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瑠璃🍫✨💭ྀི
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広睦くんが泊まった翌朝、朝寝坊して鏡を見ると自分の顔の酷さに愕然とする。こんなひどい顔、広睦くんには見せられない。慌てて何とかしようと必死な私の横で、ん――……なんて呑気に伸びをして起きてきた広睦くんがにやにやとこちらを見つめる。
「若いっていいよね。朝起きただけでお肌ピカピカで」
「何も言ってないじゃん。かわいいなーって見てたのに」
「30過ぎた女のコンディションの悪い顔が? 」
思わず声が低くなる。
「春ちゃんさぁ、年齢のことばかり言って、自分が老いることにしか着目してないけど、俺も年は取るし、そうだな。禿げるかもしれないし太るかもしれないし、白髪になるのは早そうだし。膝も古傷あるし。老ける速度は人それぞれだよ。俺が老いることも受け止めてくれんのー? 背があるから介護は大変だろうなって思うし。棺桶も割高なやつだぞ」
「その頃私はもう灰になってるでしょ。え、棺桶のサイズで値段ちがうの? 特注とかあるの? 」
「うん、俺のおじいちゃんがこの前調べて、ごめんて言ってた」
「あははははは! 気にしなくていいのに」
「あ。おじいちゃん、剥げてはないか。白髪だけど。俺、禿げはしないかも」
「ふふふ、そっか」
「可愛いなって見てたんだよ、俺の彼女。朝、無防備でかわいいの」
「か。だからこんな、若くもないのに、かわいわけっ、」
かああ、と広睦くんのリップサービスに顔が熱くなる。
「照れる時に自虐に逃げるのやめなよ。春ちゃん余裕崩された時弱いよねー」
そう言ってベッドから出てきて私の側に座る。
「いや、やっぱり全然違うと思っ、」
いたたまれなくなるけど、広睦くんは愛おしそうに目を細めた。
何度も、良くないって、やめなきゃって考えて考えて未だにこれでいいのかなって思う。その度に目の前の広睦くんを見てホッとする。いいか、私たちがこれでいいんだって決めたから。
「何考えてるの? 」
「んー、広睦くんと離れなきゃって必死だったの、無駄な努力だったなって」
「無駄なことってやってみたから無駄って気づいたわけで。ね? 」
窘められてしまって苦笑いする。
――広睦くんは大学を卒業し、社会人になった。
「GWは夜更かしするって決めてる。それを楽しみに生きてる」
「はいはい、今でもじゅうぶんゴロゴロしてるでしょう」
土曜日の午後、我が家でだらだらしてる広睦くんに呆れた視線を投げた。
「生活だけで精一杯。慣れるの、これ」
「うん。慣れるよ、大丈夫」
じーっと見つめて来るから、
「どうしたのよ」って顔を近づける。
「春美ちゃんが、いるなと思って」
「何それ」
「こっちにも慣れないんだよ」
そう言って私の後頭部に手を添えてキスをする。ちょっと体勢がつらいけど、その甘さにすぐに応える。私もまだ慣れないなぁ、幸せな時間にもふと不安がよぎる。
「時々これが広睦くんの壮大な復讐なんじゃないかなって、思う」
そう言うと広睦くんはキスをやめてガバっと起き上がると私の前にドカッと胡坐をかいた。両手を顔の前でこすり合わせる。
「ごめんって。もう、許してよ」
その様子にいくらばかりホッとして胸がすく。
「ほんとだって、本当。もう嘘はない。好きだよ」
言いながら、広睦くんが赤面する。もうとっくに許してる。そもそも思ってもないし、不安を押し付けるつもりもなく、からかっただけだった。
「ねえ、顔赤いよ」
広睦くんもからかわれたのがわかったのか、一瞬ムッとしたけどすぐに目を細め、幸せそうに頬をくっつけてきた。
「許してよ。……うそ、許さないで。……一生」
「そうする」
ああこの子、私と一生一緒にいるつもりなんだと胸がくすぐったい。緩んだ顔は広睦くんの瞳にどんなふうに映ってるんだろう。
「きゃあ、ちょっと。今日はゆっくりするんじゃなかったの」
私の服に差し入れられた手を形ばかりせき止めるけど、
「じゃあ、そろそろ話ししよっか。……俺たちの未来について」
「ちょ、これは、話ではないのでは?」
「GWは夜更かし諦めて早起きするからさ、春美ちゃんの家と俺の家と挨拶に行こう」
あっという間に服を脱がして「決定事項」広睦くんは強い圧を込めた顔で笑った。
コメント
1件
ああ、最終話か…!めちゃくちゃ温かい気持ちになったわ。 「若いっていいね」からの「俺も禿げるかも」って返し、広睦くんの余裕と優しさがにじんでて最高だった。 「一生許さないで」からの「決定事項」って圧、この作品の積み重ね全部乗せてる感じがして泣ける。 お疲れさま、西原衣都さん。素敵な物語をありがとうございました。