初めてアイツを世界会議で見たときの感情は「驚いた」の一言だった。
最初アイツに会いに行った時は鎖国状態で顔も見してくれなかったし、アメリカの野郎と条約を結ぶまで引きこもってたらしいから、どんな頑固な奴なんだと、自分の中でアイツの印象がついてたからな。
でも、本当のお前は
礼儀正しく、
場を慎み、
小柄な男性だと知って、
俺のイメージとは程遠い見た目をしていた。
「俺はイギリスだ。覚えてるか?お前の国にアダムズっていうやつが流れ着いた事があるんだが、」
「あぁ、あの時ですね。失礼ながら記憶が曖昧で……。」
「いや、大丈夫だ。もう何百年も前のことだしな。」
小さい。落ち着く。かわいい。
そんなのタレた単語が出てくる時点で、俺はアイツに堕ちていたのかもしれない。
気持ち悪いってことはよく分かってる。初対面で、しかも恋愛的な意味で男を好きになったんだ。そう思われても否定はしない。
だから怖かったんだ。好きな奴に否定されるのが。否定されるぐらいなら今の関係の方がマシだな。なんて
「イギリスさん?」
「ん、あぁ。どうした日本」
「いえ、ぼーっとしておられたので。お疲れのようなら休憩にしますか?」
「……確かに、昨日夜更かししたからかもしれないな。」
「……お、お前とお茶したら直る……かも…、」
あぁ。その驚いた顔。………複雑だな。かわいいのに拒絶されてると解釈してしまう。
「べ、別にお前とお茶したいなんてことないんだからな!これは俺の為で、!」
「ふふ、分かっていますよ。ぜひこの後お付き合いします。」
「、………」
でも、抑えられるほどこの気持ちは軽いものじゃ無かった。今までいろんな女性と交際してきたが、その時とは比にならないぐらい大きな感情に育っていった。
駄目だ。足りない。知りたい。全部。もっと触れたい。アイツの特別に、
アイツと_____。
「とても素敵なお庭ですね。イギリスさんが手入れされているのですか?」
「あぁ、まぁな。」
お前の方が綺麗だ。なんて、絶対言えねーな。
「紅茶を炊いたんだ。日本人の口に合うか分かんねーけど、」
「いえ、私好きですよ。紅茶。」
「………そ、そうかよ、」
「あ、それとスコーンを焼いたんだ!今回のは上手くできたと思うんだが、食べてみてくれないか?」
「ス、スコーンですか、?それが………」
「? あぁ。」
「あ、ありがとうございます、食べてみますね、!」
俺の好きな人が、
俺の庭で、
俺の炊いた紅茶飲んで、
俺の作ったスコーン食べて、
俺と喋ってる。
こんな幸せなのに、与えられれば与えられるほど、これより先を求めてしまう自分の欲深さに少し嫌気が指してしまう。
だけど、菊が幸せなら、そんなことどうでもいいか。
「今日はありがとうございました。紅茶と…スコーン……。とても美味しかったです。」
「それは良かった。またいつでも来てくれよな。」
「はい。またいつか訪問させていただきますね。」
いつかと言わず、毎日来てくれていいんだが。
連絡先……教えて貰えば良かったな、
「………え、菊ちゃんにお前が作ったスコーンを出した………?」
「あれを出そうとする意味が分からないんだぞ」
「は!?なんでだよ!日本も喜んでたぞ!?」
「なんて?」
「紅茶とスコーンとても美味しかったです。って!」
「日本は優しいから気使ってくれたんだと思うぞ」
「はぁ?」
「終わったな。あんなスコーン出されたら冷めちゃうね。しかも自信満々で」
「言いすぎだろ!俺だって頑張って作ったんだぞ!」
「それで、次の予定は話したの?」
「またいつか訪問させていただきますね。って言われたから、まぁ、次がない訳ではないとは思うけど、」
「оh……」
「? なんだよ」
「あのな坊っちゃん、日本のまたいつか。は、次が無いのと一緒なんだよ、」
「うんうん」
「え、は、んな訳無いだろ!ただのまぐれだってぇ(笑)な?」
「俺も前日本と、いつかまたゲームしようって言われたけど、あれからしてないんだぞ」
「………」
「日本のいつか。ってねぇ……そういう意味なんだよ、」
「次の世界会議まで待てなかったら、誘うしかないね。お兄さん菊ちゃんの連絡先持ってるからあげるよ。なんか可哀想だし」
「可哀想ってなんだよ!」
「まぁまぁ怒んなって(笑)お兄さん応援してるよ?」
「………ったく、」
そんな事を聞き、一気に不安が押し寄せてくる。でも、あのスコーンは上手く出来た方だと思うし、あいつ等が深読みしすぎてる可能性だってあるから、まだそう判断するには……。
そんな言い訳は、さっきアメリカと髭が話した最悪の可能性もある。と言うことを再確認させられるだけに過ぎなかった。
こんなことでクヨクヨしてても埒が明かねぇな、次の世界会議後、ちゃんと告って振られよう。こんな気持ち、貯めとく方がよっぽど辛ぇだろ。
「で、誘ったの?」
「……まだだけど、」
「……堕とす気あるの?」
「あるに決まってんだろ!」
「今日、覚悟決めてきた……」
「……まじか、」
フランシスは俺の背中を軽く叩いた。
「頑張れよ」
「……ん。」
「ヴェ〜日本だー!チャオチャオー」
「イ、イタリアくん、」
「おいイタリア、日本が困ってるだろ」
「えー、ただの挨拶だよ」
「すまんな、日本。大丈夫か?」
「はい、やっぱりハグは慣れませんね」
「……」
体がモヤモヤする。多分嫉妬だろう。イタリアと日本は友情関係で仲が良い。なんて、前から知ってた事だった。なんとも思わなかった行動に反応してるようじゃ、俺は重症だな。
「日本。………その、」
「?」
「今、いいか?」
あぁ、今から告白するんだ。断られる覚悟なんてとっくに決めてる。そういう前提で告るつもりだ。
でも、なぜだか少し期待してしまう。この告白が成功したら____、
「に、日本、えっと、」
「その、お前のこと!えと、…」
「す、好きだ、……恋愛的な意味で…」
………あぁ。またその顔。今度は俺の解釈じゃない。絶対拒絶された。
そんな事が頭を過ぎる。
俺の決めてきた覚悟にヒビが入る音がした。
「……気付いてましたよ。」
「!」
「あの……だから、信じられないんです。こうして告白されたことが……」
「わ、私も……好き、です」
「……は、」
時が止まった。いや、俺の時が止まったんだ。信じられなかった。日本が、俺と同じ気持ちだったなんて。
「じょ、冗談じゃないよな、?」
「冗談なんて言うほど、私は腐っていませんよ」
「っ〜〜」
嬉しさが込み上げてくる。俺は日本を抱きしめた。
「わ、ちょ、イギリスさん!?」
「……好き。大好きだ」
「今だけでいいから、俺のことだけ見てろ」
「……もう、そんなことおっしゃらなくても、ずっと貴方だけ見てますよ。」
冬の寒さはとうに無くなっていて、俺の体は温かい体温に包まれた。
コメント
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ファアアアアアアアアアアアア… もっと早くこの作品を見つければよかったです…腐腐腐