或る日、月の七割が欠損。
其れは黄色い蛸の様な見た目をした最高マッハ20の生物が正体であり、其の生物は椚ヶ丘中学校3年E組、通称「エンドのE組」の担任をしている。
「____って訳で、君達には暗殺任務を任せたい。異能力は使っても良いけど、マフィアである事、其れと凶器は持って行かない事。
超生物と教員の方々には全て伝えてあるから、教員の前で気を張る必要は余り無いよ。あくまで超生物を暗殺することだけが君達の任務だ。…頼めるかい?」
「は!?こんなチビっ子マフィア何かと行きたく無いよ!!
抑々私と中也…武装探偵社とポートマフィアは一時の停戦関係に在るとは云え完全な協定を結んだ訳じゃ無い!任務中に其の停戦関係が切れたら任務はどうなるのさ!!」
「癪ですが首領、俺も同じ考えです。期限は『来年迄』、と云う事は来年迄に殺すか其れより先に停戦関係が切れてまた敵対関係に戻るかの二択です。」
前の様な『一夜限り』では無く、『一年』の双黒復活。
流石に無理な事だ、と二人がやいやい言って居ると首領___森鴎外の静止が入り、其の場に静寂が戻る。
「中也くんは未だしも太宰くん。君は全て解って居るだろう?其れ程鈍い人間では無かった筈だ。何万パターンも考えて居る間に、停戦関係が一年程続く可能性も考えて居るだろう?組合以外の敵が現れる可能性も無い筈は無い。」
「……はぁ、やっぱ森さんは全部お見通しって訳か。…後で中也の事笑い物にしたかったのに」
「あ゙ぁ゙!?」
〜〜〜
「ふぁあ…中也ー、蟹缶」
「自分で取れ糞鯖」
「けちー、」
朝七時に太宰が起床。
其れから中原に急かされつつもマイペースに準備。
二人共教員としての暗殺へ参加。当然だが、二十二にも成って生徒としての参加は無理であろう。
然して余裕を持って校舎に行く……
筈だったのだが。
「中也は私の狗だろう!?背負ってくれても良いじゃないか此のゴリラ!」
「俺はお前の狗でもねェしゴリラでもねェ!!抑々お前が『時計の針三十分遅らせて置いたよ☆』とか云うからこんな急いでンだろうが!!」
「だとしたら尚更背負ってくれた方が早いだろう!?これだから脳筋は!」
「うるせェ!!」
「二人とも、初日に遅刻とはいただけませんねぇ。教師としての自覚をもっと持ちましょう。」
「あぁ!?……あぁ、手前がマッハ二十の超生物か。」
「失礼な!私には『殺せんせー』という名があります!」
急いで階段を駆け上がって待って居たのは、黄色い蛸。
自らを『殺せんせー』と名乗った其奴は、旧校舎のE組に案内して呉れた。
「さて皆さん!今日は新しい先生が来るので朝の暗殺は無しです!」
扉を開け、そう『殺せんせー』が云うと教室が騒めく。
一分も経たないだろうか、其れ位の時間が経った後に「皆さん、お静かに!」と声が響いた。
「では、入ってください」
そう云ったとほぼ同時に大きな音を立て、扉が蹴り飛ばされる。
「いってて…本当不躾だね君は!私の狗なのだから、もう少し大人しく私の云う事を聞いてくれ給え!」
「だァれが手前みたいな青鯖の云う事を聞くか!!絶ッ対聞かねぇ!!死んでもだ!!!」
「はぁ!?」
扉ごと蹴り飛ばされた茶髪の細い男性、其れをした犯人と思われる赤朽葉色の髪をした小柄な男性。
行成其れ等が入って来た事で、教室は中々に混沌と化して居た。
「太宰先生、中原先生。自己紹介を」
「…あぁ、すみませんね。私の名は太宰治、齢は二十二。武装探偵社の社員を勤めている。趣味は自殺、好きな物は蟹缶と酒と味の素。嫌いな物は狗と中也。数学を務めることになった。宜しく。」
「中原中也。好きなのは帽子と喧嘩、後酒と音楽。嫌いな物は太宰。体育を烏間と勤めることになっている。宜しく。」
