〜side小柳〜
「ウェン‥‥お前話し聞いてるか?」
「聞いてるって」
ニコニコ顔で指でペンを回しながら相槌を打つ
絶対聞いてないだろコイツ
「じゃあお前この後まとめろよ」
「えぇ⁈」
ノートをウェンに押し付けると、すぐに俺の元に戻される
「やだぁ。ロウがやった方が良いに決まってるじゃん」
「どういう理論だよ。そうやってまた俺ばっかに書かせる気だな」
ふと視線を感じる
顔を横に向け、完全に後ろを振り向くことなく視線の端に星導を見た
星導は伊波と作業している
当たり前だよな
こちらを見る必要なんてないんだから
視線をノートに移すとウェンが俺を見ていた
「‥‥何?」
「ん?」
「‥‥何だよ」
「ロウってさ、星導の事好き?」
俺は息を吸うのを忘れて固まった
え‥‥
俺ってそんなに態度に出やすかったか?
「‥‥ロウ?」
「‥‥‥‥」
恐る恐るウェンを見ると、黙り込んだ俺を見て『しまった』と言うような顔をしている
ここで違うと言えば良いのに、俺も俺で動揺し過ぎて言葉が出てこない
「誰かに聞いたとかじゃないし、俺がそうなのかなぁって思っただけだから」
「‥‥‥‥何も言ってないけど」
「でも、わかりやすいけどね。元から仲が良いのは知ってたけど‥‥付き合わないの?」
「そんなんじゃないから」
「でもさ、さっき星導が‥‥」
「‥‥星導?」
「‥‥何でもない」
「‥‥気になるだろ」
「好きな人の事だもんね」
「お前‥‥‥‥」
絶対知られてはいけない人物に知られた気がする
終わった
俺の高校生活終わった‥‥
「ねぇ、あと10分で終わっちゃうよ?早くまとめないと」
「‥‥お前がやれよ」
「だから無理なんだって」
「‥‥無理って何だよ」
「ほら頑張って!もう少しでしょ?」
「お前ウザいな」
「恋も勉強も俺が応援してあげるから」
「‥‥ウザすぎる」
言葉とは裏腹に俺は内心ホッとしていた
俺の星導への想いを知っても嫌悪されなかった事に‥‥
いつもおちゃらけて適当な事言ってる風で、意外と目敏いんだな
「ねぇねぇ、やっぱり俺星導のとの事手伝ってあげようか?」
「‥‥いや、いらない」
「えー?だって付き合いたくない?」
「‥‥‥‥ない」
「えぇぇ⁈嘘だろ?」
「嘘じゃない」
そう、嘘じゃない
得られるよりも
失う事の方が怖いから‥‥
星導に恋人ができたとしても
側に居られる『友達』で俺は充分だった
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