テラーノベル
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ひぃー!!!!
会うのが、少し怖かった。
逃げたくせに。
自分から距離を取ったくせに。
それでも、顔を見ないまま終わらせるのは、もっと嫌だった。
約束した時間より、少し早く着いてしまう。
落ち着かなくて、意味もなくスマホを触った。
名前を呼ばれる。
「阿部」
顔を上げると、佐久間がいた。
いつもと変わらない、柔らかい表情。
それが、少しだけ苦しい。
「……ごめん。待った?」
「ううん。俺も今来た」
並んで歩き出す。
距離は、近くも遠くもない。
昨日と同じくらい。
でも、昨日より静かだった。
沈黙に耐えきれなくなったのは、阿部のほうだった。
「昨日さ」
声が、思ったより低く出る。
「急に帰って、ごめん」
佐久間はすぐに答えなかった。
一拍置いて、ゆっくり口を開く。
「……謝らなくていいよ」
その言い方が、あまりにも穏やかで。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
「でも」
阿部は立ち止まる。
足が、勝手に止まった。
「ちゃんと、話さないとダメだと思って」
佐久間も止まる。
視線が合う。
逃げ場がなくなった気がした。
「俺さ」
息を吸って、吐く。
「好きって言われるの、苦手なんだ」
一瞬、佐久間の目が揺れた。
驚いたのか、傷ついたのか、わからない。
「嫌いとかじゃない。
むしろ逆で」
言葉が、喉につかえる。
「ちゃんと好きでいてくれる人ほど、
怖くなる」
沈黙が落ちる。
夜の音が、やけに大きく聞こえた。
「どうして?」
佐久間の声は、低くて、静かだった。
責める音じゃない。
でも、逃げも許さない音。
阿部は視線を落とす。
「期待されるのが、怖い。
信じてくれるのが、怖い」
指先が、無意識に握られる。
「俺、そんなに強くない。
ちゃんと応えられる自信もない」
言ってしまった、と思った。
でも、止められなかった。
「だから、逃げる。
昨日みたいに」
佐久間は、すぐには何も言わなかった。
しばらく黙ったまま、空を見上げる。
「……そっか」
その一言が、思った以上に重かった。
「俺はさ」
佐久間が、ゆっくり阿部を見る。
「好きって言ったら、
少しは楽になるのかなって思ってた」
胸が、きゅっと縮む。
「でも、阿部には逆だったんだね」
責めてない。
怒ってもいない。
それが、余計に苦しい。
「ごめん」
反射的に、そう言ってしまう。
佐久間は、首を振った。
「謝らないで」
きっぱりした声だった。
「逃げるのは、阿部の選択だし。
俺は、それを無理に変えたいわけじゃない」
一歩、距離が詰まる。
でも、触れない。
「ただ」
少しだけ、声が揺れた。
「何も言わずにいなくなるのは、
正直、きつかった」
その言葉が、胸に刺さる。
「……ごめん」
今度は、ちゃんと向き合って言った。
佐久間は、少しだけ笑った。
「うん。
それなら、いい」
完璧な解決じゃない。
むしろ、何も片付いていない。
それでも。
「逃げたくなったらさ」
佐久間が言う。
「せめて、逃げるって言って」
阿部は、ゆっくり頷いた。
「……努力する」
約束、とは言えなかった。
でも、嘘もつきたくなかった。
また歩き出す。
距離は、ほんの少しだけ近づいた。
触れないまま。
でも、昨日より確かに。
好きだって言葉は、まだ怖い。
それでも。
話すことを、やめなかった。
それだけで、
今日は十分だった。
🌸 × 🍃
アイコンやめましたっ!すみませんっ
コメント
2件
しーちゃん 最高✨ やっぱ天才すぎる!