達の新生活スタートだ!」
「私達の…ふふっ。」
「ふつつか者ですがよろしくお願いします。お腹空いちゃった、なんか食べよ。」
「これダイナーで買ってきました。」
「えっ蕎麦!?流石ぐち逸気が利くぅ〜!」
疲れと冷えと空腹と、1口食べただけで全身に沁み渡り全てが満たされる。夢中で食べてソファーで寛いでいるとぺいんの瞼がだんだん下がっているのに気が付いた。
「眠いですか?サッとシャワー浴びてきては。」
「ん〜そうする、でももうちょい休む…」
「そう言いながら本気で寝かねないじゃないですか、ほら起きてください。」
「じゃあぐちーつおこして〜。」
「起こす?では手貸してください。」
伸ばされた腕を掴み引っぱって立たせ、その勢いのまま浴室前まで連れて行った。意外と強引な所もあるのかと驚きつつ、ここまでされたら入るしかないと諦めたぺいん。
「あ、そうだ一緒に入る?」
「それはっ!…遠慮しておきます。」
「そっかぁじゃあお先に。」
シャワーを浴びて出たら今度は自室に強引に連れて行かれ、おやすみなさいとドアが閉まった。少し目が覚めたぺいんは布団に入りグダグダしていると数十分後ドアがノックされた。
「はーい。」
「ごめんなさいまだ起きてましたか?」
「うんスマホ弄ってた。どうした?」
「あのー、その…ぃ、一緒に寝ても良い、ですか?」
「!もちろん!はいここおいで。」
広げられた腕の中に入ってぺいんの服の端を掴んだ。優しく抱き寄せられ撫でられ、心地良さに耐えられずすぐに寝てしまったぐち逸を愛おしさを込めて見つめた。
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