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ろのみ🩵🫧
43
#愛され
おうか
252
──清水部長は、それから……割りと早いスパンで電話をかけてきた。
おそらく、家が近いということで、遠慮が無くなったのだろう。正確には近かった、だけど。
「……湊、何か疲れてるのか? 」
不意に言われ、取りつくれていないことにハッとした。
「え? そうかな」
「……違うのか? 」
顔を近づけて、窺うように見る。
……優しい目。
「忙しいからなぁ。最近」
「そうか、じゃあ……元気出るように、しっかり食べろ」
そう言って、じゅうじゅう焼けたお肉をどんどん私のお皿に入れていく。
高級な焼肉屋さんで、清水部長はトングを持ち甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。
「やだ、そんなに食べれない」
「太れ、ちょっと。もう、痩せるような事はないんだろ? 」
……あの男の事など話しても仕方がない。この人とも……状況は似たようなものだ。
「……そうだね。デザートまで食べようかな」
そう言って笑うと彼も目を細めた。お父さんかよ。
清水部長は完璧な人だった。
頼りがいもあって、優しく包み込むような……それでいて、甘やかし過ぎず、自由にさせてくれるような。
……そして時々……母性本能を擽るような可愛さもある。
人の気持ちを掴むのが上手いな。この人を好きにならない女なんて、いないだろう。きっと……。
「そういえば、吉良くんとは仲いいの? 」
「そうだな、まあ……」
「会社、来てるんだよね」
「ああ、今日は……彼じゃなかったけどな」
「……麗佳さん?」
「あ、知ってるのか」
名前は吉良くんから聞いただけだけど。この前一緒にいた遠目に見ても綺麗だってわかるほどの美人。
「うん、見かけたから。すっっごい美人だよね」
「はは、そうだな。確かに」
「吉良くんも、麗佳さんも、すっっごいもんね。見た目。部長の会社でもモテてたりしないの?」
あれほどの人達なら目立つだろう。何気に聞いた。
なのに……微妙な……顔をしたのを見逃さなかった。
あれ?と悟るものがある。
「清水部長……も? 」
「え、ああ。昔ちょっと、な」
麗佳さんと何かあったのは……吉良くんと、付き合う前?
私の顔がよっぽどだったのだろう
「綺麗だなって、思ってただけだよ」
そう言った。
……何かあったのではないと思う。けど、麗佳さんのこと好きだったのかな……たぶん。そんな、気がした。
「面食いだなぁ、吉良くんも清水部長も」
「それは、湊の事も含めて? 」
イタズラっぽく笑う彼に……なぜか笑えなくなって、目の前が滲む。
「え? 湊……」
「煙たい。ちょっと、それ焦げてるんじゃない? 」
「ああ、悪い」
「本気の時だけ面食いか」
「え?」
|案山子《かかし》だ。案山子みたいな物だ。彼女に比べたら、私の顔なんて。自分と比べるのもおこがましい。胸が苦しい。
「今度、金曜日……早く帰れるようにする。泊まって……そのままどこか出掛けようか。土曜日。……準備持って来て」
清水部長とは、いつも翌朝に仕事のある平日しか会った事がなかった。
土曜日か……だけど、その前の金曜日。金曜日で9回目。そうだ。最後にすると決めた……9回目の約束だった。
顔を上げて、精一杯の笑顔を向けた。
正直、ちょっと油断もあった。
昼休み、二宮くんが見当たらなかったのでそのまま一人で会社を出た。
この前会ったコンビニを避け、駅の方へ。
「湊」
私を見つけると、安堵したような表情。その後、怒りを含んだような目でその男は私を睨んだ。
「何で連絡くれないんだ」
なぜ、この状況で私を責めれるのだろう……。
掴まれてしまった腕を振り払う。
「待てよ」
そこから、思いっきり走った。
すぐにまた腕を掴まれた、その反動で地面に倒れた。
オフィス街で目立っただろう。
彼はばつが悪そうに、周りを気にして、手がゆるんだ拍子にもう一度逃げた。
彼の方向から見えない位置に隠れるように死角になる場所を見つけて座った。
膝から……血が出てる。それに、足首も痛めた。
痛めたままに走ったから、もう……立てそうもない。
情けなくて、涙が滲む。ちょうど、電話が鳴った。
「|皆《みな》さん、一人で出かけたら!」
「ごめん。二宮くん来てくれない? あの彼……がいて……今隠れてるんだけど……足を」
「どこ!?」
二宮くんに説明すると、すぐ向かってくれるとのこと。
二宮くんが迎えに来てくれる事になって、ホッとした。
「湊?」
頭上から声が聞こえ、全身の毛が逆立つように驚いて、顔を上げた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 第5話-2、読みました…。 清水部長の優しさが逆に胸に刺さる回だったね。高級焼肉屋で「太れ」って言って肉を取ってくれる優しさと、「本気の時だけ面食い」って冗談で返すところ、湊さんの内心の苦しさが滲んでて切なかった…。 部長と麗佳さんの過去のこと、湊さんが自分と比較してしまう描写がすごくリアルで、読んでて胸がぎゅっとなったよ。 最後、二宮くんとの電話で「足を…」って言うところまでで終わったけど、無事でいてほしい…🖤