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夢「ぎぃ…」
ギィ「気がついたか?」
夢「…うん…」
小さく掠れた声で返事をする。体は少し火照っているように見えた。
ギィ「夢、体を起こせるか?水を飲んだほうが良い。」
夢「…わかった…」
ゆっくりとベッドに手をつき、起き上がる。頭が痛いのか、めまいがするのかフラフラと揺れていて、今にも落ちそうだった。不安定な上半身を支える為に夢の横に座り、片腕を腰にまわす。
ギィ「無理するな。」
夢「ごめ…」
空いている片腕でコップを持ち、夢の口に運んだ。うまく飲めないのか少し口から水がこぼれてくる。その水を服の裾で拭う。水を飲むとまた元の寝ていた体勢に戻ってしまった。
ギィ「耐性は?」
夢「ほとんど…機能してなくて…」
ギィ「はぁ…」
ぼんやりとこちらを見つめる瞳はいつもよりも光がなく、心做しか、赤く輝いているようにも見える。
夢「ぎぃ…」
ギィ「どうかしたか?」
夢「ぎぃは…いなくならないよね」
いつもより小さく聞き取りづらい声で理由もわからぬことを呟く。その時の夢の顔は赤く、涙が溢れていた。
夢「私…いい子にするから、だから…、いなく…ならッない…で…」
涙が溢れて上手く喋れないのか、それとも舌が回らないのか。カタコトの言葉は夢の不安定さを表しているようだ。
ギィ「いなくならねぇよ。だから落ち着け。」
そう言って、布団から出ている右手を握ると、ほっとしたような顔で微笑んだ。夢が今なにを考えて、何に悩んでるかなんて分からないが、これは体調が戻ったら問い詰めなければならないな、と思った。それでも今だけは、夢の望むように離れないでいよう。
わたしは、何時間寝ていたんだろうか。真っ白な雪景色は太陽の光を反射せず、辺り一面真っ暗だった。
小さく月が輝いている。いまにも消えそうなくらい小さく。
ギィは部屋にはおらず、おそらくお仕事をしているのだろう。なんとなく、寂しかったが、ギィにもリムルにも仕事があるのだ。仕方ない。
仕方ない…はずなのに。心では分かってるはずなのに。
また捨てられる
私が悪い
独りになりたくない
みんな殺した
みんな嫌い
お前が悪い
痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい
魔素が溢れる。身体が痛い。抑え込めない。
ギィ「夢…!!」
爆発的な周囲の魔素の上昇。
空気が揺れる。
嫌な気配。
何より、思念伝達で流れ込んでくる夢の声。
「暴走したか…」
急いで夢の部屋まで向かう。
「夢…!!」
布団に包まり、必死に抑えようとする夢。
「夢!!抑えなくていい!!!」
こちらの声が聞こえていない。
いままで、夢が自分の暴走を抑えようとしたことは無かった。理由は周りへの信頼か、はたまた抑えようと考えつかなかったのか。
夢の暴走は、身体の中の魔素の器にヒビが入り、魔素を外へ出そうとすることで引き起こる。
それを無理に止めようとすると、器が完全に壊れるかもしれない。
「ちっ…」