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歌大好き!
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#異世界
あのち
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16
「 ヒビ割れた勝ち方 」
────────────────────────
「……」
もう朝か。
昨日は考えすぎてよく眠れなかった。
「………」
外行って来るか…
俺はスマホとイヤホンを持ち、外へ出かけた
「……」
やっぱり朝は心地が良い。
落ち着くな…
モブ 「…なあお前、この前のだよな?」
「…!」
こいつ…松本の時にいたやつ…!
「それが何だよ」
モブ2 「最近お前、生徒会に囲まれてるんだよな?」
「は?」
モブ 「調子…乗るなよ。」
「……うっせえ」
モブ 「……やってみろよ」
モブがニヤつきながら挑発する
「……」
一歩出す
…いつも通りだ。
ボコッ ( 嶺二がモブを殴る
モブ 「……っ」
シュッ( 嶺二がモブ2を蹴る
モブ2 「クソが…!」
「……」
ちゃんと体動いてる。
…いつも通り、勝てる。
───そのはずだった。
一瞬、音が消えた
【 お前のせいだ。 】
「……っ…」
手が止まる
モブ 「は?」
その隙に殴られる
「……っ…」
なんなんだ… 今のは…
もう一度動く。だが、さっきより遅い
シュッ( モブが嶺二のことを蹴る
「……っ…ぐっ…」
…やっぱり違う。
いつもと…違う。
でも止められない
「………クソが…!」
無理やり踏み込む
モブ共の肘 膝。
短く、重く、的確に。
モブ 「クソが…!!」
モブ2 「…こいつ…覚えておけ…!」
俺は何故か静かに崩れ落ちてしまった
「………はあっ……」
勝った、…勝ったはずなのに。
思った通りに動かなかった。
拳が全然軽くなかった。
俺の拳を見ると
「………」
少しだけ震えていた
【 何も出来ないなら…… 】
「………うる…せえ…!!!!」
俺は思いっきり自分の頬を殴った
「………」
……
感じない俺が、少し怖かった。
────────────────────────
朝
俺はまた、いつも通り校門に入る
松本 「おはようございます!……!?」
「……おう」
こいつは俺の姿を見て何故か驚いていた
松本 「…手にも…頬にも、怪我が…! 絆創膏、無いんですか?」
「そんなもん、俺の家にはねえよ」
松本 「何でですか…?」
「…………あるのが、普通…なのか?」
松本 「…………葛西先輩の所、寄りましょう」
「……何でだ」
松本 「嶺二さんが怪我してるからですよ!!」
「……ほっとけば治るだろ」
松本 「…深くないけど…痛いですよ…?」
「………うるせえ、いいんだ」
松本 「良くない!! 行きますよ」
「ちょ、おい」
俺はこいつに無理やり連れて行かれた
────────────────────
葛西 「いらっしゃい……って、どうしたの」
「………」
保健室に行くといつも通り葛西がいた
…それに、委員長の余村も
松本 「嶺二さんが頬と手の甲、手のひらに怪我していて…」
葛西 「………分かった、治療するからここおいで」
「……治療なんて要らねえって言ってんだよ。」
余村 「……」
空気が悪くなってるのが分かる
余村 「葛西くん、ごめんちょっと…」
葛西 「了解」
葛西が座ってたところを委員長が座り、委員長が俺の前に来る
余村 「嶺二くん」
「なんだよ」
余村 「それ、本気で言ってるの?」
「は?」
余村 「”怪我なんてどうでもいい”って」
…そんなん、人間誰しも思うんじゃねえのか?
「……別に、普通だろ」
余村 「普通じゃないよ。」
余村 「……少なくとも、この学校ではね」
松本 「……」
葛西 「……」
委員長は治療道具を取りながら、少しだけ目を細める
余村 「嶺二くんってさ、痛みを軽く見すぎる癖があるよね」
「……うるせえ」
余村 「…でもそれって、”慣れすぎてる人の反応”なんだよ」
空気が止まってるのが分かる
「……」
余村 「嶺二くんの気持ちは、みんな分からない。
松本くんだって、葛西くんだって。
…だけどね、」
余村 「……みんな、嶺二くんの気持ちが知りたい。」
「……」
余村 「知りたいって言うのはね、”分かってあげたい”って言うことじゃない。」
「は?」
余村 「”1人にしない為に知りたい”っていう事なの」
松本 「……」
葛西 「……」
「………うるせえ」
俺でも分かるくらい、声が弱かった
余村 「…うん。今すぐこれ以上話さなくていいよ」
余村 「……ただね、
“どうでもいい”って言い続けるのだけはやめて欲しい。」
「……」
俺は、意味が分からなかった
“どうでもいい”と言い続けるのをやめろ?
