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ツイステ腐

3 - フロリド2

♥

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2023年03月18日

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全部壊しておくれよ。

フロリド  いちご飴

「っ、金魚ちゃん!!!」

ばた、と扉を押しのけて入ってきたのはフロイドであった。普段であれば、放課後のハーツラビュル寮は静まり返っているのだが、今日ばかりは違っていた。それはひとえに、寮長が不在だからである。ざわざわと騒がしい喧騒を抜け、フロイドは奥へと歩んでいく。何度か訪れた寮長室のドアノブに手を掛けると、その手に重ねられる手が1つ。

「っ…ウミガメくん…」

「今はやめて貰えないか?まだ熱が高いんだ」

何ら変わりのない笑みを浮かべ、フロイドを制する。そんな様子は、余計にフロイドを苛立たせた。

「金魚ちゃんが具合悪いって、ホントなの」

「嗚呼、本当だ。暫くは、学校も休ませようと思ってる」

「っじゃあ!!」

「会いたいって言うのか?」

「っ、」

トレイは不快だった。大人びているとはいえ、彼もまた18の高校生なのだ。幼馴染を傷付けられ、黙っていられる訳が無い。

トレイはリドルの幼少期における苦悩を知っていた為、誰よりも彼を尊重し、支えたいと思っていた。そうするうち、リドルがフロイドに持つ感情に、ある程度勘づいていた。そして、陰ながら応援していた。その際、自身が抱く劣情を自覚せざるを得ず、それでもリドルの事を貴んでいた。

だからこそ、不用意にリドルを傷付けたフロイドを、認められなかった。たとえ故意では無かったとしても、だ。自分ではいけないのかと思うほど募っていた黒い感情も、彼をこの行動に導いたのかもしれない。

「少し、傲慢なんじゃないか?」

「は?どういう意味?」

「リドルに法律は“どうでもいい”なんてことを言って、リドルがショックを受けないと思ったのか?」

「ちがッ…それはッ、!」

「なんだ?言い訳なら聞くぞ。最も、納得はしないだろうが」

何も言い返せない。ここで、リドルだって同罪だと叫べば、きっともう二度と彼には触れられないだろう。自分がトレイだったら絶対にそうすると、フロイドもそう思うからだ。ぐ、と唇を噛み締め、トレイを睨みつける。

「…今は、帰ってくれ」

心底落ち着いた声色に、フロイドはもどかしくなった。ドアの向こうに、思いを伝えたい人がいるというのに。自分の言動で、姿を見ることさえ叶わなくなるだなんて。

「また、追って連絡するな」

「っ、え」

振り返ると、穏やかに笑みをたたえたトレイがいた。

「ケイトが心配していたぞ?あのまんまで大丈夫なのかって。だから、俺もできる限りの事はする」

「……ありがと、ウミガメくん」

「礼を言うのは、付き合ってからにしてくれよ」

「付き合っ……ウン、…頑張ってみる、俺」

あぁ、と言いながら、トレイは思う。フロイドなら、リドルの心を癒してやれるのかもしれない。自分には無いものを圧倒的に持った彼を前に、トレイは立ち尽くすことしか出来なかった。

は、と我に返り、フロイドが既に去ったことを知る。後ろ手で寮長室の扉を開き、ゆっくりと中へ入った。こんなことをしていると、いつもなら戒めの声が飛ぶ。だが、生憎声の主は寝ているので、何も心配はないのだった。数歩進むと、彼が病に喘ぐ声が聞こえてくる。静まり返った寮長室だった筈だが、酷く掠れた呼吸音が、やけに響いていた。前言撤回、声の主は起きていたようだ。体調は万全とは言いづらい状況ではあるが。

「…リドル、大丈夫か?」

苦しげに揺れる背を撫でると、まだまだ高い体温が伝わってくる。呼吸が、ひ、と引き攣る度、ぼろりと涙が頬を伝う。どうやら意識は朧なようで、呼吸が落ち着くと落ちるようにして眠ってしまった。ここまで苦しそうなのは、何時ぶりだろうか。幼い頃は母に叱られる度泣いていたが、そんなことも少なくなった。我慢を覚えたまま成長してしまったが故、自分の限界が分からないのだと、トレイは検討をつけていた。

自分が、痛みを全て変わってやれたら。

自分が、彼を十分に癒してやれたら。

そんなことを思いつつ、小さな躰を胸に閉じ込める。今は、俺だけのリドルだから。


ー時間は過ぎ、夜中ー


リドルは、くるくると回る世界に難色を示していた。母やフロイド、そして自分の声が、ぐちゃぐちゃと脳内を掻き乱す。それは罵声であったり、リドルの邪心を煽るようなものだったり様々だ。けれど、リドルが感じるのはただ一つ。

煩い。

きぃん、と耳鳴りがする。音が反響しあってハウリングしているのだ。ただでさえ頭痛がするのに、先程から痛みが強くなっている気がする。

薬が効かない。トレイが飲ませてくれたのに。なんでだ。

決まっている、これがウイルス性のものでは無いからだ。メンタルがやられて引き起こされた現象は、薬で治らないから厄介だ。

ストレスはそこここに転がっていた。フロイドの言葉はショックだったが、ただのキッカケに過ぎない。と、本人は思っているが、実際はかなり影響を及ぼしている。自分の心の支えにしていたものを、“どうでもいい”と一蹴されてしまえば―――それが大切な人だったら尚の事―――誰だってショックを受けるものだ。リドルは、そのショックと逃がし方を上手く知らなかった。言葉を言葉通りに受け止め、消化しきれなかった。

じぶんのせいだ。

焦燥、自己嫌悪、悲観。息が出来なくなる。間違った自分は要らないのだろうか。もう、用済みだろうか。自分を冷たく見下ろすフロイドは、容易に想像出来てしまう。それがどうしても苦しかった。

いやだ、そんなめでみないで。やさしくして。いつもみたいに、よんで。

くるり、くるり。思考が回転する。呼吸が不規則にズレていく。あれ、息が吸えない?どうして、?胸を抑え、必死に深呼吸を試みるも、空回りしていく。視界の四方が弾けだした時、確かな中低音が耳に届いた。

「……金魚ちゃん、」


)))長い、(ぴぇ、

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