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ナギサノサナギ
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うわ、この回エグかったな… ライが「重いの」って自覚してるのに震えが止まらないところ、ガチで刺さったわ。百年前の喪失がまだ生々しく残ってて、ちょっと体調崩しただけでフラッシュバックするのリアルすぎる。それに対してマナが「ちゃんと生きるから」って約束するところ、ちゃんと向き合ってる感じがして良かった。雨の中の抱擁、二人だけの時間って感じで切なくて温かかった🔥
七月に入った。
蝉の声。
強い日差し。
夏の匂い。
教室では文化祭の準備が始まっていて、クラス中が妙に浮ついていた。
「うちメイド喫茶やるらしい」
「へぇ」
「ライ絶対似合うじゃん」
「嫌」
「即答」
放課後、机を寄せて作業しながらマナが笑う。
ライは文化祭のポスター作りを任されていた。
真剣な横顔。
器用に動く手。
その姿を見ながら、マナはふと思う。
こういう普通の高校生活を、前世ではほとんど過ごせなかったんだな、と。
「……ライ」
「ん」
「今、楽しい?」
ライはペンを止めた。
それから少しだけ笑う。
「すごく」
その答えが嬉しくて、マナも笑った。
けれど。
最近、マナには気になっていることがあった。
ライが時々、自分を見る目。
優しいのに。
幸せそうなのに。
どこか怖がっている。
まるで、また突然いなくなるんじゃないかと怯えているみたいに。
その日の帰り道。
夕立が降り始めて、二人は近くの公園の東屋へ逃げ込んでいた。
「うわ、降りすぎだろ」
マナが濡れた髪をわしゃわしゃする。
ライは黙ったまま、タオルを差し出した。
「ありがと」
受け取りながら、マナはちらりとライを見る。
やっぱり少し変だ。
さっきから妙に静かだった。
「……ライ、なんかあった?」
「別に」
「嘘」
マナは隣へ座る。
肩が触れる距離。
「俺わかるよ」
その言葉に、ライの睫毛がわずかに揺れた。
雨音が強くなる。
しばらく沈黙が続いて。
やがてライが小さく口を開いた。
「……今日、保健室行った?」
マナは目を瞬かせた。
「え、なんで知ってんの」
「クラスのやつが言ってた」
「あー……ちょっと立ちくらみしただけ」
その瞬間。
ライの表情が固まった。
マナははっとする。
しまった、と思った。
前世でも、自分は最初“ちょっと体調悪いだけ”と言っていた。
そこから全部始まった。
「……ライ」
「病院、行った?」
声が少し震えている。
マナの胸が締め付けられた。
やっぱり怖いんだ。
また自分を失うのが。
「ただの寝不足だって」
「でも」
「ライ」
マナはライの手を掴んだ。
冷たい。
こんなに不安になっていたんだ。
「俺、今すぐ死んだりしない」
ライは何も言わない。
ただ、苦しそうに俯いている。
「……ごめん」
掠れた声。
「自分でもわかってる」
「何が?」
「重いの」
マナは目を見開く。
ライは笑おうとして、失敗したみたいな顔をした。
「ちょっと体調悪いって聞いただけで怖くなる」
「……」
「また失うかもしれないって思う」
その声が痛いほど弱かった。
百年前。
目の前で恋人を失った。
何もできず、ただ見送るしかなかった。
その傷は、百年経っても消えていない。
マナは胸がぎゅっと痛くなる。
「……ライ」
「ごめん」
「謝んな」
マナは強く手を握った。
「怖くて当然だろ」
自分だって思い出した。
最後の日のライの顔を。
泣きそうなのに、泣くのを堪えていた。
震える声で、“行かないで”って言っていた。
あんな別れをしたら、怖くなるに決まってる。
「……俺さ」
マナはゆっくり言葉を探した。
「前世の最後、ちょっと思い出した」
ライの身体が小さく強張る。
「俺、たぶん苦しかった」
「……」
「でも、隣にライいたから怖くなかった」
雨音の中、ライが静かに目を閉じる。
マナは続けた。
「だから今度は、ライが怖くならないようにしたい」
「……無理だよ」
「無理じゃない」
マナはライの肩に額を寄せた。
「何回でも言う」
鼓動が聞こえる。
不安そうな鼓動。
「俺、ちゃんと生きるから」
ライの呼吸が揺れる。
「ライと、未来行きたい」
その瞬間。
ライが強くマナを抱きしめた。
「……っ」
苦しいくらい強い腕。
震えている。
マナは驚きながらも、そっと背中に手を回した。
「……ライ」
「ごめん」
「だから謝んなって」
ライは肩に顔を埋めたまま、小さく呟く。
「百年前、約束したのに」
「?」
「幸せにするって」
マナの目が揺れる。
ライはずっと後悔していたんだ。
自分を救えなかったことを。
「……馬鹿」
マナは優しく言った。
「十分幸せだったよ」
ライが息を呑む。
「今も、前世も」
だから、とマナは少し笑った。
「今世ではもっと幸せになろ」
その言葉に、ライの腕に力が入る。
雨はまだ降っていた。
でももう、寒くなかった。
二人でいれば、ちゃんと未来へ進める気がした。