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バタン、と重く湿った音を立てて引き戸が閉まり、内側から鍵が掛けられた、あの絶望的な「カチャリ」という音。
その瞬間、世界からすべての音が消失した。
聞こえるのは、肋骨を内側から叩きつけるように激しく脈打つ私の心臓の音と、すぐ目の前で獲物の喉元を狙う捕食者のように繰り返される、角名先輩の低く、熱い、そして飢えた呼吸音だけ。
「……っ、角名、さん……暗い、です……っ、何も、見えない……電気、点けさせて……っ」
「……電気? いらないでしょ。……そんなに明るいところで、俺に何をされるか、隅々まで確認したいわけ? それとも、誰かにここを開けられて、君のこんなに乱れた姿、見せびらかしたいの?」
暗闇に目が慣れてくるよりも先に、彼の巨大で熱い掌が私の細い両手首をひっ掴み、頭上の冷たく硬い壁へと、骨が軋むほどの力任せに押し付けた。
逃げ場を完全に断たれた「壁ドン」。
古びた畳の埃っぽい匂いと、彼の体から立ち上る、暴力的なまでに熱い、雄としての野生的な香りが、狭く密閉された室内に充満し、私の脆弱な思考をドロドロの沼のように溶かしていく。
「……ねぇ、紬。さっき廊下で俺が言ったこと、ちゃんと聞いてた? ……北さんとあんなに楽しそうに笑い合ってた、その落とし前。……どうやって、俺のこの煮えくり返るような独占欲、鎮めてくれるのって聞いてるんだけど。……黙ってたら分かんないよ?」
耳元で、地鳴りのように低く響く、逃走を許さない冷徹な囁き。
彼は私の手首をさらに、指の跡が深く刻まれるほど強く締め上げると、空いた方の手の長い指先で私の顎を強引に、関節が鳴るほどの力で無理やり上向かせた。
「……あ、……北さんとは、本当に、明日のスケジュールの話を……っ。角名さん、痛い、です……っ、離して……っ」
「痛い? ……俺の胸の方が、君が俺以外の男に名前を呼ばれて、無防備に頬を緩めるたびに、吐き気がするほどもっと痛いんだけど。……ねぇ、分かんない? 俺がどれだけ、君をこの部屋に閉じ込めて、一生俺だけの所有物(おもちゃ)にしておきたくて、頭がおかしくなりそうか。……君のせいだよ、全部」
角名さんの瞳が、わずかな隙間から漏れる光さえ吸い込み、暗闇の中で獲物を仕留める直前の獣のように怪しく、鈍い光を放った。
彼は私の首筋、昨日から幾度となく、誰にも見えない位置に「マーキング」を繰り返してきたその場所に、今度は吸い付くのではなく、鋭い牙を剥き出しにして噛み付くようにして、深く、一生消えないほどの鮮明でどす黒い「独占の証」を焼き付けるように刻み付けた。
「……っん、……あ、……やだ、……っ、あな、あけちゃう……っ、いたい……っ!」
「いいよ、穴が開いても。……血が出るくらい深く、俺の所有印(しるし)を刻み込んどけば、明日からの練習、誰一人として君に触れようなんて、マヌケな考え起こさないでしょ。……誰も、君に近寄らせない」
彼は私の首筋の、一番脈動が激しく、熱い場所に顔を埋めたまま、喉の奥でクスクスと、残酷なほど甘く、そして歪んだ愉悦を滲ませて笑った。
彼の熱い、沸騰したような舌が、噛み跡をなぞるようにじりじりと這い回り、私の全身に抗えない痺れと、逃げ場のない服従を伝播させていく。
「……紬。君さぁ、口では嫌がってるくせに、身体は正直に、俺に触られてこんなに熱くなってんの……すっげー可愛いよ。……ゾクゾクする」
角名さんの、節くれだった大きな手が、私の制服の裾から、汗ばんで熱を帯びた生肌へと直接、躊躇なく滑り込んでくる。
大きな、骨ばった掌が私の脇腹を、背中を、そして激しく波打つ心臓の真上を、自分の所有物であることを最終確認するように執拗に、ねっとりと、そして暴力的に愛撫していく。
「……いい? 明日からの合宿、一瞬たりとも俺から目を離さないで。……他の奴に一瞥でもくれたら、その場で、全員の前でこれよりもっと酷いことして、君を再起不能にしてあげるから。……分かったね、紬?」
暗闇の中、彼という名の巨大な暴力に完全に組み敷かれた私は、もはや「はい」と、震える声で頷くことしかできなかった。
攻略不可だったはずの、あの美しかった境界線。
そこはもう、角名倫太郎という名の、二度と出口の見つからない甘美な檻の中だった。
私は、彼の逞しい腕の中で、彼以外の何も見えない、彼のことしか考えられない、彼のためだけの「角名専用の玩具」へと、一歩ずつ、確実に、そして自ら望むように堕とされていった。