…どうやめればいいのか分からない。
俺は一体、どうすればいいんだよ…
余村 「治療、終わったよ」
松本 「……ありがとうございました! 嶺二くん、行こう」
「………」
頭の中がうるさい。
……こういうこと、一度も無かったんだけどな
────────────────────
保健室の後、僕は何故か嶺二くんの事を考えていた
「………」
葛西 「……余村…くん。」
「…どうしたの?」
葛西くんが僕の事を呼んだ
…珍しい。
葛西 「僕が…思ってるだけかもしれないんだけど、
嶺二くん…もうかなり危ないかもしれない。」
「……それは何でそう思ったの?」
葛西 「……僕が手を見た時、嶺二くん手が震えていたんだ。」
「……!」
僕は一瞬だけど言葉を止めた
「それ、いつから?」
葛西 「今日、初めて見たよ。」
「……そっか」
それだけで十分だった
…でも、十分すぎるくらい、嫌な確信だった。
……気づいてしまったんだ。
あの子は、
もう “ 喧嘩が強いだけの子 ” じゃない。
「……葛西くん」
葛西 「…はい」
「ちょっとでいいから、嶺二くんのこと見ててあげて」
葛西 「……余村くんにそう言われなくても僕は見るつもりだよ。
……余村くんも、…無理しないで」
「………ありがとう、あと葛西くん」
葛西 「……ん?」
「多分…僕たちが思ってるよりずっと早いかもしれない。」
葛西 「………分かった。」
嶺二くん…もう、無理しないで。
────────────────────────
「……」
俺は、松本と教室に戻った
松本 「……嶺二さん!」
「…ん」
松本 「昼ご飯なに食います? …俺、買ってきますよ」
「焼きそばパン」
松本 「焼きそばパン好きなんすか! いいっすね〜!」
松本が積極的に話しかけてくれて、俺は答えるだけ
これがとても楽でいい。
松本 「席近いの本当に助かりましたよ〜」
「……だな」
そう言いながら俺達は席に座る
? 「怪我…大丈夫っすか?」
「……」
こいつ…昨日の…
松本 「佐原くん! こんにちは!」
佐原 「保健室にいる葛西先輩、物凄く的確に治療してくれるんすよね〜。安心できますよね!」
「……あん…しん……」
……確かに、安心は出来る…と思う。
「…よく分からねえけど、出来るとは思う」
佐原 「ですよね!? いい人が委員長で良かったっす 」
モブ 「……なんだあれ…! 身体がでかい人が校門に入ってくる…!!」
松本 「……!」
「……?」
なんだこいつ。
そう言った途端、何か準備し始めたぞ
松本 「すいません… 俺、少し行ってきます!」
佐原 「…大丈夫?」
モブ 「松本、行くのか??」
松本 「はい! でも大丈夫なんで!!」
「………」
…こいつ、嘘ついてるな。
松本 「では…!!」
松本が走る
最近保健室によく言ってるのはこの理由か?
俺は気になり、後を追ってみた
「……」
佐原 「嶺二くんも!! どこ行くんすか!!」
────────────────────────
いつも通り、俺の兄貴が来た
いつもは裏から来るのに、なんで今日は校門からなんだよ…!
「……何、しに来たの…」
松本兄 「なんでわざわざここを選んだんだよ。」
「…うるさい、兄貴には関係ないだろ!!」
いつも俺を否定して…
うるさいんだよ…!!
松本兄 「お前なんてヒョロヒョロで喧嘩なんて上手くいかないことばっかだったのに?
笑わせんなよ。」
「………」
松本兄 「こんなところはやめとけ。」
「……こんなところって言うなよ…!!」
ボコッ……(松本が松本兄を殴る
松本兄 「……」
「なんでお前は俺を否定することばっかり…
もうそれには飽きたんだよ…!」
松本兄 「……うっせえ…!!!!!」
ボコッ… (松本兄が松本を殴る
「……っっ…」
松本兄 「また立ち上がれないのか? …お前さ、まじで笑わせにきてんのか?
昔からそうだよな、”誰かに助けられてばっか”で。」
「……っ」
松本兄 「で、今度は不良校? また”強そうなやつ”のマネか?
