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心傘

2 - 第2話 傘

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2024年04月11日

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「とわー!」

いきなり自分の名前が呼ばれてビクってなる。いつものことだ。けど全然慣れない。自分の名前を大声で呼ばれるのはあまり好きではない。

「どうしたん?華夜」

こんなふうに大きな声で呼んでくるということはいいことでもあったのだろう。華夜は幼稚園から一緒のまぁ幼馴染って言うものだ。幼馴染の定義はあまりわからないけれど。

「あのね、あのね、大ニュース!うちの好きな人の好きな人がうちだっただって!めちゃくちゃ嬉しいよー!これって運命ってやつ?」

「よかったね、んじゃカラオケでも?」

「行っちゃいます!」

運命、奇跡、そんなものはない。そんな言葉は信じてない。くだらない。

と言うより信じたくない。そんなものがあったて・・・

まぁそんなのこと有頂天になってる華夜には絶対言わないけど。





「今日はいっぱい歌ったねー!」

「そうだね」

そう答えた時私は急にトイレに行きたくなり、華夜に代金を渡し、トイレへ向かった。

トイレから出た私は酷いことを考えていた。

このまま華夜のところには行かずどこでもいいからフラフラしようかな、、、

駄目だ。そんな酷いことしちゃ・・・華夜を傷つけるかもしれない。

でももう遅かった。そう思った頃には華夜にメッセを送っていた。

『ごめん、久々に旧友と会ったからちょっと出かける🙏』

何が旧友だ。私の友達は幼稚園から一緒の華夜ぐらいだろうが。

嘘だって見抜いていたかも知れないけど華夜は心よく返事をしてくれた。

『OK OK 楽しんできなよー👋』

なんだか申し訳なってくるな。お人好しにも限度があるわ。いつか変な人に騙されないかな。なんて心配をする。まぁどうせあいつは家に居ないんだからフラフラしてても大丈夫だよね。


夜の街って憧れるけどあんまり楽しくないのかも知れない。

1人で来ているからそう感じているだけでもしかしたら楽しいのかも知れない。けれど今の私には到底楽しいとは思えなかった。

歩くのに疲れた私は路地に座り込み顔をうずめた。

そんな時、雨が降り出した。私は天気予報なんて聞いていないので傘なんて持っているわけがない。いっそ此処で風邪引いて死んじゃおっかな。

もういいや。何かが足りない。その何かが欲しい。でも何かがわからないのだから諦めるしかないのだろう。でも私は死んではいけない。だってアイツがいるから。私はアイツから大切な人を奪った。だから償わなきゃいけない。

どんなに苦しくても辛くても私は死ねないんだ。もう嫌だな・・・

きっとこのままでいれば風邪を引くだろう。だけど動く力もなくてしんどくて心に雨が降ってるみたいだ。

そう思った時、身体的に降っていた雨が止んだ。その瞬間

「大丈夫か?風邪引いちまうぞ」

なんて声が聞こえた。あぁ、雨が止んだんじゃなくて私の頭の上に傘があったのか。なんて今頃理解する。声の主を見てみればくしゅんとくしゃみをしていた。あの人の方こそ風邪をひいてるんじゃ?なんて思う。

傘が邪魔で顔は見えないけれどきっと優しい顔してるんだろうななんて思う。

「さっさと家に帰れよ。じゃないと変な輩に喰われるぞ?」

なんて言いながら彼は去っていった。

心が寒いはずなのに温かい。いや温かいなんてそんな生温い言葉では表せないほど私の心は熱かった。これを人はなんというのか。その答えは簡単に見つかった。『恋』だ。いつもならばどうでもいいとほったらかす感情に名前をつけたくなった。私には似合わない言葉だなってしみじみ思う。

この日私は誰かもわからぬ人に恋をしたのであった。

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