ーある日
ナチが他国と密談していた。
俺が知らないところで、俺の資源を勝手に取引していた。
それを偶然耳にしたとき、胸の奥がズキッと締めつけられた。
裏切られた…
でも、信じたくなかった。
足が勝手にナチのもとへ向かった。
☭ 「ナチ、さっきの……あれは……?」
言いかけた瞬間、ナチはあっさり笑った。
卍 「嗚呼。もう、お前のことなんてどうでもいい。利用価値が無くなったから、別の奴と組んだだけだ」
心がひゅっと冷えた。
息ができない。
☭ 「……嘘、だよな?だって俺は……ずっと……」
縋るように腕を掴む。
ナチの袖に指が食い込んだ。
卍 「離せ」
その一言は、氷より冷たかった。
それでも離したくなくて、必死で笑った。
☭ 「なぁ……お願い、置いていかないで……
ナチのそばにいたい……」
卍 「うるさい」
ナチは俺の手を払いのけた。
その瞬間、胸のどこかでプツンと音がした気がした。
ナチに必死でしがみついていた手が、 急に力を失って、 代わりに別の感情が、熱く膨れ上がった。
怒り。
悲しみ。
裏切り。
全部がぐちゃぐちゃに混ざり、赤色になって視界が染まる。
気づいたら私は、ナチを壁に叩きつけていた。
☭ 「……どうして……どうして俺を捨てるんだよ!?」
自分でも聞いたことのない声だった。
泣き声とも叫びともつかない、壊れた声。
ナチが驚いた表情で俺を見る。
そんな顔、初めて見た……
卍 「ソ、ソ連……落ち着け──」
☭ 「黙れ!!」
胸ぐらを掴み、何度も壁に叩きつける。
鈍い音が響く。
手の震えが止まらない。
☭ 「俺は……お前のためなら、何でもした…… ずっと、ずっとお前が好きで……!」
ナチが苦しそうに呻くのが聞こえる。
だけど、その声すら今の俺には届かない。
☭ 「なのに、お前は……俺を捨てるのか……?」
気づけば、俺はナチの顔すれすれまで近づいていた。
涙で視界が滲む。
呼吸が荒い。
☭ 「俺を裏切るくらいなら……全部、壊してやる……」
握る拳が震えていた。
殴りたいわけじゃない。
ただ、離れてほしくなかった。
ナチはようやく息を整え、かすれ声で言った。
卍 「……バカだな、お前…… そんなに俺が……欲しかったのかよ……」
そう言ってナチは、俺に背を向けて歩いていった。
ナチの歩く音が、遠ざかっていく。
コツ、コツ、コツ──。
その一歩ごとに、胸の奥で何かが壊れていった。
☭ 「……気持ち悪い……?」
呟いた声が、自分でもわからないほど震えていた。
気持ち悪いのは、たぶん合っている。
だって俺は、ナチスがいなきゃ生きられないのに、 あなたは平気で背中を向ける。
その背中が、俺を完全に拒絶していた。
──ああ、もう戻ってこないんだ。
そう思った瞬間、頭の中で何かが“プチン”と切れた。
胸ポケットに、あの日ナチスが
「護身用にでも使え」と渡した折りたたみナイフが入っているのを思い出す。
皮肉だな。
ナチスが俺にくれたものが、今こうしてお前を刺そうとしている為に使われるなんて。
足が勝手に、ナチスの背中を追っていた。
早歩きでも、走ってもいないのに、不思議とすぐ追いついた。
ナイフを握りしめる手が勝手に動く。
深くは刺さない。ただ、“離れられないように”浅く刺しただけ。
背中に、静かに押し当てる。
ナチスの体が震える。
卍 「……っ、おい……ソ連……何して……」
振り向こうとする肩を、俺はそっと押さえた。
☭ 「お前が……行くからだろ……」
声が震えていたけれど、もう泣いていなかった。
☭ 「俺から離れるから……手を離すから……
だから……こうするしか……なかったんだよ」
ナチスは荒く息を吸い、ゆっくり振り返ろうとしたけど、 俺はその背中に額を押し当てた。
☭ 「痛いか……? でも、俺のほうが……ずっと痛かったんだよ」
ナイフを刺したまま、そっと抱きしめた。
深く刺さってない。
命に関わるような傷でもない。
ただ、“逃げられない印”をつけただけ。
ナチスの呼吸が乱れている。
怒りか、恐怖か、それとも──理解か。
俺は、静かに笑った。
☭ 「ねぇナチ……これで、俺から……逃げられないよな……?」
背中越しに、ナチスの体温が確かに感じられた。
その温度だけで、胸が満たされていく。
皆さん気づいたでしょうか?
最初ソ連は、卍のことを「ナチ」と読んでいましたよね。
だけど、「気持ち悪い」と卍に言われてからは、「お前」や「ナチス」となっているんですよ。
ここは、「お前」とか「ナチス」ってしたらおかしくなるかなーと思ってしませんでした。
てことで、ではまたー!
コメント
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…なぜ今までこのような神に出会えなかったのだろう…歪んだ愛って…いいよね☆
好き!