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「彩香さんの本当の恋人は新二です」
「え?どういうこと?」
夫人は周りを見渡して眉を顰める。
「もしかして、そのことに気づいていないのは私だけということ?」
森川彩香と新二さんはチラリと社長を見ると、賢一がその問いに答えた。
「父さんも知らなかったが先日、全てを話した」
「な、なんで兄さん!約束したじゃないか」
テーブルを叩き興奮気味の新二さんに対して、静かにそれでいて毅然とした態度で新二さんを見る。
「新二が中学2年の時から二人は付き合ってます。そして今でも」
ん??二人はそんな昔から付き合ってたの?
それなら、森川彩香のあの行動は何?
私の頭上には大量の?マークが現れているに違いない。
「新二の彼女って彩香さんだったの、そんな昔から付き合っているのにどうして隠していたの?それ以上にどうしてそこに賢一がでてくるの」
混乱する夫人は一気に捲し立てる。
「二人が何故、交際を隠していたのかわからないが、それで俺が婚約者のフリをしても母さんにはバレなかったわけ。父さんには時期が来たら説明すると言っていたんだが、二人が約束を違えたことに対して俺の責任はこの場で放棄する」
「約束?」
思わず声がでてしまい、慌てて手で口元を押さえた。
「兄さん、ごめん」
慌てる新二さんに対して賢一はすごく落ち着いていた。
「新二、お前が俺に頭を下げに来たときに約束は守るように言ったよな?ところが、お前も彩香さんも約束一つまともに守れないなんて呆れてものも言えない」
「お前が台湾まで来て俺に助けを求めたときに、仮の婚約者を務める代わりに避妊は必ずすること、もし俺と婚約中に身籠ったりすればお互い傷を持つことになる。しかし、お前たちはそんな約束も守れない、さらに婚約者としての最低限の務めははたすが、基本的に俺の生活には干渉しないと約束したのに彩香さんは雪に接触して別れるようにと言ったそうだ」
「彩ちゃん、それ本当?」と新二は声を掛けたが森川彩香はじっと下を向いたままだった。