毎年、僕の住む地域では風鈴祭というお祭りが開催される。
その日もいつもと同じように風鈴祭に来ていた。
様々な屋台が出ており、名前の通り風鈴が全ての屋台に付けられていた。
風鈴祭のときには必ずと言っていいほど風が吹く、そして、風に揺られて神社全体からリンリンと心地よい風鈴の音が鳴り響く。
しかしながらその時だけは風鈴の音に混じり、別の鈴の音が聞こえてきた。
その方向は、神社の境内の中からだった。
その時は友達と共に風鈴祭に来ており、友人に音が聞こえるか聞こうと振り返ると周りには、屋台のみが残され、無人の空間が拡がっていた。
僕は得体のしれない恐怖に煽られ、辺りの散策を始めた。
どこを見渡そうにも誰も居ない、家に1度戻ろうと思い鳥居を目指す。
鳥居から出たと思ったその瞬間、目の前には境内から見た屋台の並ぶ光景が広がった。
一体、どういうことか、そう頭を悩ませていると。
風鈴祭の風鈴の音と違った、鈴の音が響き始めた。
リンリンリンリンリンリンリン…
異常に長いそして、止む気配の無い風鈴の音。
しばらく恐怖に打ちひしがれ、境内の隅で顔を埋めていた時、声が聞こえ始めた。
顔を上げると、人の形をした者達が無人の屋台を楽しんでいた。
自然と恐怖心は消え失せ、安心感を感じ始めた。
もう、出なくていいや。
そう思考が働き始めたとき
リンリンと聞き慣れた風鈴の音が聞こえ始めた。
その時、はっとした。
何故、あのような思考になったのか今となっては分からない。
風鈴の音に導かれるように森へと入ったとき、目の前が暗くなった。
目が覚めた時には、境内の中で神主が見守っていた。
話を聞くと、森の中で倒れていたのだと。
これまでの事を神主へと話したとき、神主は驚いた顔もせず、納得した様子で聞いていた。
神主は話を聞き終えた時、口を開き始めた。
この風鈴祭は、風神祭と言われていた。
この神社では風神様を祀っているのだと。
そして、風鈴祭で聞く風鈴の音とは別に風鈴の音が聞こえた者は、神の世界、常世へと導かれるのだという。
導かれる理由としては、風神様は人を呼び常世の風神祭を盛り上げる為なのだという。
あの世界は、善人しか行くことが出来ず、帰りたいと願うものは現世の風鈴の音が呼び戻す。
そう神主様は話していた。