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グリルタ
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地図の通りに歩いてしばらくすると、やや開けた敷地が目に入った。妙に横に長い低層の建物があり、周りに植物園らしき場所、カフェなどあり、その建物の前はやけに広々とした空間がある。
「遊園地かな?」
晶子がキョロキョロしていると、聞き覚えのある声が名前を呼んだ。
「おーい、晶子! ここだ!」
横長の建物の前からカンナが手を大きく振って晶子を呼んでいた。晶子は小走りでカンナの側へ行った。
「あ、カンナ、よかった、会えた。ここにカンナが飼ってるお馬さんがいるの? それで、ここ何? 遊園地? 動物園?」
カンナは建物の外壁の一か所を指差して答える。
「あそこに書いてあるじゃん」
その文字を見た晶子は思わず悲鳴のような上ずった声を上げた。
「と、東京競馬場!」
晶子はカンナの左腕をギュッとつかんで、おろおろした口調で言う。
「だ、だめだよ、中学生がこんな所にいたら、お巡りさんに補導されちゃうよ!」
「されねえよ。ちょっと一緒に来てみな」
Tシャツのデニムのショートパンツというラフな格好のカンナは、晶子の手を引いて、入り口らしき場所へ引っ張って行く。そして駅の切符の券売機のような機械の前まで行き、晶子に表示されている文字を指差して見せた。
そこには「入場料200円(15歳未満無料)」と書いてある。カンナは笑って晶子に言う。
「中学生が来ちゃいけない場所なら、こんな事書いてないはずだろ?」
晶子はその表示をまじまじと見つめた。
「ほんとだ。知らなかった」
「あたいら未成年がやっちゃいけないのは、勝ち馬投票券を買う事なんだよ」
「え? カチウマ……」
「いわゆる馬券だよ。馬券買わないでレースを見物するだけなら子どもも入っていいんだぜ。入っていいだけじゃなくて、あたいたちはタダ!」
「ああ、それで学校の生徒手帳持って来いっていったわけ?」
「そういう事。ああ、それと、未成年が中に入るには保護者同伴でなけりゃいけないってのはあるけどな。ま、保護者はもうじき来るから」
「カンナのお父さんかお母さん?」
「親でなくても、大人が一緒ならいいんだよ。おっと、噂をすれば、だ。おおい! おっちゃん、ここ、ここ!」
カンナがこちらへ歩いてくる男の人に声をかけた。その男性も手を振ってカンナに合図する。
側まで来ると、やけに日焼けしたしわくちゃの顔の高齢の男性だった。ややだぶだぶ気味のTシャツ、よれよれのジーンズ、素足にサンダル、野球チームのロゴが入ったキャップ帽といういで立ち。
「やあ、カンナちゃん、待たせちまったかな?」
「いや、ちょうどだよ。あ、この子が話してた友達な。入場料はあたいが出すから、あたいたち二人の保護者頼むぜ」
おっちゃんと呼ばれた男性は晶子を見ると目を細めて言った。
「やあ、君がカンナちゃんの親友かい? 聞いてた通り、可愛い嬢ちゃんだな」
呆気に取られていた晶子はあわてて男性に頭を下げてあいさつした。
「こ、こんにちわ。今日はよろしくお願いします」
券売機で入場券を1枚買って来たカンナが、それを男性に渡しながら言う。
「あれ、おっちゃん、今日はずいぶんさっぱりした格好してんな」
「カンナちゃんの友達が一緒だってからな、小ぎれいな身なりしとかねえと、と思ってな。1年ぶりで床屋にも行って来たぜ」
床屋へ1年ぶり、という部分で晶子が目をぱちくりさせた。カンナに訊いてみる。
「ええと、この方はカンナの親戚のおじさんか何か?」
カンナは事も無げに答えた。
「いや、赤の他人。普段は新宿でホームレスやってる人」
コメント
1件
**はる。だわ。** 第16話、読んだわ! 晶子の「中学生がこんな所にいたら補導されちゃう!」って焦り方が可愛すぎるし、カンナの「馬券買わなければタダで入れる」って知識が渋い。そして保護者が「1年ぶりに床屋行ったホームレスのおっちゃん」って、晶子が呆気に取られるのも納得の展開(笑)。 日常の延長にあるちょっと非日常な空気感、好きだな。次、どんな種明かしがあるのか楽しみにしてるわ🔥