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今日の私の出来上がりだ。おじさんが好きそうな格好。完璧。
「…よし、大丈夫。」
しばらくすると、目的地の駅についた。
コツン、コツンと爽快な音をさせながら進んでいく。
途中で、すれ違う人がこっちを見ているのが分かったが、もう慣れた。
だけど、お金をくれない男に振り撒く愛想は持ち合わせていない。
素知らぬ顔で、歩く。
やがて、賑やかな街並みから、妖しい雰囲気の景色に変わってくる。
腕を組んで歩き、やがて建物の中に消えていくカップル達。
そんな中、辺りをきょろきょろしながら立っている小太りで中年の男性が見えた。
間違いない。私が今日約束した相手だ。
私は、その姿を見るなり、口元を緩め、にっこりと笑顔を作った。
「雅彦さぁん♪会いたかった!!」
太い腕に、絡み付く。ねっとりと、甘ったるい声で。
そして、上目使いで男を見上げ、にこっと笑いかける。
これだけで男はいちころだ。鼻の下を伸ばし、顔を緩めて答える。
「ぼ、僕の方がもっと会いたかったよ。仕事に集中できないくらいさ。」
「ほんと?えへへ、嬉しいなぁ。ね、早く行こ?美里、もう我慢できないの…」
「そうだね。いいホテルを予約したんだ。美里ちゃんも気に入るよ。」
「わーい!楽しみだな…」
(どれだけいいホテルでも、やることは一緒でしょ?意味ないよ。)
彼に身体を擦り寄せ、歩き出す。内心、間抜けなこの表情を馬鹿にしながら。
その時――
「藤…塚…さん…?」