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めんどくさいなぁ。
バイヤーにあいつを見せて、値踏みが終わったら金を受け取って、それで終わりだったはずだけど。
吸入麻酔を忘れたから持ってこい、だってさ。
末端の俺が逆らえるはずもなく、また元来た道を引き返した。
『今日の夜は会える?』13:33
あいつのスマホに届いたメッセージ。
jpにどう伝えようか。
いきなり別れ話をしたり無視したりするのは不自然すぎるか。
〈今日も行けない〉13:40
〈集中したいからまたこっちから連絡する〉13:41
少し時間はかかるかもしれないけれど、このまま自然に終わらせよう。
そして俺がjpと一緒になるんだ。
染み付いた汚れは今更落とせない。
jpがいればそれでいい。
また、あの頃に戻りたい。
商店街から路地裏に入り、フードを被る。
裏通りに出れば、組織が所有する寂れたテナントビルがある。
隣接するビルとの隙間を通り、真裏には薄汚れた裏口がある。
ガタついた扉を引いて埃っぽい中に入ると、倉庫の奥に戸棚が置かれている。
それをずらすと現れる隠し扉を開けば、地下に続く階段があった。
階段を降り始めるとあいつの声が聞こえてきた。
「……いやだッ!…やめろ!!……」
懲らしめる、と言っていたから何が起きるかは想像できていたけど、元々jpの大事なものだったあいつが本当に暴行されているのを見ると、少しだけ心がチクリとした。
「よぉ、ユウ。ありがとな」
「いえ…」
バイヤーは血管を浮立たせた顔であいつの頭を掴み、口に汚いアレを捩じ込もうとしていた。
俺に気づいたあいつは泣きじゃくりながら懇願する。
「…!ユ、ユウさん!たすけて!お願い”!」
「うるせぇよ」ドスッ
「あ”っ」
バイヤーがあいつの腹に拳を入れた。
体を丸めて咳き込むあいつ。
顔も殴られているのか、口元から血が垂れていた。
商品なんだけどな。
「わからせてやろうと思ったけど、まあ手加減はしといたよ」
「生意気だし声でけーからそこはマイナスだよな。でもこのツラだし、しつけ次第ってことで値は張ると思うぜ?」
「…そうですか、いくらくらい?」
「そうだなー」
バイヤーは下にいるたttを見る。
整った顔に、生まれつきであろう金髪と金目。
気の強さでは隠せない全身の震えと涙は、男の加虐心を煽る。
頭の中で指折り数えながら、事もなげな様子で答えた。
「8桁出す客もいるかなー」
「まじで死ねよお前ら」
「!?」
ゴッ!!!!
「う、ぐっ、」ズサッ
背後で聞き慣れぬ声が聞こえたかと思うと、ユウがうめき声をあげて壁にぶつかった。
「ユウ!?」
振り向くと同時に、頭部に衝撃を受ける。
ガゴッ!!!!
「、、、ッ!!」
男の肩越しに見えたのは、怒りを露わにした表情のyaとurだった。
「yaくん、、!ur、、!」
「…tt!!」
「…!ttさん…!」
二人がかりでttの上に倒れたバイヤーを引き剥がした。
腕縄を解き、yaは自分の上着をttの膝に被せた。
「ya、くん、、、ur、、、」
「おれ、、、おれ、、、」
涙と唾液と血をこぼすttの、恐怖と動揺に心が掻き乱された二人は、揃ってttをきつく抱きしめる。
怒りか、悲しみか、二人とも小さく震えていた。
「tt、もう大丈夫だから」
「もういい、話さなくていい、ttさん」
「…!」
大粒の涙をこぼし、ttは声をあげて泣いた。
「!」
「…ぇ、この声、ttさん?」
雑居ビルの裏口にいたjpとnoは、いるはずのないttの声に耳を疑った。
「…!」
思わずビルに飛び込んだjpに、noも続く。
声はどこから…この部屋だ。
ずらされた戸棚の向こうに階段が見え、脚が絡まりそうになるのをどうにかコントロールしながら駆け降りる。
嫌な予感に、鼓動が速まる。
「…!」
「jp!!!来るな!!!!!」
yaが叫び、urはttを抱き隠した。
その瞬間、ttの目にjpが飛び込んできた。