プロローグ
…寒い。
異様な寒気を感じ飛び起きる。
昨日はもう遅かったから、一旦寝ようとおじさんが提案してくれた。
横を見るとおじさんが僕の毛布を奪っていた。
満足そうな顔で寝てやがる。
お陰で僕は風邪を引くところだったんだぞ。
取り敢えず、まずはおじさんを起きさなきゃ、
僕「おじさん、朝だよ起きて。」
「おじさん?それ、僕の布団だからね?」
お「ん〜、あと5分…むにゃむにゃ」
僕「駄目だよ。今起きて。」
お「はっ!今何時!?」
ビックリした。もう少しゆっくり起きてよ。
そう思いながら僕は時計を確認する。
僕「今は…8時半だね。」
お「え!?どうしよう遅刻だぁ!」
そう叫ぶと同時におじさんは慌ただしく準備し出した。
…ん?待てよ?
僕「おじさん、今日土曜日だけど、仕事あるの?」
休みの日にも出勤とか…どんな職業なんだろう。
お「…あ、今日は休みだったか!」
…全く、朝から騒がしいったらありゃしない。
第2章 誘拐犯(仮)
「「いただきます。」」
お「いや〜、参ったよ。本来ならもう少し寝れていたのにね。」
話しながらおじさんは焼き目の着いたトーストにかぶりつく。
美味しそうに食べるなぁ…
病院だと1人での食事だったから、なんだか新鮮。
僕「全く、おじさんが僕の布団取るから、寒かったんだけど?」
お「ははは、それは済まなかったね。」
僕は本気で怒っているのに。
僕「それよりも、僕そろそろ病院に戻らなきゃ。」
お「あれ?抜け出してきたのに戻るの?」
僕「いや、病院は嫌だけど、戻らないと看護師さんが心配するし。」
お「親御さんは?心配してくれないの?」
僕「しないよ。あの人達、僕に興味無いから。」
「いっつも、身体が強くて成績優秀、おまけに運動も出来る、妹の
ことばっか。」
僕「僕のことなんてどうでもいいんだ。」
お「それは、大層ご立派な悩みだな。 」
僕「そう?」
僕「…でもやっぱり戻りたくは無いよねぇ。」
僕がそう言うと、おじさんは少し考えてからこう言った。
じゃあ、僕が誘拐したって事にしようか?
僕「は?誘拐?」
お「そ。誘拐犯に誘拐されたなら居なくても君は怒られない。」
「いい考えだろ?」
僕「えー、確かに夢はあるけど…」
「おじさんは大丈夫なの?それでいいの?」
焦り口調で聞く。
お「いいんだよ。守る為の誘拐とか、なんかロマンあるじゃん!」
ロマンの為だけに誘拐するなよ…
僕「ん〜、それなら良いけど…」
お「だよな!じゃあ早速病院に電話するぞー!」
僕「おー!」
人とこんなに話すの、久しぶりかも。
話すのって、こんなに楽しいものだったんだ。
プルルルルルル、プルルルルルル、、
ドクン、ドクン、、
電話のコールの音と心臓の音が混ざり合う。
看護師「はい、○✕病院です。どの様なご要件で?」
お「おい、その病院で1番偉い者を出せ。」
おじさんは、あらかじめ携帯電話で声を変えられる機能を使っていた。
テレビでよく見てたヤツだ。
あの誘拐犯特有の声。
看護師「すみません、私ではいけませんか?」
「医院長にも用事がありまして…」
お「俺はそこの病院の患者を1人、誘拐している。」
看護師「え!?」
電話越しに、いつもの看護師さんの悲鳴が聞こえる。
そう思ったのも束の間、おじさんは僕に携帯電話を渡して来た。
それっぽい事を言え。そう言いたいのだろう。
分かってますよ、と言い返すかのように、イタズラっぽく笑ってみせる。
僕「看護師さん!僕、知らない人に連れてかれてて、此処が何処か分 からないの!!」
看護師さんを適当な嘘で騙し、何度も夜中にゲームしていた僕だ。
演技には自信がある。
看「え、そんなッ…貴方が居なくなったら怒られるのは私なのに…」
衝撃だった。
看護師さんが僕にとって、唯一の話し相手だった。
それなのに、この人は僕の事を利益を得るだけの為の道具に過ぎなかったのだ。
僕「ぁ゛…」
ショックで声が出ない。
それを察したのか、おじさんは僕の手から電話を取り、再び話し始めた。
お「金とかは請求しない。」
お「利益の為だけの子供なんて、そっちにも必要ないだろう?」
看「え、待って下さいよ!」
おじさんは看護師さんを無視して電話を切った。
僕「…ありがと」
お「クゥー!やっぱり僕って出来る男だなぁ!!」
少しイラッと来たけれど、これはおじさんなりに僕を気遣ってくれているのだろう。
僕「あはは、自画自賛すんなよ!www」
お「…まぁ、ただ単に僕がイラッと来たのも理由の一つだけどね。」
僕「…おじさんって、僕が出会った中で1番ダサくてカッコイイかも。」
お「…矛盾してるよ。」
第2章 誘拐犯(仮) 柊
コメント
2件
キィヤァァァアァァ!!好きですぅん。