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藤の花が揺れる蝶屋敷の庭。
昼下がりの陽射しが心地よく、柱合会議のあと、珍しく柱たちが一堂に集まり、しばしの休息を取っていた。
縁側に座るのは、冨岡義勇と胡蝶しのぶ。
その横には、うたた寝する宇髄天元。
そして、少し離れて腕を組んで立っていたのが、不死川実弥だった。
「……なんで俺まで、こんなもんに付き合わなきゃなんねぇんだよ」
そうぼやく実弥に、しのぶが笑みを浮かべる。
「まあまあ。せっかくの晴れの日なんですから。たまにはこうして日向ぼっこもいいでしょう?」
義勇は黙って頷く。
宇髄はいびきをかきながら「ド派手に静かだな……」と寝言を漏らしていた。
実弥はふと、しのぶの隣に腰を下ろす。
最初はぎこちなかったが、ふわりと吹いた風に藤の花が揺れ、その香りに、つい深呼吸をしてしまった。
「……ん。いい匂いだな」
「え? いま、何か言いました?」
「言ってねぇ」
そう答える実弥に、しのぶはくすりと笑う。
そこへ、伊黒小芭内が実弥の後ろから静かに現れ、甘露寺 蜜璃が両手に団子を抱えて登場する。
「ねぇねぇ、みんなでお団子食べよっか! ほら、実弥さんにも!」
「いらねぇっつってんだろ」
そう言いつつも、蜜璃に勧められるがまま団子を一本取る実弥。
一口食べて、「……甘っ」と呟いた声を伊黒が聞き逃さなかった。
「気に入ったようだな、不死川」
「うるせぇよ」
風がまた吹く。
穏やかな、あたたかい午後。
戦いのない、ただの一日。
煉獄杏寿郎が現れ、明るい声で笑う。
「良い雰囲気だな! まるで家族のようではないか!」
「うるせぇ、誰が家族だ……」
ぼやく実弥の隣に、煉獄がどっかりと腰を下ろす。
「だが、俺はこういう時間が大好きだ。お前も嫌いじゃないだろう?」
……本当は。嫌いじゃない。
それどころか、少しだけ、心が軽くなる。
でも、それを口に出すのは、なんだか照れくさくて。
「……黙ってろ」
日が傾くまで、風柱は黙ったまま、団子をもう一本食べていた。
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こんな感じの短編多めです。