最初に会話を始めたのは、池の中でも古くから知り合いだった鳥族の王、ヘロンとトンボのリーダー、ドラゴであった。
内容はこんな感じだ。
「能力の譲渡? あれれ、若(も)しかしてコレの事だろうかぁ、おいっ、ドラゴォ、お前ってさぁ、『武装(エクソプリズン)』とかって使えたっけかぁ?」
「んん? いいや使えないぞ、ヘロンよ、何でそんな突拍子もない事を?」
「いやな、戯(たわむ)れ半分だがお前を『鑑定(アナラシス)』して見たらさぁ、今までは植物を食べた時の効果や摂取の可否しか判らなかったんだがな、今はお前の細かい情報まで判るようになったんだよぉ、んでお前のスキル? 一番下の方に書いてあったんだよ、『無言(シオピロス)』と『死者との繋がり(ネピロス)』の後ろにある、『武装(エクソプリズン)』って表示がさぁ! これってお前の能力だと思うんだがな?」
「ええっ? 何だろう、な……」
このタイミングでギンブナの中でナッキに次いで二番目に大きな個体、ヒットが二匹の会話に割り込む。
「ほお、悪魔、か? それにスキル、ねぇ? 只の魚として生き残る事だけに必死だった俺達にはイマイチ理解出来ないが…… 凄い技、なんだろうなぁ~、何だっけ? 『武装(エクソプリズン)』だったっけ?」
言い終えた瞬間、池の中のムードが一変した、コレまでとは違い殺伐としてしまったのである。
切欠(きっかけ)となったヒット自身が、驚天動地の表情で周囲を見回しながら言う、全身を漆黒の鎧と鋭利な棘、凶暴な牙を覗かせた、発言前までと同一とは思えない姿で、である。
「お、お前ら! そ、その姿はぁ! だ、大丈夫なのかよぉ?」
「ひ、ヒットぉ! 君こそ大丈夫なのかいぃ? 何かトゲトゲになっちゃっているんだけどぉ!」
「そ、そうだよぉ! お、オーリもぉっ! 聞こえる? まだアタシの言葉が理解出来るぅ?」
コレまでの姿形と一ミリも変わらない状態で叫んだナッキとサニーに周囲を圧する冷気に身を包んだヒットは答える。
「ん? そうか、俺自身も変わっちまったのか? んだが、特段問題は無いぞナッキっ! えっとこれってぇ? どうすれば元に戻るんだ? ヘロン?」
問われたヘロンが答える前に言葉を発したのは、細身だが鋭い棘で全身を覆ったオーリである。
「勿論、聞こえてるよサニー! ってか、これ凄いよ! 内側からこう力? ううん、闘う意思? みたいな気持ちって言うのかな? そんな物がどんどん溢れてくるのよ! 何て言うのかな? そう、言ってみればさっ、誰の挑戦でも受ける、そんな気持ちって言えばいいのかな? ねえ、皆?」
ナッキとサニーを除き様々な属性で『武装』した状態の全ギンブナが答える。
『ダアァーッ!』
うん、興奮状態で非常に好戦的に見えるな…… 大丈夫かよ……
ここまで必死に何やら記憶を辿っていたらしいヘロンは無言のままだ、オーリ達の発言は時間稼ぎとしてはナイスアシストだったと言う訳だね。
「『解除(リリース)』、だっ! ヒットさん! 『解除(リリース)』と発声して下さい! それでスキルが解除出来る筈なんでぇっ! 急いでっ!」
ヒットは大慌てで叫ぶ。
「お、おうっ、『解除(リリース)』! ふうぅっ、一体何だったんだぁ?」
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