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『そういうわけでさあ、ワシは和泉のコブなのかもしれない。ワシがいるから、和泉は結婚できないのかもしれない』
やり直しのアフタヌーンティーで、緑さんと南さんに相談してる。緑さんおすすめのお店だけあって、紅茶もお菓子もおいしかったけど、ワシが和泉のコブかもって考えると、悲しい気持ちになってしまう。
緑さんが眉毛を寄せた。
「それはねえ……難しい問題だけどねえ……」
南さんも難しい顔をした。
「そんなに、千歳さんにとって和泉さんが欠かせない存在となると、ねえ……」
『和泉にあんまりベタベタしちゃいけないって思うんだ、でも和泉にくっつくと安心して落ち着くんだ。やめられないんだ。でも、和泉は優しくていい奴だし、ワシのこと嫌って言わないんだ。でも、ワシまだいろいろ子供だからあいつに頼らなきゃいけないことよくあって、よくないんだ……』
「うーん、でもねえ」
緑さんが言った。
「和泉さんは千歳ちゃんのことが大事で、こないだは狭山咲さんを選ぶこともできたのに千歳ちゃんを選んだわけでしょ? 和泉さんのその気持ちは、大事にしてあげたほうがいいんじゃないかなあ」
南さんが頷いた。
「そうですよ。子供がいてもほったらかして恋愛に走る人はいますけど、和泉さんは千歳さんを選んだわけですから、狭山咲さんとの恋愛より千歳さんが大事だったんでしょう」
『そうなのかなあ』
和泉の大事な人は、確かにワシなんだけど。
緑さんが、ちょっとからかうような口調で言った。
「水香さんから聞いたんだけど、千歳ちゃんが和泉さんの名前呼ぶために泊まりだった時、和泉さんすごく寂しがってたんでしょ? そんなに千歳ちゃんが大好きな人なんだから、千歳ちゃんに甘えられたって、嬉しいだけなんじゃない?」
『あいつ、ワシに甘えられたら嬉しいのかなあ?』
「千歳ちゃんが甘える時、和泉さんはどんな感じ?」
『絶対嫌がらない。どうしても無理なときでも、できるだけワシのために何かやってくれる』
嬉しそうな感じかはよくわからないけど、いつもすごく優しく受け入れてくれるのは確かだ。
南さんがぼそっと「尊い……」と言った。
『尊い?』
「あ、いえ、こちらの話です。でも、和泉さんがそんなに千歳さんを大事にしてくれてるんだったら、千歳さんが出来ることは身を引くことじゃなくて、和泉さんを大事にしてあげることじゃないですか?」
和泉を大事にしてあげる。うーん、悪くないけど。でもなあ、ワシがいるから和泉は結婚できないんだし……いや、でも、和泉は咲さんよりワシが大事で今回うまく行かなかったんだから、和泉がワシより大事に思える女を捕まえたら、それは解決するのか。
うーん、咲さんよりいい女って言ったら相当なレベルになるけど……でも、いい人見つかるかなんて巡り合わせだから、待つしかないのかなあ。
和泉がいい人を見つけたらすぐ捕まえられるように、そのために和泉が元気に楽しく過ごせるように、毎日大事に世話してやるしかないのかなあ?
『えっとさあ、和泉はワシがいないと寂しいみたいだから、あいつのそばにいて、あいつを大事に世話してやって、あとは和泉がワシより大事に思える女を見つけるまで、待つしかないかなあ?』
緑さんは「そうしてあげなさいよ」とうなずいた。
「千歳ちゃんがそばにいて、大事にしてくれたら、和泉さん、それが一番喜ぶわよ」
『うーん、じゃ、和泉が楽しいことする年間を今年も頑張るか……』
「ああ、前言ってたやつ?」
「どういうのですか?」
南さんに聞かれたので、ワシは説明した。
『あいつも辛いこといろいろあったから、人生が嫌になっていなくなったりとかしないように、好きなもの作ってやったり花見に連れてったり友達作らせたり、頑張ってるんだワシ』
ワシは、和泉が楽しいことする年間を詳しく説明した。失敗して狭山先生にたしなめられたりしたけど、おおむね和泉は楽しそうと話したら、南さんが何故か食いついてきていろいろ聞き出された。
「素晴らしいですよ、千歳さん……!」
『へへ、ワシけっこう頑張ってるだろ?』
南さんにほめられていい気分になったけど、それはそれとして、ワシが大人になるのは頑張らなきゃいけないなあと思った。あいつにあんまり負担かけたくないし、大人になったら、もっと気配りができて、もっと和泉を大事にしてやれるかもだし。
『大人になるには、どうすればいいのかなあ』
そうため息をついたら、緑さんが苦笑して「よく学んで、よく食べて、よく寝なさい」と言った。うーん、学ぶのはよくわからないけど、とりあえずよく食べてよく寝るか。正直、こないだ爆発しかけたときの疲れがまだ残ってて、組紐作りで念使ってなくても夜眠くなるし。
その日の夜は、和泉に巻き付いて布団に入って、早く大人になれますように、と願いながら寝た。
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コメント
1件
うわあああ千歳ちゃんの心の内がこんなに深く描かれてるの初めてかも…!😭💕「和泉のコブかも」って悩む姿にグッときたし、でも南さんの「大事にしてあげるのができること」って言葉にすごく救われたよ…!緑さんも温かいし、この二人の大人のアドバイスが沁みる〜。そして「楽しいことする年間」のエピソード掘り下げ、めっちゃ好き。千歳ちゃんが和泉のために頑張ってるのが伝わってきて泣ける。巻き付いて寝るシーン、尊すぎて悶えた…!🫂💖