ほんのり甘くてほんのり苦い
濃厚で口の中いっぱいに溶ける程
そんな感覚だった。
僕が見た景色。
まるでお菓子の家に居るような気分
子供の頃のお菓子の家の想像って
見るのも考えるのも豊かだった。
大人になったら
そんなの現実にある訳ないと
言うだけ。
夢を見させてくれていたあの頃に
戻りたいと強く願った。
願っても願って叶わない。
なら自分で叶えて見せようと
パティシエの道に進んだ。
お菓子の力で
お客様を喜ばせようと思った。
数年経って店をオープンさせた
女性が店の前で立っていた。
どうやら、恋をしてるようだ。
僕はそっと近づき、
女性にキャラメルを渡した。
女性は、「え?」という顔をしていた
頑張れって声を掛けて店に戻った。
あの女性もきっと
これから沢山
甘くて苦い恋をするのだと
そう思ったからだ。
カラメルが溶けた瞬間
女性と好きな人が結ばれます様に。
終わり