TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

Eliminator~エリミネ-タ-

一覧ページ

「Eliminator~エリミネ-タ-」のメインビジュアル

Eliminator~エリミネ-タ-

48 - 第48話 五の罪状③ 粛清へ

♥

12

2025年06月02日

シェアするシェアする
報告する


「――落ち着いてください雫さん。気持ちは分かりますが……」



琉月はいきり立つ幸人を穏やかな口調で諭しながら、尚も続ける。



「裏である狂座のエリミネーターを殺害し続けた犯人。これは明らかに同じ裏の存在と考えた我々は、その足取りと存在を調べ挙げました。すると反応からそれは間違いなく、四年前に死亡した筈のコードネーム、錐斗とコードナンバー反応が一致したのです。まあ……一致しただけで、彼の存在までは確認出来ませんでしたが……」



“死んだ筈の者の仕業?”



その俄に信じ難い事実に、室内が不穏な空気に包まれる。生存が確定事項ではないとはいえ。



だが狂座に所属する者は、その存在の証明である識別番号とも云える、“コードナンバー”が本部に記録されている。これは指紋やDNAと同様、本人を示す唯一無二のもの。



沈黙――幸人は声を出せないでいた。そして誰もが同様の。



何時の間にか琉月の声のみが反響している事に。



「彼は生前はA級エリミネーターに位置していましたが、彼は貴方と根本が違う後天性異能者。仮に現行で活躍していたとしても、能力限界値からして臨界突破出来たと仮定したとしても精々S級下位止まりだったでしょう。だからこそ熊本支部を中心に活動していた、第一位が粛正に向かったのですが、結果は……」



そこで琉月は言葉を詰まらせた。



様々な状況憶測から、この件は有り得ないと琉月は評しているのだ。



「ふん、馬鹿馬鹿しい……。つまり何か? 死んだ筈のアイツが生き返ったか、もしくはその幽霊の仕業とでも言いたいのか?」



幸人はこれ迄の状況説明を一笑に伏す。



死亡した者が生体反応を示したという、そのあやふやな事実が可笑しい上、現実では考えられない力の差。



幸人は知っている。錐斗の力の限界を。彼の能力的に、上位とは絶対に埋められない差を。



だが第一位が殺害されたのは、紛れもない事実であって――



「……“フェイクモード”」



“……?”



「――っ?」



「何だろ……?」



「…………」



突如発した霸屡からの聞き慣れぬ呼称に、幸人のみならず全員が彼に視線を向けた。



「これはサーモに在る“本来”なら使用不可のモードでね……。開発者である私と、狂座の創始者である“あの御二方”以外知り得ない、正にトップシークレットモードなのです」



霸屡は己が開発した物を、さも自慢気に語り出すが、これまでの状況と何の関係が有ると言うのか。



「ふん……そんなシークレットモードを、そうべらべらと明かしてもいいのか?」



幸人はどちらかと言うと、それを皮肉で罵る。



「構いませんよ。このモードのコードキーは“絶対”に解読出来ませんから」



それ程までに洩れぬ事に自信が有るのか、存在を知った所で問題無しと断言。



「…………」



同僚で在りながら、何故か緊張感に満ちたやり取り、もとい“探り合い”が二人の間で展開されている。



それは口出しするのも躊躇しかねない程の。悠莉然り、琉月然り。



そして“狂座創始者の御二方”とは――



「で、そのフェイクモードとやらが、今回の件に何の関係が有る?」



だが今は現状の問題、そしてフェイクモードに於ける、今回の件との関連性。



「ええそれなんですが、フェイクモードはコードナンバーの書き換えも可能。つまり――生と死を偽装出来る事に、その意味が有るのです」



勿体振った感も有るが、霸屡はようやくその真意を明かした。



ここまで明かせば、誰にでも理解出来る。



即ち――



「アイツの死は偽装された――と言う事か?」



「そう考えるのが妥当でしょう」



“錐斗は生きていた”