……それの何が面白いんだよ」
俺は一歩頑張って振り絞って殴る
「……うるせえ…うるさい…!!」
ボコッ…(松本が松本兄を殴る
松本兄 「調子…乗んな。」
ボコッ……(松本兄が松本を殴る
「……っぐ…」
松本兄 「…ほらな、結局お前はその程度だ。」
「……っくそ…」
殴り返そうとする
だけど、腕が重い。
うるさい…うるさい…!!
俺がしたいことをしただけなのに…!
────その時だった
嶺二 「…うるせえのは……お前だろ…!!」
空気が止まる
松本兄 「…あ?」
俺の兄貴が振り向く
「……嶺二…さん!?」
そこには、嶺二さんがいた
嶺二 「何弟にムキになってんだよ」
松本兄 「…関係ねえだろ」
嶺二 「………あるだろ、俺達の…生徒なんだから」
松本兄 「……生徒…?」
嶺二さんは俺の顔をじっくり見る
嶺二 「……」
松本兄 「なんだよ…どうせ、ガキがひとり増えただけだろ」
嶺二 「…いや、めんどくせえ大人が増えただけだ。」
松本兄 「調子乗ってんのかてめえ…!」
一歩近づく
嶺二さんは動かない。
「……っ…!」
本当に…情けない…!!
嶺二 「…松本」
「……」
嶺二 「下がってろ」
その一言、俺は少し迷ったけど少し後ろに下がった
その瞬間… 嶺二が前に出る
松本兄 「…!」
一発が重くて速い。
無駄がない
松本兄 「……っぐ…」
空気が変わる
嶺二 「次、早くしろ」
松本兄 「………」
俺は見ることしか出来ない。
松本兄 「…お前は……こいつの友達…か?」
「………」
────────────────────
「……」
友達…
……友達って、何だ…?
「…多分……違う。」
松本兄 「多分って、何なんだよ」
「……分かんねえ」
松本兄 「……」
松本兄 「…あいつ、昔からああなんだ。
すぐ無茶して すぐ突っ込んで すぐ物事を決める。」
松本 「……」
松本兄 「否定したい訳じゃねえ。
ただ、ここにいて欲しくないだけなんだ。」
「……」
…こういう時、俺はなんて声をかけてあげればいいんだろう。
俺は無意識に言葉を探していた。
… 「それなら、」
余村 「ここにいて欲しくないって思ってるのなら、ちゃんと言葉にした方がいいと思うよ。」
松本 「…! 委員長…!!」
「……!」
松本兄 「……!」
余村 「…じゃないと、ただの否定にしか聞こえない。」
松本兄 「……でも、」
余村 「でも は今いらない。お兄さんの言ってる事は分かる。
でもそれは、守り方 の話だと思う」
空気が止まる
… 「……ま、まあ心配してんのは分かるけどさ」
風間 「ちょっとだけやり方まずいかもな。」
葛西 「怪我、治療しないとまずいね」
「……」
話が長い。
松本の兄はきっと、松本を心配してるだけ…だと思う。
「…話が長え。 」
一歩だけ前に出る
「……もう、終わりでいいだろ
………そいつは…そう簡単に壊れねえよ。」
余村 「……」
葛西 「…」
松本兄 「…らお」
松本 「……なに」
松本兄 「…………ごめんな、痛かったな」
「……」
松本 「…兄貴…?」
松本兄 「……ごめん。」
「……」
松本 「……っ…なんで、…なんで…今なんだよ…」
「……!」
余村 「……嶺二くん…!」
余村 「……………逃げた…ね。」
俺は、松本が泣いた時にその場から離れてしまった
自分でも理由は分からない。
……
だけど、
その方がいいって、なぜか思ってしまった。
コメント
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読み終わりました……「ヒビ割れた勝ち方」、第8話。 嶺二の「勝ったはずなのに」っていう感覚、すごく胸に刺さりました。自分でも説明できない不調や、拳の震え、そして無意識に自分の頬を叩くシーンが重すぎて…。余村さんの「"どうでもいい"って言い続けるのだけはやめてほしい」っていう言葉、あれはちゃんと嶺二の痛みに気づいてる人だからこそ言えるんだなって思いました。 松本とお兄さんの関係も、乱暴さの中に確かに「心配」があって…でもそれが届かないもどかしさが切ないです。嶺二が最後そっと離れる選択をしたのも、彼なりの優さなのかな…と思わせる終わり方でした。 続き、すごく気になります。