TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

結婚相手を間違えました

一覧ページ

「結婚相手を間違えました」のメインビジュアル

結婚相手を間違えました

36 - 第36話 裏切りにはそれ相応の制裁を④*

♥

112

2025年03月02日

シェアするシェアする
報告する

その表情を見ながら、偉央いおはどれだけ自分は結葉ゆいはを痛めつけたら気が済むのだろう、とぼんやり思う。


結葉ゆいはが辛そうな顔をするたびに込み上げてくる情欲をはらんだ愉悦と、誰よりも大切な結葉ひとに優しく出来ない自分への苛立ち。


眉一筋動かさない顔ポーカーフェイスの下で、偉央いおがそんな葛藤をしているだなんて、きっと結葉ゆいはは思ってもみないんだろう。


それがまたどうしようもなく腹立たしく思えてしまう偉央いおだ。



「僕に『ごめんなさい』って言ったのは口から出まかせだったの?」


残念だな、と心底意気消沈したように言葉を落とせば、結葉ゆいはがギュッと唇をつぐんだのが分かった。


「出まかせじゃ……あり、ません」


言って、そろそろと四つん這いになって偉央いおの方へお尻を向ける結葉ゆいはを見て、偉央いおは堪らない安心感を覚えるのだ。


「いい子だね、結葉ゆいは


羞恥心しゅうちしんと恐怖に小さく震える結葉ゆいはの色白の臀部でんぶを優しく撫でさすると、偉央いおは彼女の華奢な腰を両サイドからしっかりと掴む。


そうしてそのまま、何の予備動作もないままに彼女の隘路あいろを一気に最奥まで貫いた。


「……いっ、やぁぁっ!」


途端部屋の中に、結葉ゆいはの泣き声混じりの悲鳴が鳴り響いた。



***



結葉ゆいはが目を覚ました時、偉央いおはすでに結葉ゆいはのそばにはいなかった。


偉央いおさんの夕飯……)


ぼんやりとした頭で昨夜は帰宅するなり偉央いおに酷く折檻せっかんをされて、用意したはずの料理を何ひとつ出せなかったことを思い出した結葉ゆいはだ。


(いまって……何時、なの?)


薄暗い部屋の中、チッチッ……と壁時計の秒針が刻む規則正しい音は聞こえているけれど、文字盤が見えなくて時間が分からない。


そのことが、結葉ゆいはを物凄く不安にさせた。



偉央いおからどんなに手痛い仕打ちを受けても、夫に尽くす以外の道を見いだすことが出来ない結葉ゆいはは、しいたげられても傷付けられても偉央いおのことを最優先に考えてしまう。


偉央いおとの数年に及ぶ結婚生活のなかで身についてしまった条件反射のようなその習慣すりこみは、頭ではおかしいと分かっているのにめることが出来なくて――。


あちこち痛む身体をかばいながらノロノロとベッドに身体を起こしたら、何も身につけていない肌から布団が滑り落ちた。


その微かな刺激ですら思わず眉根を寄せてしまうような痛みを伴って。


「――っ!」


結葉ゆいはは苦しさを逃すみたいにギュッと唇を噛み締めた。


呼吸をゆっくり整えながら冷静になれば、中でもシーツに直に触れている秘所の辺りが、特に痛むのが分かった。無理に何度も何度も偉央いおのモノで擦られたことで、入り口付近が熱を帯びて腫れているのを感じて泣きたくなった。


こうなると、きっとトイレのたびに痛い思いをすることになる。


一度それが原因でおしっこを我慢しすぎて膀胱炎になったことがある結葉ゆいはだ。


通院のために偉央いおの手をわずらわせることになってしまったのが、物凄く申し訳なく感じられたのを思い出す。


(トイレだけは我慢しないようにしなきゃ……)


そんなことを考えていたら、むなしさにふっと涙腺が緩んで、涙がこぼれ落ちてしまう。


本来ならば幸せなはずの、夫と肌を重ね合わせるという行為が、自分にはどうしてこんなにも辛いんだろう。



偉央いおはどんなに激情に駆られていても、決っして結葉ゆいはのなかで果てることはなくて。


それが、結葉ゆいはにはこの上もなく悲しかった。


こんなに苦しい思いをしても、自分には何の喜びも与えられないとか……一体何の拷問だろうか。


ぼんやりと見下ろした自分の身体は、あちこちがアザと擦過創さっかそうに覆われていた。


きっと見えない背中にも――。


結葉ゆいはは、満身創痍まんしんそういの身体を前に、居た堪れない気持ちになった。


ただ、そんな中にあってひとつだけ結葉ゆいはの心を救ったのは、身体が綺麗に清められていて、恐らく痛みを伴っている身体のあちこちに手当てがされているのを実感できたことだ。


偉央いおは獣医師だから、昔から結葉ゆいはが怪我をした際には的確な知識をもって手当てをしてくれる。

動物病院で使っている薬も、実は動物専用のものは二割くらいしかなく、人間用のものを使っていることがほとんどだとかで、そこから薬を見繕ってきてくれることも結構あって。


今までも、こんな風に酷く抱かれた後、結葉ゆいはが意識のないうちに処置されていることが多々あった。


飴とむちだと言われればそうだし、こんな風に怪我をさせなければ良いことだと言われれば、無論その通りなんだろう。


それでも、決して汚れたままの結葉ゆいはを放置しないことや、怪我をしたところをそのままにしておかないところに、不器用な夫からの愛情を垣間見てしまう結葉ゆいはは、どうしても偉央いおに対する気持ちを捨てきれない。


だからこそ――。


結葉ゆいははこんなにも偉央いおのことが怖いにも関わらず、偉央いおとの関係を何とか維持したいと思ってしまうし、昔のように笑い合える仲に再構築出来たなら、と期待してしまうのだった。

結婚相手を間違えました

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

112

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