その偽装された目的も、現状狂座に牙を剥いていると思われる理由も不明だが、錐斗の生存が間違いない事は確か。



だが一つ、解せない問題が有る。



「そうだとしても……霸屡よ、お前は自分で言ってたな? このコードキーは絶対に解けないと」



そう。一介のA級エリミネーターに過ぎなかった錐斗が、幸人も知らないトップシークレットを知るのは疑問が残る。



「それはそうでしょう。恐らくですが……この偽装は錐斗、彼本人の意思によるものではありません」



「……どう言う意味だ?」



しかし霸屡は憶測ではなく、何処か確信めいた口振りに、また一つの疑問が生まれていた事に幸人は気付く。



「四年前……狂座の根底を揺るがしたあの一大事。丁度時期が一致しますね。これは偶然じゃない。何より彼は所縁があった……そして貴方もね」



霸屡の意味深な言葉の意味。幸人にも有る関連性。



狂座の根底を揺るがした、四年前の出来事とは――



「それ以上言う必要は無い……」



だが幸人は言葉を濁す。



「ならば今回の件は俺が請ける、いや……“俺”以外有り得ない」



そして決意した。それは清算の意味も込めてなのか。



「彼の反応は、未だに熊本の“あの地域”に留まったままです。まるでその存在を知らしめているかのような……」



二人に気圧されていたのか、これまで黙していた琉月が口を開く。



熊本の“あの地域”に留まる理由――



「アイツがもし、俺を待つとするなら其処以外有るまい……」



幸人は全てを理解している。



「雫……くれぐれも気を付けるように。昔の彼とは別人だと思った方がいい」



赴く為か背を向けた幸人へ、腕組みしたままの霸屡の忠告。



「分かっている……。事の真意が判明した後、俺の手で始末をつける――」



幸人は振り返らぬまま、室内を後にする。



「ちょ――幸人お兄ちゃん待ってよ~」



それに続く、室内を出ようとする幸人に慌てて立ち上がり、後を追う悠莉。



「それじゃルヅキ? ボクも行って来るね」



「悠莉……気を付けてね」



手を振りながら幸人の後を追った悠莉へ、心配そうな口調の琉月の姿が。



二人が室内を完全に出ていき、残された霸屡と琉月。



「……果たして大丈夫でしょうか? 彼等は同期の同僚のみならず、同郷の“親友”同士でもあった」



「……確かに、不安要素はそこですね」



「そして……あの二人は“あの時”の生き残り。雫さんにもし、間違いでも起ころうものなら……」



「いや、雫に限ってそれは無いでしょう……。それより、今回の件を裏で糸引いている者が気掛かりです」



「やはり……“あの方”が?」



「可能性大……ですね。琉月、この件の裏を引き続きお願いします。私も別口から調査しますので」



「分かりました。では、くれぐれもお気を付けて――」



霸屡と琉月の密談が何を意味するのか。



「貴女もね。これは狂座の存亡に関わるかも知れません――」



それを最後に、この二人も室内からその姿を消していたのだった。



************



「――ねえ幸人お兄ちゃんってば、どうしたの? さっきからずっと変だよ……」



二人共自宅に戻って来たが、仲介室内より黙して語らぬ幸人へ、悠莉が不安を募らせる。



「…………」



何処か思い詰めた表情で、変わらず幸人はバッグに着替え等を詰め込み中だ。



「ねえジュウベエ? 幸人お兄ちゃん、どうしちゃったの?」



堪らず悠莉は腕に抱いたジュウベエに訊いてみた。きっと知っている筈――ジュウベエの様子もおかしいのだ。



「うん……まあ、オレもちょっと混乱。まさかアイツが生きていたなんて……な」



ジュウベエも何処かあやふやで、やっぱり理由が分からない。



そうこうしている内にバッグを片手に幸人は立ち上がり――



「悠莉……俺は二~三日行って来る。ジュウベエと留守番出来るな?」



戸惑ったままの悠莉の頭の上に掌を乗せ、そう伝えていた。



それはあたかも『着いてくるな』と言わんばかりに。



「うん……分かった――」



珍しく聞き分けが良い――と思いきや、悠莉は自分専用の箪笥から、着替え等を小さなバッグに詰め込み始めた。



「オイ……?」



その行動を幸人は怪訝に思う。



「――何て、言うと思ったの? ボクも一緒に行くから。だって――」



“もう幸人お兄ちゃん、帰って来ないかもしれないから”



「嫌だよそんなの……」



「悠莉……」



その震える声に幸人は迷った。



“果たして連れて行っていいものか?”



危険以上に、熊本へ“悠莉”と行くという事は、また別の意味が有る――



「どうしても今から行かなきゃ駄目なの? もう夜中だよ?」



「あ……ああ。一刻も早く行かなければならない。高速を飛ばせば昼迄には着ける筈だ」



迷っている暇は無い。それに悠莉は完全に一緒に行くつもりで、バッグを両手に準備万全だ。



「じゃあ早く行こ? 休院中の札も掛けとかなきゃね」



「……そうだな」



こうなっては頑として聞かないだろう。



幸人は一緒に連れて行く決意をする。それに何かあったら自分が守る――と。



「勿論ジュウベエも一緒だもんね~」



「……よし! 行くか久しぶりに」



三人は自宅を後にし、車に乗り込み向かう――熊本へ。



この先待ち受けている過酷な現実を、今はまだ悠莉は知るよしもなかった。

Eliminator~エリミネ-タ-

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

12

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