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gt.side
「…んぅ………。」
しまった。どうやら眠っていたらしい。
あの後二人の会話はどうなったのだろうか。
興味と多少の心配を抱えて俺は顔を上げた。
───────────
「あれ?」
顔を上げると、その個室からはアルコールの匂いが少し漂うだけで二人とも居なかった。
俺は…まさか置いて行かれたのか…。
そんなことを考えていたときだった。
「あ、ガッチさん。」
「うっしー…」
「起きた?」
「いやぁ…ありがとうね。」
まだ残っていたうっしーは俺が起きるのをわざわざ待っていてくれていたらしい。
それよりも一つ、疑問があった。
「ねぇ、うっしー。」
「キヨは?」
─────────────
「あー…」
バツの悪そうな。けど、幸せそうな。
そんな表情で照明を彼は眺めていた。
「アイツ…行ったよ。レトルトの所。」
「…もう、見てるこっちが恥ずかしいし、幸せになるくらいの気づき方だったよ。」
「そっか。」
その一言しかこの状況には見合わなかった。
その情景がぼんやりと目に浮かぶから。
「…気づけたからって…これからアイツどうするの?」
「あ」
その瞬間うっしーの顔が青ざめていく。
「なんも…話してねぇ…。」
「え……。」
───────────
机の隅っこに放置されていたカラカラと乾いている枝豆をゆっくりと口に頬張る。
本当にアイツは何も考えずに行ったのか。
それともしっかりと考えて愛する人の元へと向かったのか。
否、答えは後者に近いだろう。
流石に何も考え無しに飛び出して行くのはキヨはしないはずだ。
恋愛のことに関しては随分慎重だから。
その事を俺はよく知っている。
「何か言っていかなかった?」
「………!」
「これ…だな。」
うっしーは薄く油が染みている箸の袋を俺の前に出した。
「これ」
今のタイミングで出すと言うことはキヨが何か書いていったのだろう。
その綺麗におられた袋をめくる。
俺は目を見開いた。
うっしーもその様子を見てその紙を覗き込む。
うっしーは口をあんぐりと開けた。
────────────
『俺はね、あの人のことが好きらしいです』
『なので振り向いて貰えるように甘く、優しく接してやります』
『俺は恋愛ゲームもあの人より強いので負ける気がしません』
「ふふっ…」
まるで俺達に語りかけているような感じで書いているかと思ったら、ラジオのようなノリで書かれていた。
「あー…負けたなぁ…。」
「キヨが一枚上手だったなんてなぁ…。」
笑いを必死に堪えて気持ちを代弁してくれた。
「そうだねー…。」
今頃キヨは上手くやっているのだろうか
あれ…?けど…夜じゃない?
「うっしー今何時」
「え?」
「23:30」
「あ…。」
どうやらうっしーも気づいたらしい。
さっき行ったのか…?!
レトさんなら起きてるとは思うけどもうすぐ深夜になるぞ?!
「あいつ…抜けてんなぁ」
「うん。ほんとに。」
キヨはきっと、「レトさんなら別にいい」
「怒らない」
「呆れても許してくれる」
なぁんてことを思っているのだろう。
事実だけどそれをあまり自覚しないで行動に移しているのが若い奴らの怖いとこだなぁ…
俺はその手紙もどきをポケットに突っ込んだ。
そして、いつものメッセージアプリを起動する。
『がんば』
その三文字だけを送信した。
二人が幸せになってくれるように思いを込めて。
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