テラーノベル
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――バガアアアァアンッ!!
「うひっ」
2体目のストーンゴーレムは、ルークのよく分からない斬撃でまっぷたつにされた。
左肩から右腰に掛けて、綺麗に斬り裂かれた……そんな感じだ。
……あれ? ストーンゴーレムって岩だよね、あれ?
「えぇーっ!? ルークさん、反則的な強さじゃないですかーっ!!」
エミリアさんは嬉しそうなんだか悔しそうなんだか、そんな感じで叫んでいた。
うん、何だか気持ちは分かる気がする。
「まったくですね。きつい修行を乗り越えただけはある……っていうか?」
二人で話していると、ルークが残りのストーンゴーレムに気を払いながら戻ってきた。
「残りは1体ですね。
……さて、ここからどうしましょう」
「え? 今まで通り、一気に倒しちゃえば良いんじゃないの?
ずがーんと、ばかーんと」
「実はですね……、必殺技は1日に2回が限界なんです」
「むむ?」
「あらかじめ闘気のようなものを練っておいて、それを解放することで必殺技を放つことが出来るんです。
つまり、今日の分はもうおしまいということですね」
「そ、それは予想外……!」
便利で強力な反面、使用回数の制限があるということか。
「ルークさん……。制限がある割に、あっさりと2回使っちゃったんですね……」
「申し訳ありません、良いところをお見せしようと思いまして……」
少し恐縮して言うルーク。
以前よりもかなり強くはなっているが、そういう性格は変わっていなくて安心する。
「うん、良いところは十分に見せてもらったよ!
……それじゃ、あと1体はどうしようか」
ぶっちゃけて言うと、2体倒したから2体分の報酬をもらっておしまい……というのでも良いんだよね。
若干、消化不良の気もしなくは無いけど。
「必殺技なしでは、ダメそうですか?」
「そうですね、剣の方がダメになってしまいますので」
それはそうだ。
いくら丈夫に作った剣とはいえ、無理に岩を斬りにいけば、すぐに刃が欠けてしまうだろう。
「ふむ……。ここはわたしの出番ですね!」
「え? シルバー・ブレッドで倒す感じですか?」
「いえいえ! ここは新しい魔法をお披露目するところかな、と!」
「おぉ、いつの間に!」
「最近ずっと勉強してたんですよ。
さぁ、ルークさん。剣を出してください!」
「えーと……はい、どうぞ」
ルークは切っ先を向けないようにして、エミリアさんに剣を差し出した。
「いきますよー。
プロテクト・ブレッシング!!」
エミリアさんがそう唱えた瞬間、ルークの剣が白色に光り輝いた。
「……わぁ、綺麗」
「綺麗ですよね!
この魔法は聖なる加護によって、装備を破損から保護してくれる魔法なんです!」
「まさに今、うってつけの魔法ですね。
……って、何でそんなピンポイントな魔法を覚えたんですか……?」
「わたしたちのパーティは、ルークさん頼みの構成ですから。
また依頼を受けるときに便利かなって、覚えたんですよ。早速役に立ちましたよね!」
ふふん♪ といった感じで、どや顔をするエミリアさん。
「そうですね……! それじゃ、剣の問題は解決ということで……。
これなら、残りの1体は倒せそう?」
「はい、剣が大丈夫なら何とかなるでしょう。
……ところでアイナ様は、水の魔法を覚えられたんですよね?」
「うん、アクア・ブラストっていうやつなんだけど――」
「ふふふ♪」
私の言葉に、エミリアさんが嬉しそうに笑った。
「……どうかしました?」
「やだなー、アイナさんったら!
裏でこっそり、氷の魔法の練習もしていたでしょう?」
「え? あれ、何で知って……?」
いつかどこかで、驚かせようと思って練習していた魔法。
水と氷の二刀流!! ……それがまさか、こんなところでバラされるとは。
「氷の魔法ですか……!
