テラーノベル
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#spl実況者イラスト
しろ
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第1話:保護費支給日とカクカクのスマホ、そして就労意欲のゆくえ
朝7時。うすら体調が悪い。
熱があるわけでも、どこかが激しく痛むわけでもない。ただ純粋に、全身の細胞が「起きたくない」とストライキを起こしているような、四十代特有の重だるさだ。
しかし、今日だけは這ってでも起きなければならない。
月に一度の、絶対に逃れられない「儀式」の日だからだ。
「――で、今月はハローワークには行かれましたか?」
市役所の生活支援課、一番奥の面談ブース。
アクリル板越しに放たれたその言葉は、俺の胃袋をギュッと雑巾のように絞り上げた。
声の主は、俺の担当ケースワーカーである鈴木(すずき)さん。
パリッとしたスーツを着こなす、おそらく二十代後半の若手職員だ。レンズの奥の目は冷徹で、仕事への責任感に満ち溢れている。つまり、俺のような人間の天敵だった。
「あ、いや……ネットの求人サイトは毎日チェックしてるんですけど、なかなか年齢と条件が合うものがなくて……その、慎重に選んでいるというか」
「なるほど。ネットで探すのも結構ですが、実際に足を運んで相談することも大事ですよ。……ところで、前回お渡しした就労支援プログラムのパンフレットは読んでいただけましたか?」
「ええっと、はい。もちろんです。前向きに検討を……」
嘘である。鍋敷きにした後、資源ゴミに出した。
鈴木さんは手元のバインダーに何かを書き込みながら、ため息を一つこぼした。その小さな息音だけで、俺のHPはゴリゴリと削られていく。
「厳しいことを言うようですが、四十歳という年齢を考えると、選り好みをしている余裕はありません。生活保護はあくまで『自立への手助け』です。……就労意欲は、見られますか?」
「あります! めちゃくちゃあります! 来月こそは必ず!」
ペコペコと何度も頭を下げ、逃げるように役所を後にした。
自動ドアを抜けて外の空気を吸い込んだ瞬間、どっと冷や汗が噴き出す。
「……寿命が縮むかと思った」
時刻は午前10時。
すれ違う人々は皆、足早にどこかへ向かっている。営業マン、買い物袋を提げた主婦、楽しそうに笑い合う大学生。
誰もが、この社会という巨大なシステムの一部として機能している。
俺だけが、バグのようにポツンと突っ立っていた。
ズボンのポケットから、三年前に買った格安スマホを取り出す。
画面には無数のヒビが入り、バッテリーは常に虫の息だ。
とりあえず、日課であるソシャゲのログインボーナスを受け取ろうとアプリを起動する。
『Now Loading…』
画面の右下で、デフォルメされたキャラクターが延々と走り続ける。十秒、二十秒、三十秒。
ようやくホーム画面が表示されたと思ったら、最新の3Dグラフィックにスマホの処理能力が追いつかず、画面がカクカクとコマ送りのような状態になった。
「重っ……なんだこれ、紙芝居かよ」
スワイプする指の動きから、3秒遅れて画面が動く。
デイリーミッションをこなす気力など到底湧かず、ログインボーナスの石だけを受け取ってアプリを落とした。最近のゲームはシステムが複雑すぎて、新しく勉強する気にもなれない。
ボロアパートの四畳半に戻ると、万年床にダイブした。
天井の木目を数えながら、昼のワイドショーの音声だけをBGMにして特売のインスタントラーメンをすする。
(……俺は、何になりたかったんだっけ)
昔は、ライトノベル作家になりたかった。
壮大な世界観と魅力的なキャラクターを妄想し、ノートに設定を書き殴っていた。だが、「設定」を考えるだけで満足してしまい、未だに一行も本文を書いたことはない。
最近は、VTuberになりたかった。
画面の向こうでちやほやされる若者たちを見て、「俺にだって面白いトークができるはずだ」とオーディションに応募し続けた。結果は、書類選考の時点で落選。送った自己PR動画は、再生回数「0」のまま放置されている。
「……才能がないなら、せめて若さが欲しかったな」
ラーメンの汁を飲み干し、俺は再びヒビ割れたスマホを手に取った。
自分の頭ではもう、この詰みきった人生をどうにかする方法なんて思いつかない。
ブラウザを開き、最近よく話し相手になってもらっているAIツールを開く。
入力欄に、ヤケクソ気味に文字を打ち込んだ。
『40歳、無職、生活保護受給者。特技なし、体力なし、カクカクのスマホしか持ってない限界おじさんが、一切働かずに完全無料で人生を一発逆転して、チヤホヤされる方法を教えて』
どうせ、「就労支援センターに行きましょう」みたいな模範解答が返ってくるんだろう。
そう思って送信ボタンを押した俺の目に、数秒後、AIが弾き出した予想外の文字列が飛び込んできた。
コメント
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この第1話、めちゃくちゃリアルで胃がキリキリしました……。ケースワーカーとの面談の空気感、カクカクのスマホでソシャゲすらまともに動かない絶望、そして「何になりたかったっけ」と天井の木目を数えるシーン。全てが「詰み」の象徴として機能していて、設定の密度が濃い。 最後のAIの返答がどう転ぶのか、ここから「逆転」の種がどう発芽するのか——世界観の設計がどう動くのか、続きを読みたいです。