テラーノベル
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冷蔵庫の音、時計の秒針、壁越しに聞こえる生活音。
全部がうるさかった。
いや、本当は、何も聞こえてなかったのかもしれない。
ただ頭の中で、ずっとノイズのように響いていた。
重たい布団の中で目を開けても、
窓の外の天気すらどうでもよかった。
「中国、起きれるか?」
ロシアの声が、遠くからした。
“嬉しい”と感じたことがあった気がする。
昔は、彼の声に救われたこともあった。
でも今は──
聞こえるたび、心が沈んでいく気がした。
目を閉じる。返事はしない。
わざとじゃない。
ただ、反応の仕方がもう分からなかった。
ロシアが、そっと布団の端をめくる。
「何か、口に入れてくれ……お願いだから」
そう言って、小さなスプーンを差し出してきた。
ほんの少し、食べるふりをする。
口の中は砂利みたいで、味なんてわからなかった。
けれど、ロシアはそれでもホッとした顔をしていた。
「……ありがとう」って。
我はまた、ロシアに何も返せなかった。
──ロシア視点──
中国が、何も感じていないのが分かる。
あの目、あの手の冷たさ。
俺の声が届いてない。
差し出す食事も、毛布も、気づかって買った果物も、
全部、“ただのもの”でしかないみたいだった。
言葉の温度がない。
目も、声も、笑いもしない。
俺の知ってる中国じゃなかった。
かつては、口うるさいくらい几帳面で、
体調が悪いときですら「我のことはいい、資料を先に」と言っていたのに。
今は、ただ寝てるだけ。
表情も、声も、思考も、
何かに覆われたように消えていた。
たぶん、俺が怖かったのは──
俺はまだ中国のことを好きなままだったってことだ。
“このまま戻らなくても、俺はそばにいたい”とさえ思っていた。
でも──それは本当に、
中国のためになるんだろうか。
──中国視点──
「嬉しい」「悲しい」「怖い」「好き」
……全部、どうやって感じてたんだっけ。
身体が軽くなるどころか、
毎日、鉛が増えていく感覚だった。
夢の中では、誰かが泣いていた。
でも、自分だったのか、子どもだったのか、
それすらもう思い出せなかった。
ロシアは、何も責めない。
毎日、そばにいる。
けど、それが優しさであることすら、
もう分からない。
「……ごめん」
その言葉すら、喉の奥でつかえて、出てこなかった。
喉が詰まるように痛かった。
涙が出ないくせに、心がぐちゃぐちゃだった。
コメント
3件
ねむちゃん文の構成とかめっっっちゃ上手いからさらに切なく感じるよおおお😭
なんでそんなに構成上手いんですか()好きっ