ものは試しで、アイナ様も攻撃をしてみませんか?」
「えっ!?」
ルークからの突然の申し出に、私は驚いた。
戦闘は任せっきりにするつもりだったから、その発想は無かったというか――
「ついに、アイナさんも魔法使いデビューですね!」
「えぇー……。魔法を撃ったら、こっちに襲ってこないかなぁ……」
「私がお護りするので大丈夫です。
それにストーンゴーレムの身体を凍らせることができれば、そこが脆くなるかと思ったんですが……」
「うぅーん……。でも、あくまでもぶつけるだけだから、凍りはしないと思うよ?」
氷の塊を撃ちはするけど、どちらかといえば物理っぽい攻撃なんだよね。
火の中に撃ち込んだりするなら、また違うんだろうけど……。
「でも、折角ですし! やってみましょう!」
「ふぇぇー……?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
外したら格好悪い……、外したら格好悪い……。
当たりますように、当たりますように――
「――アイス・ブラストっ!!」
ドォン……ッ!!
「おぉ、アイナ様が魔法を……!」
私がストーンゴーレムを攻撃すると、ルークの感動の声が聞こえてきた。
恥ずかしいからあまり言わないで欲しいけど、とりあえず初弾は当たって良かった!
ルークの修練でボールを投げたときとは違って、魔法ならそれなりに当てることは出来るんだよね。
細かいコントロールはまだ難しいんだけど。
「それではアイナさん! 同じところを狙っていきましょう!!」
……細かいコントロールはまだ難しいんだけど!!
「アイス・ブラストぉっ!!」
ドォン……ッ!!
「惜しい! もう少し上ですっ!!」
「アイス・ブラストおぉっ!!」
ドォン……ッ!!
「もう少し右ですっ!!」
「うわああああっ! アイス・ブラストおぉおぉっ!!」
ドォン……ッ!!
「もう少し左――」
魔力が無くなるまで氷の塊を撃ち込み終わると、何回か当たった場所を、ルークが執拗に攻撃し始めた。
エミリアさんも、シルバー・ブレッドでその場所を狙っていく。
……さすが熟練者、魔法のコントロールは私なんかよりもずっと上だ。
思い返せば、エミリアさんが魔法を外しているのなんて、1回も見たことがない。
そのまま5分ほど攻撃を続けると……ストーンゴーレムの腕が崩れ落ち、10分ほど攻撃を続けると……その動きが鈍ってきた。
そして15分ほど攻撃を続けると、ようやく完全に動きを止めることができた。
「――お疲れ様!
結構、時間が掛かっちゃったかも?」
「そうですね、さすがに防御力が売りの魔物でした」
「やっぱり、剣とは相性が悪い敵でしたね。鈍器やハンマーの方が効果的でしょうか。
……とすると、次に覚える魔法は――」
エミリアさんは今の戦いを振り返って、早速次に覚える魔法を思案していた。
勉強熱心で何より。その姿勢は私も見習わないと。
「さて、倒し終わったから戻りますか。
討伐の証拠品は……この石かな?」
ストーンゴーレム1体につき、身体のどこかに埋まっているという不思議な石。
この石に力が宿って、ストーンゴーレムの身体を形作っていくらしい。何ともファンタジーな逸品である。
「他の2体の核石はこちらです。
アイナ様、持って頂いてもよろしいでしょうか」
「うん、ちょうだいー」
ルークから核石を受け取って、アイテムボックスに順次しまっていく。
3体倒したから、核石は合計3個……っと。
「討伐も終わりましたし、今晩はテレーゼさんと約束があるということなので、早々に戻ることにしましょう」
「そうだね。それじゃ戻りましょ――……の前に、さすがに昼食はとっていこうか。
ぱぱっと食べて、そのあと戻りましょ」
「はい」
「はーい」
ストーンゴーレムを無事に討伐することが出来た私たちは、ブルーノさんと合流して昼食をとることにした。
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