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処刑されてしまった
お散歩中に拉致られて何処かわからない牢の中に入れられてしまった主。
どこで恨みを買ったのか、悪魔執事の主というだけでこの仕打ちなのか、よく分からないままとりあえず出してーと叫んでみるのだった。
しばらく煩く騒いでいると、見張りの人が来て「煩いぞ、少しは静かにしろ」
と言われたので
『こんな所にいきなり連れてこられて静かにしている方がおかしいだろ!』
とキレたらやれやれといった様子で何処かに行ってしまった。
くそっ、鍵を強奪してでも逃げたかったのに・・・
主は舌打ちをして、また誰か来るのを待った。
夜になってしまった。
執事達は心配しているだろうな。
もしかして、執事達に何かあってここに連れてこられたとか?
まさか、人質にされて執事達は酷い目に遭わされていたり?
ネガティブな思考が止まらなくなり、主は少し涙を流した。
朝になり、警備の人が来てパンと水を置いていってくれた。
喉がカラカラだったのでありがたく水差しの水をグラスに移してごくごくと飲んだ。
しばらくすると、でっぷりと太った見るからに嫌な貴族がやってきた。
「やあ、悪魔執事の主。私は〇〇家当主の□□という。パーティーで会ったことがあるかもなぁ?」
『何の御用で?』
「お前の我が家に対する無礼な言動の数々、万死に値する!よって、お前を処刑することにした!」
『はぁ?』
「それとも、執事達に代わってもらうかね?」
『いいえ!私が死にます!』
「よろしい。では、明日までゆっくり心の準備をしておくのだな」
貴族は去っていった。
主にとって、死体が打ち捨てられる処刑という死に方であれば復活しても問題ないためありがたい。
一番嫌な処刑方法は金属製の牛の中で炙られ続けるやつと、水の中に沈められるやつである。
復活しても苦しみ続けることになるのは逆に地獄だ。
一方、執事達は主が行方不明になったことと、屋敷に届いた招待状について話し合いをしていた。
招待状には主を処刑すること、その場所に案内するから明日の正午にエスポワールに近い開けた場所で待てというものだった。
「これは・・・悪趣味な嫌がらせでしょうか・・・?」
「しかし、主様が攫われたとなると本当に処刑される可能性も・・・」
「兎に角、フィンレイ様に連絡をいたしましょう」
話を聞いたフィンレイは渋い顔をした。
「困ったな、その貴族は色々トラブルを起こしていてね・・・。
そうだ、この際君たちで片付けてくれないか?勿論依頼として金も出そう」
「畏まりました。
貴族の方はどうなっても構いませんか?」
「ああ、好きにしなさい。
あと、屋敷内に悪い薬の取引ルートの手がかりがあるかも知れないから調べてくれ」
「はい、ありがとうございます」
という訳で、フィンレイにも好きにして良いと許可をもらったため執事達はいそいそと準備をして明日に備えた。
そして処刑当日。
執事達は荷馬車に詰め込まれ、処刑場に連れて行かれた。
皆処刑が始まる前に貴族を仕留めて主を救い出そうとしていたため、武器をその手に握り込んでいた。
到着して処刑場に入った瞬間、ガシャンと大きな音がして何かが転がるような音が聞こえた。
全員が見たのはギロチンに掛けられた主と、落ちている刃、そして転がった首だった。
執事達は処刑場の上で高笑いしている貴族を高速で縛り上げた。
ここで殺してやってもいいが、痛めつけて殺してやりたくて仕方がなかったのだ。
貴族を荷馬車に放り込み、屋敷を荒らして金目のものと資料を奪い、主のもとに戻った。
主はギロチンの横に寝そべって首を押さえていたのでまだ完全にくっついていないらしい。
「主様・・・」
『あ、皆!来てくれたんだね!ありがとう!
もうちょっとでくっつくから待ってくれる?』
執事達に気づいて明るく声を掛ける主の目から涙が落ちていく。
『あはは、あの野郎、皆は来ないって・・・
お前は見捨てられたんだって、言ってさぁ・・・
嘘に決まってるのに、私、来てくれなかったらどうしようって、悲しくなって・・・馬鹿みたいだなって・・・
皆は絶対来てくれるって分かってたのに、信じられなくて、ごめんね・・・』
「主様・・・っ!」
執事達は主の言葉に涙を浮かべ、主のもとに駆け寄った。
「いいえ!私たちがもっと早くお助けするべきでしたのに・・・主様の能力があれば大丈夫だと・・・」
『そう、だよね・・・私化け物だし・・・』
「主様!そんなこと言わないで!」
「主様はバケモノなんかじゃありません・・・だとしたら、私達だって・・・ねぇ?」
ラムリとラトが即座に主の言葉を否定した。
「そうだよ、私たちのほうが長生きな訳だし」
「・・・そうだな」
「ええ、そうですよ!」
「俺は寝てただけだけどね・・・」
ルカス、ミヤジ、ベリアン、ベレンがルカスに同意した。
『皆・・・』
「そんな悲しいこと言わないでください」
「俺達は貴女がどんな存在であれ、御守りいたします」
「俺達が好きでやってるんだ、気にするなよ」
「そうっす!主様が主様だから大切にしたいんっす」
フェネス、ハウレス、ボスキ、アモンが言葉を続ける。
「貴女様ほど心からお仕えしたいと思った方は居ません」
「俺のメシを美味いって食ってくれるだけで嬉しいんです」
「俺も、貴女じゃなきゃ嫌だ」
「俺も!貴女だから色々頑張ろうって思えるんです!」
ナック、ロノ、バスティン、フルーレが声を上げた。
「貴女以外にお仕えする気はありません」
「アンタが最初で最後の主様って言ったろ?」
「俺にとっては唯一の主様です!」
「・・・我が主と認めているのはお前だけだ」
ユーハン、ハナマル、テディ、シロが最後に言葉を紡いだ。
『ありがとう・・・っ』
主はポロポロと涙を流しながら何度も礼を言った。
馬車に乗り込むと、嫌な貴族が幽霊でも見たような顔をして主を見た。
「おっお前、さっきちゃんと殺したはずっ!」
『あ・・・どーするの、これ?』
「フィンレイ様に処刑していただくことにしましょうか。私達が殺しても反省なさらないでしょうから」
『そうだね』
貴族は散々痛めつけられた後、フィンレイに引き渡されて処刑された。
最後までその貴族は
「悪魔執事の主はバケモノだ」
という妄言を吐いていたが、執事達によって丁寧に否定されたので誰も耳を貸すことはなかった。
後づけ設定
・主が不老不死になった理由
千年前に主の世界で大戦争が起こり、魔術の被害を受けて偶然不老不死になってしまった。
もはや呪いの域である。
・屋敷にずっといる理由
自分と同類な人間と初めて会ったし、とても温かく迎えてくれたから。
執事達の役に立ちたいから。
・毎日のように死んでいる理由
誰かが近々死ぬ場所が分かるため、執事達が死ぬよりは自分が死ぬほうが何倍もマシだと自分から死にに行ってる。
しかし、それは可能性というだけのため確実に死ぬとは限らないし、鍛えてる執事達はそんなにヤワじゃない。
でも執事達が死ぬのが怖すぎて可能性は1ミリも残したくない主であった。
ちなみに、死ぬ場所を避ける能力も持ってはいるが今は封印している。