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「ウェン、すき、可愛い」
なんでこうなったんだろう。始まりは僕からだったっけ。
ただ、皆で飲み会楽しんでただけなのに。
_________
「これからどうする?」
任務終わり、マナがホコリを落としながら問いかけた。
なんでも、久々の東西集合だから何かしたいということらしい。
僕はもちろんなんでも良し。リトテツ、るべしょーも賛成。
ライはもちろんノリノリで。ロウは相変わらずしかめっ面。
カゲツきゅんは悩んだがOK。ということで8分の7が
賛成したのでロウは強制だった。
「何したいとかある?」
「おれ、ニキの料理食べたいです」
ライの問いかけにるべしょーが間髪入れずに答える。
わざわざ僕の料理を食べたい。じわじわと顔が熱くなって
嬉しさが込み上げてきた。嬉しい。普通に嬉しい。
「あ、ニキ照れてます?可愛いですね」
なんて、るべしょーは相変わらずか。
どうしようと悩んでいれば無理はしなくていいと言われてしまった。
断るにしても、流石にそれは申し訳なくて渋々の承諾だった、
普段なら良かった、普段なら。でも、今回は別だった。
緊急要請に慌てる毎日で片付けの済んでいない部屋だ。
あまり、他人を招き入れるべきでは無い。
「…僕んち汚いけど、それでもいいなら、」
「全然いいです!むしろ、ニキのもの触り放題!」
僕の言葉に食い気味に反応するるべしょー。
言ってることは犯罪級にやばいけど。
「ほんなら、拠点行って、それからウェンの家やな!」
マナの明るい掛け声を皮切りに各々が散らばった。
「お邪魔しマース」
玄関を開けるといつも以上に汚い部屋だった。
服こそ散らばってはいないが、
空き缶や空き 瓶などが出っぱなし 。
やけ酒でもしたのか聞こうとしたが
流石にド直球は避けられるのでやめた。
慣れた手つきで台所に立つウェンの姿を隣の狼は
愛おしそうに見つめている。きっと、夫婦みたいだなとか
勝手にひとりで感じているんだろうな。
一方るべは、ウェンへの愛が爆発したらしい。
持参していたであろうエプロンを付けて一緒に料理をし始めた。
明らかにロウの顔面が不機嫌になる。
「せっかくだから皆僕んち泊まっていきな?宅飲みしたいし」
ウェンの背中越しに聞こえた声には、普段ない甘さが込められている。これにはテツも感涙したのか、身震いしている。
きっと、ウェンくんはお母さんだ!とでも思っているのだろう。
そんな中動き始めるライとマナ。やっぱりしっかり者だ。
ウェンの家の構造は俺がいちばん詳しい。良く寝泊まりしている。
布団の置き場も知っているから、同伴した。
バタバタと3人の足音が遠ざかっていった。
「あ、ニキ。これどうですか?」
わざとあーんをしてみると、ニキは純粋に食べる。
「ん!!るべしょー天才! 」
とニキから大袈裟な反応が帰ってくる。チラッと後ろを見れば
ものすごい怖い顔をした狼が睨んでいた。
臆病な狼は嫉妬することしか出来ないのだろう。
布団を出したらしい3人が帰ってきた。テツ、カゲツ、小柳くん
この3人の不思議な雰囲気に圧倒されている。
テツは深い考え事、小柳くんは嫉妬、カゲツは間抜け面
その空間はあまりにも異様だったんだ。
「るべしょーるべしょー」
考え事をしていると少し低い位置から声が聞こえた。
振り返るとすぐそこにいてびっくりする。
「お皿出してくんない?」
と上目遣いでお願いされてしまえば断る術はない。
もちろん、と軽く笑いかけるとニキは嬉しそうにした。
可愛らしい。俺がお皿を取りに行った時、小柳くんが立ち上がった。
ロウくんが立ち上がったなと思うと、ロウくんはウェンくんに
抱きついた。ロウくんがウェンくんを好きなのはみんなが
