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スタジオ撮影中。
カメラマンの
「いいね、もう一回いこうかー」
という声とシャッター音が響く中、天羽そながライトの前に立っている。
衣装は少し大人っぽいワンピース。
さっきまでの無邪気さとは少し違う表情を見せていた。
「はいOK、一回休憩入りますー」
空気がふっと緩む。
そなが椅子に座って水を飲んでいると、雑誌のインタビュアーがさりげなく隣に来る。
「今ちょっといいですか?」
「はい、大丈夫です」
まだ撮影の余韻が残ったまま、少しだけ柔らかい声で答える。
「さっきの表情すごく良かったんですけど…ああいう雰囲気って、普段から意識してるんですか?」
「え、全然です(笑)」
照れながら首を振る。
「なんか、考えすぎると固くなっちゃうので」
「自然体なんですね」
「はい、多分」
インタビュアーが少しだけ距離を詰める。
「じゃあその流れで、恋愛の話ちょっとだけいいですか?」
「急ですね(笑)」
でも嫌がる様子はない。
「好きなタイプ、外見から聞いてもいいですか?」
「外見…」
ペットボトルを持ったまま少し考える。
「清潔感ある人がいいです」
「やっぱりそこ大事」
「あと、笑った時に優しそうな人」
「なるほど、今の表情とちょっとリンクしますね」
「え、ほんとですか(笑)」
「内面はどうですか?」
さっきより少し真面目な顔になる。
「ちゃんと話を聞いてくれる人」
「うん」
「あと、向き合ってくれる人がいいです」
「ケンカしても逃げない?」
「そうです。ちゃんと話せる人」
「恋をするとどうなります?」
「えー…」
ちょっとだけ顔を隠すように笑う。
「分かりやすいと思います」
「例えば?」
「その人のこと、よく話しちゃうと思います」
「それもう好きな人いる人のやつですよ」
「いないです(笑)ほんとに」
でも否定がちょっと早い。
「告白はするタイプですか?」
「基本は待ちたいです」
「でも?」
「でも、待てない時はすると思います」
「おお」
「ちゃんと伝えたいので」
そのまま自然に続く。
「恋人にしたい条件、3つ挙げるとしたら?」
そなは少し空を見て考える。
「えっと…」
「嘘をつかない人」
「うん」
「ちゃんと向き合ってくれる人」
「やっぱりそこ大事なんですね」
「大事です(笑)」
「あと…」
少しだけ声が柔らかくなる。
「一緒にいて安心できる人」
スタイリストが
「そなちゃん、次の衣装いけそうですー」
と声をかける。
「はーい」
返事をしつつ、インタビュアーに少し体を向ける。
「最後に、どんな仕草に惹かれます?」
立ち上がりながら、少し考える。
「さりげなく気遣いできる人」
「具体的には?」
「何も言わなくても気づいてくれる人とか」
少し笑う。
「あと、“無理しなくていいよ”って言っ てくれる人」
インタビュアーが思わず小声で言う。
「なんか全部リアルなんですよね」
「理想です(笑)」
歩き出しながら振り返る。
「でも、そういう人いたら好きになります?」
一瞬だけ立ち止まる。
振り返って、ちょっとだけ困ったように笑う。
「…なると思います」
「はい、そなちゃん入りまーす!」
スタッフの声に呼ばれて、またライトの中へ戻っていく。
さっきまで恋愛の話をしていたとは思えない顔で、カメラの前に立つ。
モニター越しに見ていたスタッフがぽつり。
「これ、絶対誰かいるよね」
別のスタッフが笑う。
「でも嫌な感じしないのすごい」
シャッター音がまた響き始める。
その中心で、天羽そなは何も変わらない顔をしていた。
でもさっきの会話だけが、少しだけ現実味を残していた。
記事公開から数時間後。
「天羽そな、撮影中に語った恋愛観」
が切り抜かれて、SNSに一気に広がる。
最初は軽いノリだった。
「清潔感あって優しい人好きとか、王道すぎて逆に良い」
「“安心できる人”って言えるの大人すぎる」
「この子ちゃんとしてるな…」
でも、例の部分が切り取られた瞬間、空気が変わる。
> 「その人のこと、よく話しちゃうと思います」
「待てない時は自分から告白するかも」
「いやこれ経験者の発言だろ」
「“いないです”の否定早すぎて逆に怪しい」
「絶対今好きな人いるやつじゃん」
一気に
“彼氏いる説”
がトレンド入り寸前まで広がる。
さらに火をつけたのはここ。
> 「一緒にいて安心できる人」
「無理しなくていいよって言ってくれる人」
「具体的すぎるんよ」
「これもう誰かのこと思い浮かべてるでしょ」
「理想じゃなくて“今の相手”じゃない?」
一方で、擁護や好意的な声もどんどん増える。
「別に彼氏いてもよくない?」
「むしろちゃんと恋愛してそうで好感」
「この恋愛観は普通に好き」
「変に隠さない感じいい」
少しずつ、空気が変わっていく。
“疑い”から、“納得”へ。
-
「なんか、いい恋愛しそう」
「大事にされてそうだし、大事にしそう」
「こういう子なら応援できる」
そして、ある投稿がバズる。
「天羽そな、“恋愛してそう”じゃなくて“ちゃんと恋愛する人”って感じがする」
その一言に、共感が一気に集まる。
いいねの数が伸び続ける。
最終的に一番多かった反応は、これだった。
「彼氏いるかどうかより、この子の考え方が好き」
トレンドからは少しずつ落ち着いていくけど、
名前を検索するとまだ残っている関連ワード。
「天羽そな 彼氏」
「天羽そな 恋愛観」
そして、そのどれを見ても、少しだけ同じ結論に寄っていく。
「なんか、すごくちゃんとしてる子」
画面の向こうで笑っていたあの空気が、そのまま伝わったみたいに。
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ぶれん