此れでスッと入ってこれるのも切り替えが凄いが、最初の口喧嘩さえ無ければ第一印象は最高だろう。喧嘩さえ無ければ。
一限目、体育。
「太宰先生と中也先生も暗殺に参加するとの事で、手合わせ願いたい。」
「俺らペアでか?舐めてる様で悪ぃが直ぐ勝つぞ?」
「まぁ、良いでしょう中也?君の単純思考では彼の超生物に勝てないし、私は体術は専門じゃ無いから彼の超生物に勝てない。暗殺時は結局組む事になるだろうしね。だからペアでの実力が分かった方が、烏間先生にとっては良いんだよ」
「成程な。じゃ、作戦は?」
「恥と蟇蛙。」
「あァ?此処は造花の嘘だろ?」
「はぁ…二度も言わせないでくれる?私の作戦が間違っていた事は無いよね。」
「…へーへー、解ったよ」
やり取りを終わらせた後、二人は位置に着く。烏間も構えを取り、聞こえない開始のゴングが三人の中で鳴り響いた。
「中也」
「解ってるっつーのッ!!」
烏間が太宰の懐へ入り込むと、太宰が屈み、後ろから中原が蹴りを烏間に決める。
綺麗に蹴りが入った様で、数m程吹っ飛んで行った。
「ねー中也、君反射速度鈍くなってない?」
「何もしてねェ手前に言われたかねェよ!!」
「作戦立案は私だよ?正面突破で行ったらもっと時間が経ってただろうね?君のやり方は非合理的だよ」
「チッ、癪だが手前のやり方が一番早ぇ、ありがとよ。」
「うっわ蛞蝓が感謝とか気持ち悪、鳥肌立つわ…」
「云った本人の俺も鳥肌立ってきた…云わなきゃ良かった…」
仲が良いのか悪いのか、其れも今はおぇ、と吐き真似をして居るが。
あんな仲が悪いとしか云い様が無い……其れ故先程迄息ピッタリだったと云うのが信じられない位だ。
〜〜〜
「……そう云えば、何で業は此処に居るの?」
「え?カルマくんと知り合いなんですか?」
放課後、潮田渚と太宰治。
「私が18歳の時に何やかんや有ってね、偶々裏路地で喧嘩してる所を見付けて色々意気投合してしまったのだよ。」
「なるほど…?」
「で、何で此処に落ちたんだい?」
「…喧嘩やらの暴力沙汰で、E組に、」
「嗚呼、成程」
元々赤羽と太宰は知り合いだった為、殺せんせーが授業をしている間もずっと二人で良からぬ事を考えたり仲良さげな感じだった。昼も一緒に居て、正に友達の感覚。
……密着してさえ居なければだが。
「先生とカルマくんの関係って何なんですか?」
「ん〜……恋人かな?」
「あーなるほど!こいび……恋人!?!?」
「迚もベタな驚き方したねぇ」
「いや、カルマくんと先生って、7歳差じゃ…!?」
「そうだね」
「そうだねじゃなくて!!、色々とやばいんじゃ……」
「僕の居た所はそんなの普通に感じる位可笑しいし」
『7歳差恋愛が普通になるくらいの職業って何なんだ……?』と渚は思う。同時に太宰職業の想像が全く付かなくなった。
其れもそうだろう。何て云ったって太宰の前職はヨコハマの夜を仕切るポートマフィア、其れも歴代最年少幹部として共謀殺人138件、恐喝312件、詐欺その他625件。しかも見付かって居ないだけで其れ以上の犯罪を犯している可能性も在る程だ。
寶、太宰は性犯罪やら強姦やらだなんて、此の眼で死ぬ程、飽きる程見て来た。
勿論、交渉やらの為に自分がされる側だった時も有った。
其れを思い出して行くと、矢張り頭に浮かぶのは織田作之助の死。
織田作、と呼び、バーで一緒にお酒を飲み合う『友達』だった。
坂口安吾、太宰治、織田作之助。
其の三人で飲むのは、楽しかった。
どれだけ黒に塗れた世界でも、中身は子供だった太宰。
織田作の死を受け入れた様に見えて、未だ思い出すだけで泣きそうになって来る。
『織田作、君が云った“善い人”に、私は成れて居るだろうか。』