知っている事だった。が。こんなに大胆なことはしない人間だ。
それに、ウェンくんも驚いている。
「ろ、ろお?どうしたの」
でも、そんな様子は意に返さずロウくんは
ウェンくんの 首筋に顔を埋めた。
その光景に口を出すものは誰もいなかった。
理由は明確で、聞くまでもない。2年も共に過ごしていれば
彼らの特性など完璧とは言わずも、ある程度はわかる。
リトくんが見て見ぬふりでるべくんの方へ手伝いに行く。
相変わらず気が使えるところに感激した。
ライくんとマナくんはニヤニヤとこの光景を見つめるばかり。
カゲツくんはウトウトしてて、気づいていない様子。
なんとも言えない異様な光景に俺も黙るしか無かった。
向こうの方から同様の声が聞こえてくるが、
助け舟を出す気にはならなかった。しかし、声が止んだ。
俯きかけていた目線をあげればキスされそうになっている。
流石にそれはストップと言わんばかりに人が集まる。
寝かかっていたカゲツくんも目を覚ましたみたいだった。
ロウくんをひっぺはがすと同時、ウェンくんはいつもの声で
「ご飯できた!」と笑顔で言った。あまりの不抜け具合に
その場の空気が和んだ。
ウェンとキスできそうだったのに止めに入られた。
あともう少しで、俺のものにできたのに。
それなのに、危機感持たずウェンは腑抜けた声で言うもんだから
流石に愛しいが勝つか。お預けを食らったが、ウェンの
飯が食えるのだからチャラだ。大人しく席に着けば
星導と宇佐美、ウェンの3人が料理を次々と運んでくる。
並べられる様々な品々に全員がヨダレを垂らす。
嬉しそうに料理を提供したかと思えばウェンは笑顔で何やら
探しに行った。先に食べてるぞと各々が口に含み出す。
次々とあがる絶賛の声に微かに赤くなった耳が見えた。
少ししてからウェンが両手に酒やらなんやらをかかえてやってきた。
メガジョッキにウイスキー、炭酸。それから、ノンアル缶
日本酒、ほろ酔い、コーラ、オレンジジュース。
すげえ量を両手に必死に抱えてくるもんだから危なっかしくて
反射的に席を立ち上がって助けに入る。
ありがとう、と太陽顔負けの笑顔を見せられれば
恋に落ちるのは当然かと納得。星導も浄化されている。
やはり、こうなったか。あれから3時間飲み続けていた。
テツや、マナ、るべは半分抑えているのもあって
然程酔ってはいない。
カゲツとリト、俺もジュースしか飲んでいないので大丈夫。
問題はウェンとロウだった。ロウは酔わない飲み方を知ってると
言っていたから安心していた。が、しかし、酔わない飲み方を
しているから酔っていないだけで普通に飲めば酔うということだ。
そして、今回ロウは嫉妬に駆り立てられていた。
ほとんどヤケ酒だったのだろう。何度も何度もウェンと同じ
飲み方を繰り返し最終的に出来上がった。
そして、完成したのが
「ウェン、すき、かわいい」
こんなやばい甘々の男だってワケだ。
ロウは顔面も良ければ性格もよしな男だ。モテる。
そして、ウェンはマナと同じ立場の人間だ。同期推しなのだ。
つまり、ここから導き出せるやばさってのは、
ウェンはロウの顔面の良さ諸々で倒れる可能性があるって話。
耳元で囁かれたらたまったもんじゃないと公言済み。
これは、長い攻防戦になりそうだ。
ひとまず、このままおっぱじめそうだったのでリトに
一旦ロウを気絶たせてもらった。ウェンは酔っていないようで
相変わらずハイボールを作っては飲んでを繰り返している。
ウェンの綺麗な瞳がたまにこちらを向く時、ドキッとする。
リトがウェンの髪を乱暴に撫でると、嬉しそうに笑う時に
見える赤色の舌がウェンの蒼の瞳とのコントラストで綺麗見えて。
俺も相当な場面に当てられて気が動転してるみたいだ。
冷静を装って、その場の空気に流れることにしよう。