テラーノベル
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リハーサル中、翔太はいつもどおり軽口を叩きながら振りを合わせていた。周りは笑って、空気は軽い。
けど——その真ん中で、涼太だけがどこか“薄い”。
動きも、目の光も、声のトーンも。
「舘さん、なんか元気なくね?」
照明が少し落ちた瞬間、翔太が小声で聞いた。
「気のせいだよ。昨日ちょっと寝不足で、笑」
涼太はすぐ笑う。ほんの一瞬、息が詰まったような顔をしたのに。
翔太はその一瞬を見逃さなかった。
(……今の、なんだ?)
でもリハは進む。
振付師の声が飛び、音が流れ、ステージの床が震える。
翔太も動かざるを得ない。
その中で——また異変。
ターンのたびに、涼太の着地が少しだけ遅れる。
ダンスの波に乗り切れていない。
「舘さん?」
翔太が目で問いかけると、
「大丈夫だ」
涼太は笑う。
笑うけど、顔が白い。ほんの少しだけ、汗の出方も違う。
(絶対なんかあるだろ…)
そう思った瞬間、曲が止まり休憩に入った。
みんなが水を取りに散っていく中、翔太は迷わず涼太の横に行った。
「舘さん、さっきから変だよ。絶対なんか隠してるよな?」
心配というより、責めるような声になってしまう。
それだけ“気づかないフリ”を続けてきた自分に苛立っていた。
涼太は一瞬だけ目をそらした。
その沈黙が、答えみたいだった。
「……ほんのちょっと、息がしづらいだけだ」
「それ、ほんのちょっとの言い方じゃねぇよ」
翔太の言葉に、涼太の指がピクリと震えた 。
本当は言いたくなかった――言ったら距離が変わる気がして。
だって翔太は優しいから。
優しすぎるから、その優しさに甘えるのが怖い。
「平気だ。騒ぐほどじゃない」
「騒ぐよ。俺は」
翔太の声は低かった。
涼太の胸がきゅっと痛む。
身体が痛いのか、心が痛いのか分からない。
だけど、その痛みの理由——
翔太はまだ、本当の形では知らない。
コメント
4件
舘様〜泣
舘様..大丈夫..?? なべは流石ですね...幼馴染の異変にすぐに気づくなんて
続きが楽しみです! 舘様大丈夫かな…😔