ふと心の中で呟いた瞬間、渚の声でハッと意識が戻ってくる。
「先生?」
「…嗚呼、すまないね。少し昔の事を思い出して仕舞って。」
「……」
此の時、渚は如何思って居たのだろうか。
潤む視界で、迚も顔を見る処か、自身の顔を上げる事すら出来無かった。
太宰治。
二十歳から前の経歴は無し、ポートマフィア五大幹部の中原中也とは信頼関係を築く間柄。
趣味は自殺、好物は蟹缶、酒、味の素。身長百八十一糎、体重六十七瓩、血液型AB型、誕生日六月十九日、嫌いな物は犬と中原中也、異能力者で在り座右の銘は清く明るく元気な自殺。
何とも風変わりなプロフィール。
其処からも太宰治が普通で無いと解る程。
太宰治は恐怖の対象にも頼れる存在にも成るよく分からない立ち位置に何時も居る様な気がする。
此の中で太宰治を怒らせてはいけないと云う事を理解して居るのは旧校舎の教員と椚ヶ丘中学校の学長だけである。
太宰治を怒らせてはいけない理由。
一つ、圧倒的な頭脳と策略に置いてはポートマフィア首領に次ぐか、並ぶかのレベルで在る事。
一つ、人心掌握術に長けており、誰を使われるか解らない事。
一つ、銃の扱いは千葉龍之介や速水凛香以上で在る事。
一つ、中原中也との二人組、『双黒』は敵組織を一夜で潰す程の強さを誇る事。
……等、此の事から教員等も敵に回す冪では無いと判って居るし、相棒で在る中原中也からも忠告を一度される程の腹黒さと圧倒的頭脳を持っている太宰治は怒らせてはいけない者とされている。
〜〜
少し遡る事、自己紹介をした後。
「あれ?業じゃん。久し振り〜」
「久し振り。…へぇ〜、随分変わったんだね。『友達』のお陰かな?」
「まぁね。元気してた?」
「そりゃあもう。そっちも元気そうで何より。」
「…そう云えば……今日君の家行っていい?」
「ん〜?良いよ?」
何時の間にか赤羽の隣に行った太宰は耳元で何かを囁いて其れを聞いたカルマはにや、と口角を上げて応える。
「……太宰、其奴との関係は?」
「ん?嗚呼、後で教えたげる。殺せんせー、赤羽くん連れて行きますね〜」
「わっ、何でここでお姫様抱っこ…!?」
「持ちやすいし〜♪」
……と、其の後イチャイチャして居るのを殺せんせーに目撃されマッハで連れて行かれ、珍しく大人しくしていた。
おまけ(太カルシーン)
「はぁあ……二年ぶりくらいかなぁ、業充電出来るの……」
「ちょっと、こんな処で辞め、」
「良いでしょ?二年ぶりなんだから、」
太宰がぎゅぅ、と赤羽に抱き着き、服の中に手を這わせる。
「ほら、此処とか、」
「っ、それは、だめ、やるのは、おれの家にしよ、?」
「…あぁ、ごめん、でもキスならいいでしょ?」
「それなら、別に…」
そう云われた後、ちゅ、と口付けをする。
太宰が触れるだけのキスを何回かした後、舌を入れるキスをする。
「んっ、ふ、んむ…♡」
静かな山奥に響く赤羽の喘ぎ声と舌が絡まる音。
其れが迚も扇情的で、つい太宰はキスを激しくし、赤羽の腹を撫でる。
「んぅ、♡ぅ、…♡ぅむ、♡♡」
赤羽は気持ち良さで眼を蕩けさせ、顔を赤らめる。
「ん…かぁわい、」
「っ、」
赤羽が赤面して云った其の呟きは、誰の耳にも届く事は無かった。
『もっと、』
コメント
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とっっっっっっっっても癖に刺さりまくってエイリアンになっちゃった(?)
ちなみに太宰さんと中也さんが朝一緒の空間に居るのは任務のために同棲しております ちなみに太中太ということで太中でも中太でも無いけどそこの𝖼𝗉はデキてる(カルマとの付き合いは中也公認のため問題無し)