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すみません。なんか所々カットしていておかしいかもしれませんが、大目に見てください。あと、鼓一朗のあだ名:こいち
晴人 鼓一朗
あらすじ
晴人と鼓一朗は、大学のゲーム制作サークルの同期。
晴人はプログラム担当、鼓一朗はデザイン・UI担当で、いつもペアを組んでいる。
周りからは「気の合う名コンビ」なんて言われてるけど、ふたりにとってはそんな簡単なもんじゃない。
鼓一朗は、仕事も作業もスマートで器用。
一方、晴人は、優しくて空気は読めるけど、気持ちを口にするのはちょっと苦手で、たまに大事なところで引いてしまう。
そんなふたりが、夏の学園祭向けに「レトロ風2Dアクションゲーム」を作ることに。
息の合った作業の裏で、すれ違いそうになったり、ぶつかりそうになったり、
それでも“ゲームを完成させたい”という共通の目標だけは、誰より強く持っていて——。
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◆徹夜作業の夜、ふたりだけの教室
「……なあ、晴人。お前さ、ちゃんと寝てんの?」
「え? まあ……ぼちぼち」
「ウソ。目、赤いし。声もちょっと枯れてる。無理すんなよ。お前が倒れたら、俺ひとりじゃ完成まで持ってけないから」
「……お前の言う“完成”って、クオリティ爆盛りじゃん。無理してでも追いつきたいって思わせてんの、こいちの方だぞ」
「……バカだな」
「うっせ。……でも、ありがとな」
(静かになった教室。パソコンのファンの音と、2人のキーボードの打鍵だけが響く)
◆文化祭・当日の夜 教室の片付け後
ゲーム展示は大盛況だった。
大きなバグも出ず、来場者の反応も上々。
他のメンバーが荷物を片づけて帰っていくなか、最後まで残って掃除をしていたのは、やっぱりこのふたりだった。
「……やっと終わったな」
「うん。……マジで、おつかれ。こいち」
晴人は、紙コップの水を飲み干して、小さく笑った。
どこか、寂しそうな笑いだった。
「なんだよその顔。終わって嬉しくねぇのか?」
「いや、嬉しいけどさ。……楽しかったなって。毎日、作ってる時」
「……ああ。わかる」
鼓一朗は、掃除用の雑巾を手すりに投げてから、パイプ椅子にどかっと座る。
「……来年もさ、組もうぜ。俺、他のやつと組むの、なんかダルい」
「……お、おう。俺でいいなら」
「いいに決まってんだろ。お前、俺の指示通りに動ける貴重な人材だし」
「うっわ、言い方ひでぇな」
「でもさ」
鼓一朗が、ふと口を止めた。
小さく息をついて、何か言いかけて、やっぱり笑って誤魔化す。
「……ま、そういうの全部含めて、お前がいちばんやりやすいって思ってるだけ」
その言葉に、晴人の手が止まる。
鼓一朗は気づいていないふりをしたまま、視線を窓の外に逸らした。
「ありがと。……そう言ってもらえるの、たぶん、すげー嬉しい」
「へぇ。嬉しがりかよ」
「うっせ。お前だってちょっと照れてんだろ」
「うるさい。帰るぞ」
そう言って先に立ち上がった鼓一朗の背中を、晴人は少しだけ見つめてから、後を追った。
歩幅を合わせるようにして、ふたり並んで夜の廊下を歩いていく。
言葉にはしない。
でも、胸の奥で、ほんの少しだけ何かが動いた。
たぶんこれは、ゲームじゃなくて。
──現実の話だ。