次の日、学校に行って教室に入ると加藤さんが「飯森さんおはよ~!今日調理実習だね!」と挨拶をしてくれた。
「おはよー…調理実習…?」
調理実習があるなんて聞いてない。
「あれ?もしかしてエプロン忘れてきたの?」
戸惑っていると加藤さんが驚いた顔で言ってきた。
「うん…今日が調理実習なのも知らなかった」
「ええ!?帰る前に先生が言ってたよ」
そういえば、帰る前は先生の話を聞かずに寝てたことを思い出した。
調理実習は1、2時間目にある。
焦ってシナモン女のいるクラスに行った。
「いいもりかもりもり!」
「もう、その呼び方間違ってる!」
私に気づいたシナモン女が小走りで私のところに来た。
「エプロンと三角巾貸してくれない?」
「ごめん持ってないわ」
どうしようと本気で思った。
前から調理実習があるのは知らされてたから楽しみにしてたんだけど…
「あ、でも、神原が今日間違えて持ってきたらしいよ」
シナモン女はまた悪戯っぽく言ってきた。
「ええ…でも話したことないし貸してもらうのはなぁ…」
「神原ー!ちょっとこっち来て!」
シナモン女は私の言うことを無視して神原を呼び出した。
「なに?」
「この子、飯森夕唯がー、エプロンと三角巾貸してほしいんだってー」
目が合うと神原は一瞬驚いた顔をしてすぐにエプロンを取りに行ってくれた。
振り返ったとき、神原の顔が赤く見えたのは気のせいかもしれない。
「あ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
横目でニヤニヤしているシナモン女を見ながらお礼を言って、すぐに教室へ戻った。
神原の身長は私より高めで、顔はすごくイケメンだった。
「あ…神原に貸してもらったんだ…」
加藤さんがまた話しかけてくれて嬉しくなる。
けど、様子がおかしいことに気づいた。
「神原って…加藤さんの友達?」
「あ、ごめんね。いや神原って結構イケメンとかで有名じゃん?」
有名だなんて知らなかった。そんな人が私を好きになったんだと思うと改めて恥ずかしくなる
「あのさ、気をつけた方がいいよ」
なぜか加藤さんは周りを気にして、心配した顔でそう言ってきた。
「神原さんに好意を持ったり、話してたりしたら、あの女子に目付けられるから」
今度は声を小さくして言ってきた。加藤さんが見ている方を見ると、クラスで1番目立つ女子、いわゆる一軍女子が居た。
「まじでやばいよねー」
「それなー」
ほぼ「やばい」「それな」しか言っていない会話を聞きながら加藤さんに聞く
「え、どういうこと?」
加藤さんが口を開いたその時、教室のドアが空いた。
「遅れましたーって…みなさん、席に座ってください!」
先生が遅れて教室に来た。
そのせいで、加藤さんにその話を聞くタイミングを逃した。