ラト視点
「主様は私を見捨てませんよね?」
「ん?急にどうしたよ。当たり前じゃん。そんなに不安なら、ずっとお前の傍に居てやるよ」
「…ふふ。そうですか」
「俺がラト見捨てるなんて天変地異が起きても有り得ないね。」
私はよく不気味がられます。悪魔執事というのもあるのかもしれませんが、おおよそこの包帯のせいでしょう。まぁ私は他人からどう思われようとどうでもいいのですが、主様にはそう思われたくありません。
「そういえば、そろそろ十五夜らしいですよ。」
「ああ、ラムリが言ってたな。俺は別に月には興味無いし…ラトの体調が良さそうなら、ラトと一緒にいるよ。」
「本当ですか?それは嬉しいですね。主様がいると心が落ち着きます」
「はは、ありがとな。」
ラト視点終了
「はぁ…はぁ…」
「ラト?大丈夫か?」
「はい…大丈夫です…すみません、薬を飲んできます…。」
「無理すんなよ?」
「うっ…!はぁ、はぁ…」
ラトが頭を抑えながらに蹲り、苦しそうにしている。
「逃げ、てくださ…い……ミヤジ先生を…」
「ラト!?おい、大丈夫か!?ミヤジ呼んでくればいいのか?」
「……るな」
「?ラト?」
「僕に触るな!!!」
「い゙っ…!」
ラトに触れようとした手を振り払われる。その拍子にラトの爪が俺の腕と顔を引っ掻き、血が流れる。
「逃げ……うあ…」
「大丈夫。俺は何もしないよ」
「嘘だ!そう言ってまたあの痛いのやるんでしょ!?」
「そんな事しないよ。ほら、何も持ってないだろ?」
「うるさい!それ以上近付いたらお前の首噛みちぎってやる!!!」
痛いし血が出てるけど、深くはなさそうだ。ラトの大声が廊下まで聞こえたのか、ムーの心配する声がドア越しに聞こえた。
「ムー!ミヤジ呼んできてくれ!ラトの発作が…!」
「わ、わかりました!」
どうしよう、ミヤジが来るまで時間が掛かる…その間ラトは脱走しないだろうか、俺動いたらマジで殺されそうなんだけど…!
「ラト、大丈夫だよ。怖くないから」
「うるさいうるさい!黙れ!!」
「辛いよな、怖いよな。ごめんな、何もしてあげれんくて」
「僕の事知らないくせに知ったように言わないでよ!」
「…確かに、今のラトの事走らない。けど、俺は知ってるよ。ラトの事、知ってるよ。今のラトも普段のラトも、どっちも俺の好きなラト本人だ。」
「大丈夫。大丈夫だから。俺は…私は、ラトを傷付けないよ。」
「そうやって僕を騙そうとする!僕はもう騙されないぞ!!!」
「騙そうなんて思ってないよ。私はラトの味方だから。見捨てない、ずっとそばに居るって言ったしね」
「…っ……るじ、さま……」
「ラト、私はね?皆の事が大好きなんだよ。その大好きの中にラトも居るの。私の事守ってくれるし、ラトと一緒にいると楽しい。」
「ずっと辛くて怖い思いしてきたんだもんな、信じられないよな。でもさ、もう一度だけ信じてみてくれないか?私は何もしない。もし何かしたら殺していいから。」
「フッー…!フッー…!」
「ラト。落ち着いて。ほら、何も持ってないだろ?大丈夫、ここにはお前を傷つける奴なんて居ないよ。」
そう言って俺は怯えるラトに向かってゆっくりと腕を広げる。ビクッと肩が震えたが、襲いかかって来る様子はない。
「私がラトに嘘ついた事、ある?」
「.………」
「近づいてもいい?」
ラトは黙ったままこちらを見つめる。さっきより震えは収まって見えた。沈黙は肯定と受けとり、少しずつゆっくりと近く。
「ほら。ここまで近ずいてもないもないでしょ?」
「…ぅあ…あ……」
少し躊躇った後、ラトは勢いよくドンッと私に抱き着いた。予想以上の衝撃で、私はそのまま後ろに倒れてしまった。ゴツンという音が聞こえたのは気の所為だろう。ついでに頭が痛いのも気の所為だ。
「グスッ……あるじさま……」
「よく、頑張ったな。」
「うぅ…ヒック……うわああぁぁぁぁぁあああ!!」
今まで溜めていた涙が一気に溢れ出した様で、声を大にして泣きじゃくり、私の肩に顔を埋め、服にラトの涙が染みる。ラトの頭をぽんぽん、と撫でると更に涙が溢れ出た。
「我慢しなくていいんだよ。泣きたい時は泣いて、楽しい時は笑え。人間には、その権利がある。」
(主様は、とても__)
「あったかい…」
ラトはそう言って眠った。
コメント
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あくねこなので666にしました[▓▓]_ˇ꒳ˇ)_zzZ