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体の大きさは俺のほうが上だったのに、中肉中背の玲夜くんのもつスピードとパワーにまったく歯が立たなかったせいで、瑞稀を危険な目に遭わせてしまうなんて。
「……恋人として、俺は失格だ」
気がついたら、柔らかいものが唇に押しつけられた。すぐに離れては、ふたたび押しつけられるそれに、瑞稀らしい優しさを感じずにはいられない。
「マサさんは俺が守るよ」
「瑞稀?」
「俺の血がマサさんの苦しみを和らげることができるなら、玲夜さんにたくさん血を提供してあげる。吸血鬼にならない特効薬を作ってもらうんだ」
(情けない吸血鬼の俺を、人間の瑞稀に慰められるとか、本当にダメだな――)
「吸血鬼の俺は、役立たずだからね。必要のないものは、玲夜くんに排除してもらったほうが」
「そうじゃないよ、違うって!」
瑞稀の両手が俺の頬を包み込み、動かないように施された。
「吸血鬼でいることがつらそうなマサさんを、俺は見たくない。ただそれだけなんだよ」
「ああ、瑞稀と同じがいい。吸血鬼じゃなくひとりの男として、瑞稀と向き合いたい」
吸血鬼の唾液の成分で乱れる瑞稀じゃなく、ひとりの男として瑞稀を感じさせたい。そう思ったから強い気持ちをもって、瑞稀の血を欲しがる吸血鬼の俺を追いやり、瑞稀の体を貪った。
「んんっ……ぁっ…っぁあ」
寝室に移動し、瑞稀の服をすべて脱がして、丁寧に愛撫していく。カーテンの隙間から覗く満月の光が、瑞稀の肌を艶めかしく照らした。
「マサさ……んぅっ、は…ぁっ……!」
前回背中につけられた爪痕の上に、瑞稀の指先が触れて傷を疼かせたが、それすらも俺の快感に繋がる。しかも時折甘い血の香りが漂ってきて、吸血鬼である俺を引き出そうとした。
それに抗いたい一心で、瑞稀に頼みごとをする。
「瑞稀、うつ伏せになってくれ。君と深く繋がりたい」
「ん、えっとこう?」
愛撫の動きを止めて瑞稀の上から体を退かしたら、恥ずかしそうに体を反転させた。
「それから腰をあげて。俺の全部を受け挿れるように」
「マサさんの全部……俺はすべてを受け止めてあげる」
少しだけ振り向き、ほほ笑んだ瑞稀は弓なりに腰をあげる。細い太ももを撫でさすってから、ひとつになる部分に触れた。
「あぅ…ッ…っ!」
「しっかりローションをつけて慣らしは終えているから、瑞稀は動かずにそのままでいてくれ」
熱り勃った俺自身を、瑞稀のナカにゆっくり挿入する。
「んっ、やっ、もっ…とゆっくりぃっ!」
体を戦慄かせて訴える瑞稀は、どこかつらそうに見えた。しかもナカの様子は、前回より締めつけがヤバい。気を抜いたら、すぐにでもイける自信がある。
「瑞稀、ゆっくり挿れているが、ここで一旦出し挿れすると、君の感じる部分に刺激を与えてしまう」
言葉より実践したらわかるだろうと思い、小刻みに腰を上下させた。
「あっ…ああん! やぁっあっ…んあっ……」
「それよりも、一気に突き刺したほうがいいだろうか?」
「どっ、どっちも刺激がっ…うぁっ、つっ強すぎ、るぅ…らめぇ…っあぅ」
今までしたことのない体位だから、刺激が強いのか――それとも未だに、玲夜くんの唾液の成分が残っているのか。どっちにしろ瑞稀が淫らになっている姿に、興奮を覚えてしまう。
「んっ…は…あぁっ」
俺が動きを止めているというのに、瑞稀が腰をしならせるたびにナカが締まり、甘い花の香りがふわっと辺りに漂った。それを感知した瞬間、自動的に吸血鬼に変貌し、瑞稀の血を欲して喉が渇きはじめる。
「マサさんっ…マサさ、ああぁっ、すき、あぅっ! すっ、きぃ……っ!」
「瑞稀、俺も瑞稀が好きだよ。俺だけを感じてくれ」
瑞稀の血を欲する体を無理やり閉じ込め、下半身に意識を集中した。ひとりの男として人間である瑞稀と繋がっている現状を知らしめるべく、一気に奥に突き刺す。
「あああ゛ァッ!」
早急な行為に絶頂した瑞稀の上半身を抱きしめ、俺もラストスパートを目指して腰を激しく前後させた。最初から最後まで人の姿で瑞稀とまじわることに、言い知れぬ想いが込みあげていく。
「んっ、やっ…だめ、あっ、あっ…んぅぃぃっ!」
イったばかりの瑞稀自身を扱くと、ナカがいい具合に締まるので、ここぞとばかりに弄り倒した。
「ぁあ…っも…だめっ! またイっちゃう!」
「一緒にイクよ、瑞稀っ!」
暗闇の中、一緒に絶頂した俺たちの姿を、月光が淡くライトアップする。瑞稀が放つ甘い血の香りに負けることなく、人の姿でいられたことは、俺の自信につながったのだった。