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夢「んぅ…。」
朝だ。太陽の光を雪達が反射して明るくキラキラと輝いている。眩しい。
何日寝ていたのだろうか。暴走したことは覚えている。抑えようとしたのも。
喉が渇いた。お腹が減った。
夢「キッチンに行こうかな…」
そう思い、ベッドから立ち上がる。
すると、
ギィ「どこに行くつもりだ?」
地面を向いていた顔をあげると
青い宮殿の中で燃えているギィがいた。
夢「ギぃ」
ギィ「おはよう、夢。」
夢「うん、ギィ。お腹減ったの」
ギィ「少し待ってろ。持ってくるから」
夢「うん。」
外が眩しくて、布団の中に潜り込む。
あの頃は外の世界へ出るのが、自由になることが夢だった。翼が生えて叶ったと思った。でも違った。
私の望んだ自由ではなかった。私はみんなと、人間と仲良くしたかった。なのに。
私のせいで人間は死んだ。
私が殺したんだ。
あの時は仲良くしたいと思っていたはずなのに、今はそうは思わなくなってしまった。昔のことを思い出したからだろうか、それとも…殺した人間に復讐されるのが怖いのだろうか。とにかくもう外にはでたくなかった。
ギィには悪いけれど、すこしだけ。もう少しだけここにいさせて欲しい。
そう心の中で願った。
夢が暴走してから3日。3日程度なら全然おかしくない期間だ。真なる魔王への覚醒の時なんて、1ヶ月眠ったままだったのだ。それに比べれば短いものだろう。
夢の身体は覚醒前とは比べ安定している。
死へと、崩壊へと向かっていた身体が回復とまではいかずとも現状維持を続けている。無理をしなければこれ以上崩れることはないだろう。
ただ、彼女の心はそうとは言えない。
隠していた記憶を思い出し人間への憎悪、怒りが解き放たれてしまった。
彼女の怒りは収まるようなものじゃない。
ただ、その怒りをあらわにしないのが夢だ。しかたないと、我慢しようと押し込む。それで本来なら解決なのだろう。1人の…一つの命が我慢するだけで沢山の命が救われるのだから。生きていられるのだから。しかし、夢にとってはどうなのだろうか。自由を望んだ彼女にとって、人類が敵となるのは。
おそらく国を滅ぼしたことによって人類からは敵、天災扱いされるだろう。彼女はそんな向けられた敵意に対して大人の対応をできるほど、穏便に済ませるほど心に余裕があるわけじゃない。
普段抑えている怒りが敵意によって爆発してしまうかもしれない。
そうなれば、彼女は…止めなければならない対象となる。
ギィ「…少しの間外には出さねぇようにしねぇとな。」
そう心の中で決めて、夢の元へ戻った。
ガチャ
夢「ギィ…?」
ギィ「あぁ、水と軽い食事…。これで良かったか? 」
夢「うん…ありがとう。」
そう言って多少むせながらもパクパクと食べていた。
ギィ「夢、体調は?」
夢「大丈夫だよ」
嘘つけ。顔色があまり良くない。それに一部だが耐性が機能していない。
ギィ「嘘を付くな。食べたら寝てろ。」
夢「…ギィ…お願い。」
ギィ「?なんだ。」
夢「一緒にいてくれる?」
寂しい。1人でいるとどうしても考え事をしてしまう。罪悪感に飲まれる。もう自由はないのだと、生きる希望が無くなる。
誰かと一緒にいたかった。ただ、それだけだった。
ギィ「…分かった。少しだけだ」
夢「うん…ありがとう。」
私は我儘だ。何百、何万も殺したのに今はその罪悪感に飲まれている。
私は傲慢だ。一度突き放した物をまた求めている。
もう自由は手に入らない。
もう愛は手に入らない。
ならば生きていても仕方がないのではないかと。
もう終わりも手に入らない。
ならば死ぬこともできないのではないかと。
私はどこにも行けない。
私はもう逃げない。
罪を償わなきゃいけない。
こんな私でごめんね。
もう少しだけ、迷惑…かけるね。