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「……う、くっ……。ここは、本当に魔界なのか……」
じっとりと肌を刺すような冷たい空気に、潔は小さく身震いをした。
背中にある大きな翼は、禍々しいほどに漆黒に染まっている。
天界の規律を破り、魔界へと追放された堕天使
それが、今の潔の立場だった。(みんな、無事だったらいいな……。
潔の翼が黒いのは、決して悪に染まったからではない。
天界を襲った強大な魔界の呪いから仲間たちを守るため、
潔がたった一人でその身を盾にし、すべての汚れを引き受けたからだった。
しかし、天界の上層部たちは冷酷だった。
天界を救った英雄であるはずの潔を、
「翼が黒く穢れた者は、我が天界に相応しくない」と、手のひらを返して
魔界へ追放したのだ。行く当てもなく彷徨い、体も心も限界を迎えていた
潔は、薄暗い路地裏の地面にぽつんと座り込んだ。
その時、路地裏の奥から、荒々しい笑い声と小さな悲鳴が聞こえてきた。
「ケケッ!このバケモノめ、色気のない不気味な目でこっちを見るな!」
「おい、もっと痛めつけろ!魔界のゴミが!」
「うぅ……痛いよぉ……。だれか、たすけて……」潔はハッと目を見開いた
。
見れば、数匹の下級悪魔たちが、自分よりも小さな一人の悪魔を取り囲み、
寄ってたかって暴力を振るっている。殴られている少年は、黄色い髪を揺らし
涙を流して地面にうずくまっていた。天界にどれだけ裏切られても、
潔の胸にある「誰かを救いたい」という純粋な優しさは消えていなかった。
潔は強い覚悟の目を宿し、ふらつく足で立ち上がると、少年を庇うようにして前に
躍り出た。「そこまでだ!その子から離れろ!」
「あぁ!?なんだテメェ……って、背中の羽、堕天使か!?」
下級悪魔たちがギョッとして怯む。潔は体に残された天界の力を両手に込め、
眩い光の障壁を展開した。
魔界の住人にとって、純粋な光は天敵だ。
「うわっ、眩しっ!?チッ、なんだアイツ、覚えてやがれ!」
光に焼かれるのを恐れた悪魔たちは、捨て台詞を残して蜘蛛の子を散らすように
逃げていった。路地裏に静寂が戻る。潔は光を消し、
はぁはぁと荒い息を吐きながら、背後の少年に振り返った。
「はぁ、はぁ……。もう大丈夫だよ。怪我、見せてごらん?」
「あ……」座り込んだまま潔を見上げる少年は、
ぽろぽろと涙を流したまま、大きな瞳を輝かせた。
「きれい……。黒い羽なのに、お日様みたいに温かい……」普通なら、
堕天使は魔界でも気味悪がられる存在だ。
しかし蜂楽は怯えるどころか、じっと潔を見つめ、
その瞳には純粋な憧れの色が浮かんでいる。
「おれをバケモノって言わないで、助けてくれた……。ねぇ、お名前は?」
「俺は潔。潔世一だよ」「いさぎ……!おれ、蜂楽廻!ねぇ、いさぎ、」
「傷だらけで動けないでしょ,おれの秘密の隠れ家にいこう.みんなもいるから」
断る間もなく、蜂楽にぎゅっと手を握られる。
その温もりに導かれるようにして、
潔は魔界の奥深くにある古びた洋館へと連れてこられた。
「みんな、ただいまー!すっごい人を連れてきちゃった!」
蜂楽が勢いよく扉を開けると、館の奥から二人の悪魔が姿を現した。
一人は艶やかな赤髪の悪魔、もう一人は体格の良い誠実そうな悪魔だ。
「おい蜂楽、うるさい。……って、そいつ誰だ?魔界の奴じゃないな」
「待て、背中に黒い翼がある……まさか、天界から落とされた堕天使か!?」
二人の鋭い視線に、潔は思わず一歩引いて身を構えた。
「俺は潔世一。お前たち、悪魔か……?」
「さっき下級悪魔に虐められてたおれを助けてくれたんだ!」
蜂楽が必死に庇うように叫ぶ。赤髪の悪魔は、驚いたように綺麗な眉をひそめた。
「は? 堕天使のくせに、俺たち悪魔を助けたって言うのか……?」
「……傷だらけじゃないか」体格の良い悪魔が、潔のボロボロの体を見て
痛ましそうに目を細めた.「天界の綺麗事を壊されて、ひどい目に遭ったんだな。」
「おい千切、手当ての道具を持ってこい」
「チッ、人使いが荒いな。……でも、確かに放っておけない顔をしてる」
千切は文句を言いながらも、潔の綺麗な瞳をじっと見つめ、
どこか惹かれたような表情で行ってしまった。潔は呆然と立ち尽くす。
「俺を、攻撃しないのか, 悪魔はみんな、冷酷だって天界で教えられてきたのに」
「俺たちも魔界の異端児だからな」國神が優しく微笑んだ。
「国を追われたり、バケモノ扱いされた奴らの集まりだ。」
「裏切るような真似はしねぇよ」
「そう、だったんだ……。みんなも、辛い思いを……」
自分と同じように、傷を抱えて生きている悪魔たち。
彼らの優しさに触れ、潔の凍りついていた心がじんわりと解けていく。
「ねぇ、いさぎ」蜂楽が潔の服の裾をぎゅっと掴み、上目遣いで微笑んだ。
「行く場所がないなら、ずっとここにいてよ。」
おれ、いさぎが大好きになっちゃった!」「おい、蜂楽だけずるいぞ。」
「…潔、お前が良ければ、俺もお前を歓迎してやる」
戻ってきた千切が救急箱を抱え、少し照れくさそうにそっぽを向く。
「あぁ。これからは俺たちが、お前の新しい居場所になってやるよ」
國神も力強く頷いた。
孤独堕天使は、魔界の片隅で、彼らを全肯定してくれる温かい悪魔たちと出会った.
「……ありがとう、みんな……!」潔の目から、一筋の綺麗な雫がこぼれ落ちた。
それが、この魔界を揺るがす「堕天使様」の物語の、始まり.
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